【検証】Temuで約1万円の「電気ギター(IRIN)」はどんな音なのか? ギタリスト80人に意見を聞いてみた結果
中国系の通販アプリであるTemu。その怪しさは当サイトでも何度もお伝えしているが、そんなTemuで約1万円で「電気ギター」が売っていた。マジかよ。安すぎだろ。
これは十中八九、ヤバイやつ。でも、安すぎて気になる人もいると思うので、私(中澤)が生贄になろうと思う。結論から言うと届いたギターはゴミでした。
・購入時の注意
Temuのうさんくさいクーポン連発の買い物システムについては以前の記事でご紹介しているので割愛したい。要は、値引きのルーレットみたいなのとか「一緒に買ったらクーポンが!」みたいなのが連なりすぎて何についての話をしてるのかよく分からなくなるのだ。
何を隠そう私はエフェクターも一緒に買ってしまったので注意してくれ。とは言え、ギター自体は確かに表示されていた税込1万1070円だし、請求額も2つ合わせて税込1万4413円と間違ってない。ギター1本で考えても激安。
・ギターが届いた
そして、ちゃんとギターとエフェクターが届いた。この時点で上出来に感じるのはTemuの魔力と言う他ないだろう。ただ、実際にギターの実物を見ると衝撃を受けた。
ポジションマークもヘッドの形状も完全にアイバニーズなのにヘッドには「IRIN」と書かれている。なんならアイバニーズのネックを買って塗ってる説も浮上するレベルでそのままだ。ヘッドシェイプは各メーカー気を使うポイントと思われるだけに、普通ならちょっとは変えるはず。塗りだけでなく面の皮も厚い。
とは言え、今回は検証の潜入調査なので、その問題とは別に音を調査していきたい。で、弾いてみての個人的な音の感想を言うなら、思っていたよりは全然マシだった。もっとギターの音じゃない感じかと思いきや、ちゃんとギターの音してる。
・音のレビュー
「良い音とは何か?」って年代によって変わってくる問いだと思うんだけど、どちらかと言うと現代的な音だ。今はソロがない曲も多いし、ギターの音量も小さいから、存在感というよりも後ろで鳴った時、キラキラした成分が聞こえるかが重視されているように思う。
事実、私はビンテージっぽいストラトを中心に使ってるんだけど、かつてレコーディングで「そんなオッサンみたいな音じゃなくて……」と言われたことがあった。このギターはそういう時に使えそうなハイの出方をしている。一発弾いて「なし!」っていう感じの音ではない。
ただ、前述の通り音って人によって評価が違うものだ。私だけではなく色んなギタリストの視点があった方が参考になるに違いない。そこでクランチとディストーションで弾いた動画を「ギタリストの皆さん、この音どうですか?」と各種SNSに投稿してみた。
するとTikTokで伸びたこともあり、80人くらいのギタリストのコメントが集まった。趣味や腕は分からないけれど、こんな動画にコメントする人の心根は間違いなくギタリストだろうと思う。
・ギタリスト80人の声
そんな完全無作為のギタリスト80人はTemuの1万円ギターの音をどう評価するのか? まとめるとコメントは以下の通りであった。まずはクランチ。
「悪くないけど、「いいな~!」って感じでもないって感じでしょうか。先入観入ってるかもしれませんが」 「これtemuで買ったって書いてあってものが見えてる動画だから音ちゃっちいとかなるけどブラインドで音だけで聞いたらわかんない気がする」 「この手のジャンルだとバレるかもだけど、1万円だと仕方ないって感じよね」 「実際きかないとわかりませんがなんかちゃっちい感じがします」 「貧相な音だね」 「初心者の練習用ならいいんじゃないの?」 「やっぱり音軽い気がするけど1万でこれなら全然お得」 「全然いいじゃないすか!あとは不具合がどれだけ出てくるかですね」 「なんか一周回って味出てるwww」 「音こもってるのとか音残りは感じるけど、弾くのがうまくてそういう奏法なのかと錯覚するw」 「一万円でこの音ならまあ、と一瞬思うけど、練習続けたらこの音イヤになって次の楽器探すのが目に見える」 「音よりも見た目が安っぽい」
「長年コンポーザーやってますけどこのレベルなら全然レコーディングに使える」
──意外とポジティブなコメントも少なくない。ネガティブなコメントについては「まあそらそうよな」としか言えません。続いて、歪み全開ディストーション動画への反応が以下。
「リフが始まるところとか、ぶっちゃけ全然(1万円って)わからんかも」 「ぜんぜんカッコイイ」 「音出ただけで大金星」 「ボディが鳴ってないというか広がらない感じ」 「上手いからギターの品質が分かりません」 「この動画だとギター単体だけの問題か分からない」
「酷い音、音潰れてる」
──というわけで、こちらもポジティブとネガティブが半々くらい。どちらにしてもギター単体の良し悪しというより腕を含んだ評価が多いことが、「分からん」という感情の裏返しのように感じる。逆に言うと、分からんまではいけてるってことかもしれない。
・ゴミだと思った理由
ところで、この2つの動画投稿で多かったのが「チューニングは合うの?」というギターの作りに関する質問だ。冒頭で「ゴミ」と言った理由はここにあって、実はこのギター、チューナーで見てみると……
\ビヨーン/
と、ピッキング直後、一時的に高くなってその後アームを触ったみたいに下がるのである。どこで合わせれば良いのかがよく分からない。そう、ピッチが不安定すぎるのである。ちなみに、私が使っているストラトの場合、以下のようにスーッと一定のピッチで音が伸びます。
・さらに
まさかの音を出す前にゴミであることが判明したのであった。正直、これはギターとして致命的なように思う。
さらに、ちょっと弾いてたら1弦が切れた。チョーキングしてないのにブリッジ側から切れたのでサドルの処理が甘いと思われるのだが、弦を交換しようと裏返したところ、カバーの穴と弦を通す穴がズレていた。適当すぎて草。
もちろん、IRINのギター全てがそうかは分からないけど、これを掴んだ気持ちはまさしく生贄。こんなに安いギターを買ったのは初めてだったけど、個人的には初心者の1本目にもオススメはできない代物だと思ったのであった。現場からは以上です。
執筆:中澤星児 Photo:Rocketnews24.
▼動画はこちら
▼こういう感じで届く
▼色んな意味でアカンギターが来た