台湾ドルのフォワード、数十年ぶりの極端な水準-米ドル安圧力続く
- 米国との貿易協議前進に向け、台湾当局が通貨上昇を容認との観測
- 台湾ドル一段高との見方、企業や個人のレパトリや生保のヘッジで
台湾の大手生命保険会社に人気のある台湾ドルのデリバティブは、同通貨がさらに上昇することを示唆している。台湾ドルは5日に一時5%急騰して3年ぶり高値を記録した。
ブルームバーグがまとめたデータによると、台湾ドルと米ドルの通貨ペアにおけるスポットレートと1年物ノンデリバラブル・フォワード(NDF)のスプレッドは5日、一時3000ピップス前後に拡大。少なくとも過去20年で最大となった。
こうした乖離(かいり)は、台湾ドルへの旺盛な需要を示す新たな兆候だ。台湾当局が米国との貿易協議を前進させるために台湾ドルの上昇を容認するとの観測が背景にある。台湾ドルは5日に1988年以来最大の上げを記録。これにつられる形で、マレーシア・リンギットや中国人民元など他のアジア通貨も値上がりした。
輸出業者が保有する米ドルを台湾ドルに急いで交換する動きや、生命保険会社が米ドル建てポートフォリオのヘッジを進めている兆候から、台湾ドルは一気に勢いづいている。
ジェフリーズの為替ストラテジスト、ブラッド・ ベクテル氏は「輸出業者による米ドル売りの急増と、中央銀行から目立った対応が見られないというのが話題になっている」とリポートで指摘。こうしたトレンドは「為替市場で起こりつつある何か大きな動きの始まり、あるいはその兆候かもしれない」と続けた。
台湾ドルは6日の取引では、対米ドルで0.5%下落して1米ドル=30.28台湾ドル。最近の上昇分を一部消す動きとなっている。事情に詳しいトレーダーによれば、午前の取引では輸出業者による米ドル売りが続いた一方で、海外投資家や個人投資家からの台湾ドル需要は和らいだ。
王菊氏(香港在勤)らBNPパリバのストラテジストは、台湾ドルは時間とともに対米ドルで28台湾ドルに上昇する可能性があるとリポートで指摘。企業や個人投資家のレパトリエーション(自国への資金回帰)や生命保険会社によるヘッジ強化を理由に挙げた。
原題:Taiwan Forwards Near Most Extreme in Decades Show US Dollar Pain(抜粋)