秋の味覚で歯垢リスクが急上昇 栗やイモが口内環境を悪化させるワケ 食後に心がけたいおくちのケアとは

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外でサツマイモや栗を食べることも多いシーズン(写真はイメージ)【写真:PIXTA】

 歯や口腔の健康が、生活の質の向上に寄与し、全身の健康にも関連することが指摘されるなど、近年、歯の健康について注目度が高まっています。実りの秋を迎え、食べ物がおいしい季節ですが、食後のケアを怠ると、口の中の健康リスクを高めることにも。口の中をきれいに保つためには、どのようなことを心がけたら良いでしょうか。大阪大学大学院の特任教授で口腔予防医療に詳しい天野敦雄先生に、詳しいお話を伺いました。

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歯垢はアルツハイマーや糖尿病を引き起こす?

 歯垢(デンタルプラーク)とは、歯の表面についている、白くやわらかな沈着物です。単なる食べかすではなく、歯垢1ミリグラムの中に1億個以上の細菌が存在し、その棲息密度は、なんと便に匹敵するともいわれています。

 歯周病は、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患で、歯の周りの歯茎(歯肉)や歯を支える骨などが溶けてしまう病気です。歯周病になると、歯垢の細菌が歯茎の毛細血管に侵入し、血流に乗って体中へ送られることに。その結果、口内だけでなく、糖尿病や心筋梗塞、アルツハイマー病など、全身疾患にも影響を及ぼすことが、近年の研究で明らかになっています。

 さらに進行すると、増殖した歯周病菌が歯周組織を破壊して免疫反応のバランスを崩し、慢性炎症を引き起こす原因に。この慢性炎症が全身に広がることも、動脈硬化や心疾患、脳血管疾患のリスクを高める要因になると考えられているのです。

 このように、歯垢は単なる口の中だけではなく、さまざまな健康弊害につながる「歯垢リスク」があるといえるでしょう。

「歯垢リスク」が高くなりがちな人とは

 以下のような生活習慣をお持ちの人は、歯垢リスクが上昇しやすい傾向にあるので、チェックしてみてください。

【画像提供:歯垢リスクPR事務局】

 とくに歯垢リスクを高めてしまう、以下のような生活習慣がないか確認してください。

○歯磨きの回数・時間が短い(1回1分以下) ○フロス、歯間ブラシなどを使用していない ○歯科検診を1年以上受けていない ○お菓子、菓子パン、清涼飲料水をよく摂取する ○口呼吸をする、いびきをかいている

○矯正装置や入れ歯のケアが不十分


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「秋の味覚」焼き芋や栗で歯垢リスクは急上昇!?

歯垢リスクが低い、秋を代表する食材(写真はイメージ)【写真:PIXTA】

 虫歯は、歯垢の細菌が、私たちが口にしたショ糖をエサして作り出した酸によって、歯が溶けた状態のことをいいます。つまり、今の季節に人気のサツマイモや栗に含まれるでんぷんは、唾液によって分解されて糖になり、ケアを怠ると、歯垢リスクを高めるのです。また、ナシやブドウなども果糖を含むため、同じく歯垢リスクを高めることになるでしょう。

 一方、たんぱく質と食物繊維は虫歯を作らないとされているため、たとえばサンマやサバ、戻りカツオなどの魚類、シメジやエノキダケ、マイタケといったキノコ類は歯垢リスクを高めません。

 歯垢リスクを抑える観点で考えると、食物繊維を多く含む食品は、よく噛むことで唾液の分泌が促され、唾液の持つ洗浄作用や抗菌作用、酸の中和作用が強化されます。さらに、食物繊維自体が歯の表面の歯垢を落とすので、リスクを低くする効果が期待できるでしょう。

 また、お茶などに含まれるカテキンなどのポリフェノールも、歯垢の成熟を抑えるとともに、抗菌作用や抗炎症作用があります。

食後3分以内の歯磨きを心がけよう!

 歯科医院で歯磨き指導を受けた人でも、歯磨きだけで落とせる歯垢は約6割といわれています。歯磨き指導を受けたことのない人であれば、磨き下ろせる歯垢は2割程度。多くの歯垢が残ったままになっています。

 つまり、丁寧に磨いているつもりでも歯垢は残りやすく、口の中が“きちんと拭けていないおしり”のような状態なのです。

 また、食事をしたあと、虫歯菌は食べカスの中の糖質(とくに砂糖)を栄養として取り込み、酸を排泄します。虫歯菌の代表格・ミュータンス菌は、同時に「不溶性グルカン」という、水に溶けないネバネバを砂糖から作り出すのですが、それがさらに歯垢を分厚くし、酸をたっぷり含む歯垢になります。

 この酸によって歯が溶け(脱灰)、虫歯になるため、酸を早く洗い流すには食後3分以内の歯磨きがおすすめです。

 虫歯予防の目的で歯磨きをする際は、歯ブラシの毛先が、歯に対して90度に当たるように磨きましょう。歯周病予防のために歯を磨くなら、歯と歯の間、歯と歯茎の境目に入りやすいよう、歯ブラシの毛先を歯茎に向け、歯に対して45度に当たるように磨きます。

 どちらの場合も、奥歯はリンゴを磨くようなイメージで、歯の形を考えながら磨いてください。

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