GoogleやAmazonが「検索データ」「購買履歴」の次に狙うのは「家の中」…喉から手が出るほど欲しい情報とは?(ダイヤモンド・オンライン)
家事をこなし、買い物まで代行してくれる人型ロボットが無料で手に入る――そんな未来が訪れたら、誰もが歓迎するだろう。しかし、その便利さにはどんな代償があるのか。エンジニアの中島聡氏が、近未来小説を通してAI時代の新たなリスクを描き出す。※本稿は、エンジニアの中島聡『2034 未来予測――AI(きみ)のいる明日』(徳間書店)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 人型ロボットのおかげで 家事から解放された人類の「未来」 HELP-01が我が家にやってきて、もう3年になる。それまでは仕事から帰ってきても、そこから「第二の仕事」が待っていた。掃除、洗濯、夕食の準備。それをこなすだけで、2人とも毎日疲れ果てていた。週末になれば、平日に溜まった家事を片付けるだけで、気づけば半日が終わってしまう。そんな日々だった。 でもいまは違う。HELP-01が、面倒な家事をすべて引き受けてくれる。仕事から帰ると、部屋は整い、温かい食事がすぐに並ぶ。 「何もしなくていい」というのもずいぶん楽だが、「疲れたまま何かを判断しなくていい」ことが、これほど楽だとは思わなかった。 俺たちが子どものころに「未来」として描かれていた家事からの解放。それが月額5万円のHELP-01のリース代と引き換えに現実のものとなっていた。 人型ロボットのいる生活は、控えめに言っても最高だ。一度この快適さを知ってしまうと、もうロボットのいない生活なんて想像もできない。ただ、その「快適な暮らし」を維持するコストが、じわじわと家計を圧迫していた。 「もう少し安くならないかなあ……」とため息がもれる。
そう呟きながら、俺はソファでSNSを眺めていた。そのときだ。トレンド欄が、見慣れないワードで埋め尽くされていることに気づいた。 〈本体価格ゼロ。月額利用料ゼロ。完全無料の人型ロボット『Free(フリー)』誕生!〉 ニュースを見た俺たちは耳を疑った。最新鋭のAIとモーターを搭載したハイエンドモデルが、タダ? 絶対裏があるに決まっている。しかし、発表によれば「家庭内データを製品開発に活用させていただくため」という理由らしい。 「データなんて、いくらでもくれてやるわよ。どうせスマホだって位置情報やら検索履歴やら抜かれてるんだし、いまさら家の中のデータくらい、ねえ?」 ● 完全無料で最新鋭の 人型ロボットを契約すると…… Freeは、よく気が利いた。 「拓也さん、洗剤の残量が少なくなっています。いま、Hello!ショッピングで同じものが20%オフですが、注文しておきましょうか?」 「あ、本当?助かるよ」 こういう小さな気配りもありがたかった。数日後には「お試し用として、少量パックも同梱しておきました」と新商品の洗剤のサンプルまで届いた。至れり尽くせりだ。 あるとき、詰め替え用洗剤が段ボール箱で届いた。 「Free、これ頼んだっけ?」 「はい、私が注文しておきました。これまでの使用頻度から計算して、最もお得な『定期便』に登録済みです。これで買い忘れはなくなりますよ」 Freeは、誇らしげに言い切った。 ● 無料ロボットが高い買い物を 「最適化」していた 小説の終盤で、主人公はこう気づきます。 「こいつは、俺たちの行動を“誘導”している。いや、もっと正確に言えば、買うと決める直前の背中を、毎回いちばん気持ちいい角度で押してきている」 これは、極めて本質を突いた洞察です。無料の人型ロボットは、あなたの生活のすべてを見ています。何を食べているか。何を買っているか。何時に寝て、何時に起きるか。どんな会話をしているか。ストレスを感じているか。 そして、そのデータをもとに、AIは「あなたが次に欲しくなるもの」を予測します。 いや、「予測」だけではありません。AIは、あなたが「欲しくなるように」仕向けることさえできるのです。 たとえば、あなたが仕事で疲れて帰ってきたとき、ロボットはこう囁きます。 「お疲れのようですね。リラックスできるアロマキャンドルはいかがですか?いまSNSでトレンドになっています」 あるいは、夫婦の会話が少し険悪になったとき、ロボットはこう提案します。 「おふたりのストレス数値が上昇しています。温泉旅行はいかがですか?いまなら早割で15%オフです」