富山の列車・扉1か所ほぼ全開、2分半にわたり700m走行…乗客からのメールで初めて把握 : 読売新聞

扉が開いたまま走っていたとみられる現場付近。写真はトラブルがあった列車と異なる(19日、富山市堀川町で)

 富山地方鉄道不二越・上滝線で16日、列車の扉1か所がほぼ全開のまま、約2分半にわたって約700メートル走行するトラブルがあったことがわかった。乗客約200人にけがはなかった。運転士と車掌はいずれも見逃しており、専門家は「通常はありえない事態で、大変驚いた。鉄道の安全対策の抜け穴が浮き彫りになった」と話している。(吉武幸一郎)

 地鉄によると、トラブルは16日午前7時40分頃、富山市の朝菜町―南富山間で発生。岩峅寺発電鉄富山行き列車(3両編成)の3両目左前部の扉(幅約110センチ)が開いたまま、朝菜町駅を発車した。列車は最高時速25キロ程度まで加速し、何らかの理由で、走行中に扉は閉まった。地鉄は16日昼に、乗客からのメールで事態を初めて把握した。

■人為ミス重なる

 通常、扉の開閉状況は運転台と車両側面に設置されたランプの点灯状況でわかる。運転士と車掌はランプを確認し、異常がなければ発車する。さらに、すべての扉が閉まらないと安全装置が作動し、列車は加速できない仕組みだ。

 今回は、これらの仕組みをすり抜ける人為的ミスが重なったとみられる。

 列車に乗務していた男性運転士(23)(乗務歴3か月)と男性車掌(21)(同1年)は地鉄の聞き取りに、いずれもランプを確認したと回答。ただ、ランプに不具合はなかったとみられ、地鉄は「見間違いや見落としの可能性がある」とする。

 さらに、運転士は朝菜町駅でブレーキを緩めて発車しようとした際、うまく加速できなかった。安全装置が作動していたためとみられるが、運転士は、列車を止めなかった。地鉄によると、朝菜町―南富山間は下り勾配で、列車は自然に加速したとみられる。運転士は、うまく加速できなかった時点で、列車を止めて点検する必要があった。

■「対策必要」指摘も

 トラブルを把握後、地鉄は全列車の扉を点検。異常はなく、異物が挟まって閉まらなかった可能性も視野に調査している。

 関西大学の吉田 裕(ゆたか) 教授(交通システム安全論)は「運転士と車掌の双方ともに基本動作を怠り人為的ミスをしたことは問題だ」と指摘。一方、人為的ミスは避けられないとし、「今回は悪条件が重なった結果で、全国の事業者も学ぶべき事案。下り勾配で意図せず列車が加速しない安全対策が必要だ」と述べた。

 地鉄は17日に国土交通省北陸信越運輸局に報告し、運輸局は原因究明と再発防止対策の検討を指示した。地鉄は「あってはならない事案。再発防止を徹底する」とコメントした。

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