移籍1年目に「直談判」でキャプテン就任…須田侑太郎がシーホース三河にもたらしたもの
6時間前
キャプテン・須田侑太郎の存在は確かにチームを成長させた[写真]=B.LEAGUE
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Toggle試合終了残り50秒、ビハインドは15点。シーホース三河はキャプテンの須田侑太郎を中心にハドルを組んだ。
「厳しい状況でしたけど、来シーズン以降のチームの発展のため、シーホース三河が組織としてもっと良くなるために、最後までやりきろうという話をしました。そういう思いを持って5人が最後までプレーしましたけど、やっぱり悔しいですね……」
5月11日、日環アリーナ栃木で行われた「りそなグループ B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2024-25」クォーターファイナルGAME2は、89-75でタイムアップ。宇都宮ブレックスがホーム連勝を飾り、セミファイナルへ駒を進めた。
「組織力が圧倒的に高いと感じました。どんな状況になっても落ち着いていますし、絶対に崩れない。勝ち方や勝つためのメンタリティーをそれぞれの選手が持っていて、ベテランが多い中でも若手が伸び伸びとプレーしている。率直にいいチームだなって思いました」
2016-17シーズンには栃木ブレックスの一員として初代王者に輝いた須田は、今大会で対峙した古巣の強さを改めて痛感した。
今季のシーホース三河は、ライアン・リッチマンヘッドコーチ体制2年目。昨シーズン1勝もできなかったチャンピオンシップでの“あと6勝”を取りに行ったが、またしても同じ壁に阻まれた。
それでも、今シーズンの中地区は、東地区からアルバルク東京、昨季の西地区を制した名古屋ダイヤモンドドルフィンンズが新たに所属。三河は激戦区において、昨季を上回る39勝を積み上げた。
「昨年よりもレギュラーシーズンで3勝多く勝つことができた。プレーオフの結果は同じかもしれないが、よりタフになったカンファレンスを戦い抜いてCSに辿り着いた過程は昨年よりも良かったと感じています」(リッチマンHC)
■新主将・須田を中心に強固なチームへ進化
HCや選手が口を揃えて称える須田のリーダーシップ[写真]=B.LEAGUE
開幕前、名古屋Dから三河への移籍を決断した須田は、新天地でいきなりキャプテンの重責を背負った。2023-24シーズンの三河は、リッチマン新HCのもとで“全員キャプテン”という方針を掲げていた中での「直談判」だった。
「僕自身、移籍した理由の1つがキャプテンとしてチームビルディングの部分をもっと貪欲にしていきたいという思いがありました。自分の中でのチャレンジでもあったので、ライアンHCとフロントの方々には『やらせてください』と話をさせていただきました」
須田を支える副キャプテンには西田優大が就任。エースとしてもチームを引っ張る西田は、シーズン中から須田のキャプテンシーを絶賛していた。
「すっさんはすごくリーダーシップが強い。声を出して周りを引っ張ることもそうですけど、言葉で表現して伝えることも上手です。パッションもあるので、みんながついていこうってなる存在です」
リッチマンHCは、経験豊富な33歳に対して「本当に大きな貢献をしてくれた」と言葉を送り、こう続けた。
「彼のリーダーシップは様々な場面でいい影響を与えてくれましたし、試合では彼がいることで良い時も悪い時もチームとして高い集中力を保つことができるようになりました。彼一人だけではないかもしれませんが、ハドルを組む回数が増えたことも彼がこのチームにもたらしてくれたものです」
「結果に結びつかなかったことに関しては真摯に向き合わないといけない」。須田は冷静に現実を受け止めた。しかし、「チームとしてメンタル的に崩れなくなったと感じています。キャプテンとしては必要なタイミングで的確なことをしっかり伝えることが目標でしたけど、そこもシーズンを通して成長できたんじゃないかなって思っています」と前向きに移籍1年目を振り返った。
「本当に感謝の気持ちでいっぱいです。今日の試合は劣勢な場面が多くなってしまいましたけど、ベンチの後ろでも決して下を向かずに青援を送り続けてくれましたし、僕としても奮い立たされました。やっぱり勝って、結果で恩返しをしたかったですね。みなさんには、今シーズンもどんな時も僕たちに大青援を送っていただいて本当にありがとうございました、って伝えたいです」
ファン・ブースターへ感謝の思いを述べるキャプテンの瞳が、かすかに潤んでいた。
敗戦から何を学び、どのような成長につなげるのか。その答えは、来シーズン必ず証明してみせる。
取材・文=小沼克年
敗戦を糧にさらなる成長を誓う[写真]=B.LEAGUE