過熱する立体シールブーム 「ボンドロ」ハマる理由

今、立体シールの人気が過熱しています。特に2025年後半~年末にかけて入手がしにくくなり、今年に入ってからは立体シールを取り扱う店舗に開店前から長蛇の列ができるようにもなりました。

あまりの熱狂ぶりに、全国的な品薄と混雑防止を理由として、ロフトでは全店で人気の立体シールの販売を見合わせると2月4日に発表。2月21日には、一部店舗において抽選形式で販売を再開すると発表されました。

立体シールの販売について - ロフト

今回はこの「シル活(シール活動)」というムーブメントについて、実際にシール集めにハマっている当事者のリアルな声を交えながら紐解いていきましょう。そこで見えてきたのは、オーソドックスな消費者心理と、SNS時代の消費行動の掛け合わせで加速する、令和的ブームのかたちでした。

まずは、現在の立体シール人気の状況をざっくり振り返ってみます。その中心にあるのは、大人気の「ボンボンドロップシール」、通称“ボンドロ”と呼ばれる立体シールです。

表面がぷっくりふくれた、立体感のある可愛らしい見た目が特徴のこのシールは、キャラクターグッズなどを手掛けるクーリアとサンスター文具が製造・発売。オリジナルデザインのほか、サンリオやたまごっち、ちいかわシリーズなど豊富なラインナップがあります。

1983年生まれ・アラフォーの筆者にとっては、ぷっくり感は今っぽいけど、全体に平成的なファンシー感があってエモい。小学生時代の感覚を思い出します。

現代でもこれがポップなアイテムとしてウケていて、小学生女児の間でシール交換が流行していると聞くと、なんだか感慨深いものが。しかも、「そのシールは人気だから、1枚あげる代わりにそのシールを2枚ちょうだい」といった交渉もあり、小学生が“レート”の概念を学んでいたりもするようです。

立体シールの中でも特に人気の「ボンボンドロップシール」。さまざまなキャラクターのシールがあります

このブームの源流を辿ろうとすると、複合的な要因が作用していてはっきり言い切るのは難しいのですが、SNSがきっかけになっているのは間違いありません。ボンドロをネイルパーツとして使った写真や、ボンドロを貼ったシール帳の作り方のショート動画などが話題になり、シール自体の人気からシール帳作り、シール交換ブームにつながっている模様です。

ボンドロを使ったネイルやシール帳作りなどは、スマホケースや推し活のぬいぐるみ収納ケースなど、ここ数年の“デコ”ブームの延長線ともいえるでしょう。シール帳に関しては、作り方の動画で紹介された100円ショップの商品が品薄になることもあり、シール以外の商品にも影響が出ています。

自分だけのシール帳を作ってシール交換するという平成ブームもリバイバル

なお、ボンドロは2025年夏頃まではまだ入手しやすかったそう。同時期のある文具店のSNSには、店頭にボンボンドロップシールがズラリと並んだ写真があり、人が殺到するといったこともありませんでした。また、早くから立体シールに目をつけていた人は、夏頃はどこでも買えたし、店頭にあってもみんなスルーだったのに……と話します。

しかし、徐々にブームが広がり、シールを求める人が増えると店頭から少しずつ消えるように。「クリスマスプレゼントにボンドロが欲しい」という子供も多く、12月には明らかに「買えないレアアイテム」となっていました。

どこを探しても立体シールがないという状況がSNS等を通じて広く共有され、“レアリティの引力”的なものが働くように。供給が追いつかない中で、大人も巻き込んで加速度的に人気が沸騰しました。

店頭販売をしていた頃のロフト。シール売場には完売の表記

「開店時ならある」といった情報が広まったことから開店前に行列ができ、各店舗の状況をチェックする「シルパト(シールパトロール)」や「シル活」という行動様式が生まれるまでに。そして、そんなシルパト結果をSNS投稿する人も登場して情報が飛び交い、ブームが過熱していった……というのがざっくりした流れです。

ちなみにシル活は元々、ミニチュア人形のシルバニアファミリーを集めたり遊んだりすることを称していました。しかし、昨今のシールブームで、シール集めをすることをシル活と呼ぶ人が増えたようです。

「“◯◯店にたまごっちのボンドロありました”という目撃情報がSNSに投稿されると、それを見た人たちが現地に行って購入し、一気になくなるんです。SNSによるリアルタイムの情報拡散がブームを過熱させた面はあると思いますね」

そう話すのは、育児中の30代会社員女性。今まさに“シル活”の沼にハマっている当事者です。平成2年生まれで、小学生のときにも当時流行ったシール帳を持っていたそうですが、ここまで熱狂したのは今回の“シル活”が初めてだと言います。

たまごっちは令和でも人気があります

「去年の後半くらいから、なんかシールが流行っているなくらいの認識でした。年明けに、地方の親戚から『娘がたまごっちのボンドロを欲しがってるんだけど東京って手に入る?』と聞かれて、元々あるオタク心に火がついてしまいました。SNSで情報収集し、ロフトやハンズ、文具店などに入荷されることがあると知ったので、時間があるときにチェックするようにしました。しかし、なかなか手に入らなく……自分のためなら諦めるのですが親戚の女児が欲しがってるとなると、そんなの買えるまで頑張りたいじゃんと思ってしまったんです。フリマサイトは偽物が届くこともあると聞いたので、ちゃんと店舗で手に入れたいなと」

空き時間を見つけて都内でシルパトをすること約3週間、女性は運良く目当てのボンドロを手に入れられたようです。ここでシルパトが終わるかと思いきや、「初めて実物を手にしたら想像以上に可愛くて、自分用にも欲しくなってしまいました」と意外な展開に。

実物は想像以上に可愛かったとのこと

最初に購入できた店舗では1人各1点といった制限があり、そのときは親戚分のみを確保。以降、今度は自分用のボンドロ探しの旅が始まりました。

「私は親戚がきっかけでしたが、同じように子供からのリクエストで立体シールを探しているうちに、いつの間にか自分がハマっているという大人は多いと思います」

女性は現在、すでに自分用にもボンドロを入手済み。しかし持っていないものでちょっと欲しいなというシールがあるようで、街に出ればシール売り場をチラ見してしまうそうです。

シル活の情報収集に使われるのは、XやLINEオープンチャット(オプチャ)、Threads。「Xにもオプチャにもない情報が、意外とThreadsにあったりします」と女性は言います。

「主婦層だと、SNSはXよりInstagramをメインにしている人も多いです。なので、Instagramと連携するThreadsのアカウントを持っている人が多いんですね。それで“シル活”の情報発信にThreadsを使う人がいます」

主婦層の間で、テキストベースのSNSとしてThreadsが浸透してきていたという状況が、シル活の情報拡散にもつながりました。女性によれば、少し前にブームになった「ラブブ」もThreadsでの情報交換が活発だったそうで、ファン層がある程度かぶっているとのことです。

加えて女性は、そもそも社会現象になるまでシル活にハマる人が続出する心理的背景を、主婦目線で分析します。

「育児や家事、仕事に追われる現代の主婦にとって、シル活はちょうど良い平和な刺激になっているのかもしれません。恥ずかしながら私も当てはまる部分があります。以前ほど活動はしていませんが、どうしても手に入れたい、と思っていたときは入荷があるかわからないけどとりあえず店舗に足を運んでいました。大体が空振りなのですが、どうやらあるっぽいとなったときは内心ドキドキです。販売方法はお店によって異なりますが、売場近く、レジ近くまで行かないとどの種類があるかわからないことも多く、目当てのものだったときはかなりテンションが上がります。アドレナリンなのかドーパミンなのかわからないですが、なにかしらの物質が分泌されていたと思います(笑)」

さらに、立体シールは子どもが購入する前提で作られているものですから、販売価格は1シートで550円前後。この手軽さが、沼へのハマり込みを後押しします。

水族館限定のボンボンドロップシール。動物園限定などもあるそうです

しかし冒頭でお伝えしたとおり、このブームは年明け頃から、販売側に悪影響を及ぼすことに。立体シールを求める人が殺到して店内が混雑しすぎるなど、店頭での混乱も発生し、販売を休止する店舗が出始めます。

ロフトでは2月4日に、オンラインストア含む全店舗で人気の立体シールの販売を当面見合わせると発表。見合わせ対象となった立体シールは、「ボンボンドロップシール」のほか、「うるちゅるポップシール」、「ドロップジェリーシール」の計3シリーズ。なお、2月21日には渋谷店・池袋店・梅田店で抽選による販売再開が発表されました。ロフト以外にも、立体シールを多数扱うキデイランドなども抽選販売を採用しています。

この対応について女性は「今の過熱っぷりを見ると、抽選が最良だと思います」と肯定の模様。

「例えばラブブは販売元のPOP MARTしか正規販売をしておらず、品薄だったときはPOP MARTの抽選に当たらないと買えませんでした。外れたら仕方がないと諦めがつくんですよね。ですが立体シールの場合、販路は文具店だけでなく雑貨屋、本屋、はたまた薬局と多岐にわたります。探し回れば手に入るかもしれないという状況が、結果的に沼りやすい構造になったのでしょう。もしかしたらあそこにあるかも、と歩き回ってしまうようです。“シル活疲れ”する人が減るという意味でも、抽選制は過熱するブームを落ち着かせるのに必要ではないでしょうか」

渋谷ロフトの抽選販売ページ

また、店頭での通常販売を続けている店舗にも変化があります。最近はSNSでのリアルタイム拡散が過熱し、Xやオプチャで入荷情報が共有されるとお店に人が殺到することから、2月末現在「入荷情報のSNS投稿禁止」をルールとする店舗が増加しているのです。

人が集まりすぎて列でのトラブルがあったり、買えなかった人がクレームを入れたり、電話での問い合わせが殺到したりとお店への影響が大きく、SNS禁止が掲げられるようになりました。

「本来シールってSNSでの情報を元に買いに走るようなものじゃないですよね。街で売ってて可愛かったら買う、くらいがあるべき姿な気がします。なのでSNS禁止によって、たまたま居合わせた人が買える、という状況に戻るのはいいことだと思います」と女性は語ります。

今回の話を通じて見えてきたのは、シル活が内包していた沼の構造です。SNSによる情報拡散力、希少性が生む発見体験、そして人気キャラクターを使うIPビジネスの加速。偶然性も多分にあったでしょうが、結果的に令和的ブームの方程式を成り立たせる要素が、そこには揃っていました。

もちろん、どんなブームもいつかは去ります。そのうち、シル活がトーンダウンする時期も来るでしょう。ただ、この令和的ブームの構造が成り立つ時代では、次の熱狂が訪れるまでの時間は案外短い気もします。ブームの過熱を落ち着かせる対応に安堵する裏で、次のブームは静かに芽を出しているのかもしれません。

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