世界初「3Dプリンター」で一夜のうちに駅舎作る 3D住宅の施工手掛けたスタートアップの実績を鉄道へ
JR西日本が世界で初めて、3Dプリンターで「駅舎」を製作しました。和歌山県・初島駅に誕生した3Dプリンターの駅舎は、なんと“一晩”で建て替えが完了したといいます。いったいどのように作り上げたのでしょうか。
深夜の初島駅前には、大勢の近隣住民が集まり、世界初の試みに期待を寄せました。クレーンで巨大なコンクリートを吊り、決められた位置に丁寧に置くことで、外壁が組み上がっていきました。壁の表面にある、モルタルの「畝(うね)」が特徴的です。
この駅舎は、熊本県水俣市にある「セレンディクス」の工場で製造されました。セレンディクスは「3Dプリンター住宅」を手がけるスタートアップで、短期間で異なるデザインの住宅を安く提供しています。JR西日本は、その特徴に着目し、駅舎の建設に3Dプリンター技術を導入しました。
通常の建て替え費用の半分で済む「安さ」と、終電から始発までに建てられる「早さ」が3Dプリンターの魅力。さらに、造形が自由にできるため、地域性に合わせた特徴あるデザインが可能です。
JR西日本は沿線の人口減少により、17本の赤字路線を抱えています。旧耐震設計の年代の駅舎が数百あるため、更新はまったなしです。年間10棟近いペースで建て替えを進めています。 JR西日本 施設部 礒川健太郎課長: 「(全部で)1200ほどの駅があって、旧耐震設計の年代の駅舎は、そのうち数百あります」
日本経済新聞社 田村修吾記者: 「現地で取材していると、大手私鉄の社員も見学に来ていて、業界内での注目が非常に高いです。特に鉄道事業者では、ローカル線の維持が大きな課題で、JR各社ではローカル線区が4割を占めています。3Dプリンターの活用が、こうしたインフラの維持を助けるひとつの糸口になるかもしれません」
午前2時すぎ、最後に天井部分をのせて施工が完了しました。始発までに施工を済ませる予定でしたが、実際には2時間で完了しました。今後、部材同士の接合や内装工事を行い、7月頃に新駅舎の利用を始める予定です。
JR西日本は、生産性を上げるための1つの方策として「3Dプリンター駅舎」を今後も活用していく考えです。これにより、鉄道インフラの維持がさらに効率的に進められることが期待されています。 JR西日本 施設部 礒川健太郎課長: 「生産性を上げていく必要があります。鉄道を維持するための1つの方策として『3Dプリンター駅舎』を今後も活用したいです」
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