ゼレンスキー氏、ドンバス割譲を否定 ロシア軍の前進続く
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ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は12日、ロシアが停戦の交換条件にウクライナ東部ドンバス地方の割譲を要求した場合、それはどのような形でも拒絶すると述べた。ドンバスをロシアに与えれば、ロシアは将来、それを今後の侵攻の足掛かりにするはずだとゼレンスキー氏は警告した。ウクライナでの戦争については、アメリカのドナルド・トランプ大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、15日に米アラスカ州で対面し協議する見通しとなっている。
ゼレンスキー大統領は12日、記者団に対し、ウクライナがドンバス地方を放棄するといういかなる提案も拒否すると改めて表明した。
「もし我々が今日ドンバスから撤退すれば、我々の要塞や地形、我々が支配している高地を放棄することになり、ロシア軍が攻勢を準備するための足掛かりを築かせることになるのは明白だ」
ゼレンスキー氏は以前から、ウクライナ国民が「占領者にウクライナ領を与えることはない」と強調しており、領土の変更には国民投票が必要だとウクライナ憲法で定められていると指摘している。
12日夜の演説では、ロシアが前線の3地域、ザポリッジャ、ポクロフスク、ノヴォパヴロフで新たな攻勢を準備していると述べた。
この間、ロシア軍は夏の攻勢を続けている。東部ドブロピリャ近郊では急襲を仕掛け、短時間で約10キロ前進した。
これについてゼレンスキー氏は、ロシア軍が「複数の場所」で前進したことを認めつつ、ウクライナ軍が間もなく、この攻撃に関係するロシア部隊を撃破する見通しだと述べた。
ゼレンスキー氏はその上で、ロシアはプーチン氏がトランプ氏と会談する前に「ロシアは前進し、ウクライナは失いつつある」という「情報空間」を作り出そうとしているのが、「我々には明らかだ」とした。
プーチン氏がトランプ氏との会談でどのような要求をするかについて、公式な詳細はまだ明らかになっていない。
トランプ氏はプーチン氏との会談開催を発表するにあたり、いかなる和平合意にも「一部の領土の交換」が含まれると発言している。プーチン氏はドンバス地方の割譲を要求しているものとみられる。
ドンバス地方はドネツク州とルハンスク州からなる。2014年からロシアが部分的に占領している。ロシアは現在、ルハンスク州のほぼ全域と、ドネツク州の約7割を掌握している。
ウクライナは、15日に米アラスカ州で予定されているトランプ氏とプーチン氏の会談から除外されている。そのため、ゼレンスキー氏は、この会談でウクライナにとって前向きな結果が得られる可能性に深い疑念を示した。
「我々抜きで何を話すのか、私には分からない」と、ゼレンスキー氏は述べた。
ゼレンスキー氏はトランプ氏への批判を避けてきたが、ここ数日では、会談から除外されたことへの不満をあらわにしている。12日には、アラスカが開催地に選ばれたことについて、「プーチン氏の個人的勝利だ」と述べた。
「彼(プーチン氏)は孤立状態から抜け出した。アメリカ領内で会談が行われるからだ」
ゼレンスキー氏は以前から、ウクライナが関与しない合意は「死んだ決定」に等しいと主張している。
先週、トランプ氏はロシアとウクライナ「双方にとって有益な領土交換」があるだろうと発言。ロシア政府が武力によってウクライナの国境を再編することが容認される可能性があるとの懸念が、ウクライナ政府や欧州各国の間で広がった。
ロシアは現在、ウクライナ領土の約2割を支配している。
ホワイトハウスは12日、アラスカでの会談はトランプ氏にとって「傾聴の場」になると説明。トランプ氏とプーチン氏が同じ部屋で腰を据えることで、トランプ氏が「この戦争を終わらせる方法への最善の手がかり」を得られると述べた。
トランプ氏は11日、この会談を「探り合いの場」と形容。15日の会談がウクライナとロシアを和平へと近づけるかもしれないという期待をトーンダウンさせるような姿勢を見せた。
会談開催を発表した先週は、「直感的に、(和平への)チャンスがあると感じている」と前向きな見解を示していた。
ゼレンスキー氏は13日に、トランプ氏や欧州連合(EU)の指導者、イギリスのキア・スターマー首相、北大西洋条約機構(NATO)のマルク・ルッテ事務総長とのオンライン会議に参加する予定。
各国は、トランプ氏が15日の会談でプーチン氏に惑わされないよう、トランプ氏の説得を試みるとみられる。