今だ謎の「二重スリット実験」を説明? 見えなくても“暗い状態の光子”が存在する新理論 海外チームが発表
ブラジルのサンカルロス連邦大学などに所属する研究者らが発表した論文「Bright and Dark States of Light: The Quantum Origin of Classical Interference」は、光の波と粒子という2面性に新たな視点を示す研究報告だ。 【画像を見る】二重スリット実験の概要(Wikipediaより引用)【全2枚】 光は波なのか粒子なのか。この問いは物理学の長い歴史の中で繰り返し議論されてきた。古代ギリシャの時代から始まり、17世紀にはニュートンが光は粒子だと主張し、対してホイヘンスは波だと主張した。 19世紀にヤングの二重スリット実験やマクスウェルの電磁波理論によって波としての性質が確立されたかに見えたが、20世紀初頭にアインシュタインが光電効果を説明するために光量子(光子)の概念を導入し、再び粒子性に注目が集まった。現代の量子力学では、光は状況に応じて波としても粒子としても振る舞うと考えられている。 この研究は、この2面性の謎に新たな視点から挑んでいる。従来、光の干渉は波動性の証拠とされてきた。しかし、この研究では干渉現象を粒子的な観点からも説明できることを示している。 研究のカギとなるのは「明るい状態」(Maximally Superradiant States、MSS)と「暗い状態」(Perfectly Dark States、PDS)という光の集団的な状態だ。光が物質(検出器など)と相互作用するとき、光子は2つの異なる状態をとりうる。「明るい状態」は物質と強く相互作用する状態であり、「暗い状態」は物質と全く相互作用しない状態だ。 古典的な光の干渉では、2つの光波が重なり合うとき、波の山と山が合わさる場所(位相が一致する場所)では光の強度が増幅され、明るく見える。これを建設的干渉という。一方、山と谷が打ち消し合う場所(位相が逆の場所)では光の強度がゼロになり、暗く見える。これを破壊的干渉という。 従来の解釈では、破壊的干渉が起きる場所には光がないと考えられてきた。しかし、この研究によれば、そのような場所にも実は光子は存在しており、ただそれらの光子が「暗い状態」という特別な集団的状態にあるため、検出器と相互作用できず、見えないだけという。同様に、建設的干渉が起きる場所では、光子が「明るい状態」にあるため、通常よりも強く検出器と相互作用し、より明るく見えるという。