浦和"サヴィオ効果"で大爆発も…新ホットラインが猛威の予感 躍進のキーマン5人【コラム】
浦和レッズは2025シーズンの戦いに向けて、沖縄県の金武町でキャンプを行っている。得点力アップを図るために、ボールを動かしながらアタッカーが連動しての崩し、高い位置からの守備などに、リーグ優勝やクラブ・ワールドカップでの躍進に向けたバージョンマップを目指す。キャンプを初日から取材する筆者の目線で、躍進の鍵を握る5人をピックアップした。(文=河治良幸)
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■渡邊凌磨(MF/28歳)
1年目だった昨シーズンは左サイドバックからスタートし、サイドハーフやボランチも担い、マチェイ・スコルジャ監督に交代して迎えた終盤戦は“10番”とも呼ばれるトップ下に落ち着いた。新シーズンの開幕に向けてはボランチで攻撃のスイッチ役を担っており、ボールを動かしながら声で周りを動かしたり、練習の合間にはスコルジャ監督と直接言葉を交わすシーンもよく見られる。
直接フィニッシュに関わるプレーは2列目より多少減るかもしれないが、ボールを保持する時間が長くなれば、ボランチから前に出ていく動きは増えるはず。マテウス・サヴィオをはじめ松本泰志、中島翔哉など“10番”で違いを作れるタレントが揃う現在のチームにあって、守備面も含めて全体をオーガナイズできるボランチのポジションは適任と言えるかもしれない。
■関根貴大(MF/29歳)
昨年夏に酒井宏樹、岩尾憲、アレクサンダー・ショルツ、さらに一時はキャプテンを任された伊藤敦樹も欧州移籍でいなくなるなど、リーダー的な存在が一気に抜け、チームの混迷を招いたことは間違いない。その事実を人一倍、重く受け止めていたのがアカデミー育ちの関根だろう。それは彼の言動やその後の姿勢にも表れており、キャンプでも若手、ベテランを問わず周りの選手とディスカッションをする姿が目に付く。
サイドアタッカーが充実している現在のメンバー構成の中で、右サイドバックが主戦場になりそうだが、前からボールを奪いに行くディフェンスをベースに、状況に適したポジションを取って攻撃を支えるという任務もしっかりとこなせている。渡邊を攻守の軸とするならば、関根はハンドルのような存在であり、戦術、メンタル、ゲームコントロールといった総合的なリーダーシップに期待が懸かる。
■金子拓郎(MF/27歳)
クロアチアのディナモ・ザグレブ、ベルギーのコルトレイクを経験。さらなる欧州でのステップアップも期待されたなかで、地元埼玉の浦和からのラブコールに応えて加入した。左利きの右サイドアタッカーであり、個人でディフェンスをドリブルで剥がせるうえに、ゴールやアシストに直結するプレーができる。ボールを持って決定的な仕事ができることを武器として自負しながらも、キャンプで取り組む戦術的なタスクにも、真摯に取り組んでいる。北海道コンサドーレ札幌時代はオールコートのマンツーマンをこなしてきただけあり、切り替えからボールを奪いに行く守備にも抜かりはない。
真面目かつ明るいキャラクターで、新加入ながら周りの選手と積極的にコミュニケーションを取る姿が目に付く。特に右サイドで縦のコンビを組む関根とは、すでに相互理解が高まっている様子だ。同じコルトレイクでプレーし、金子の古巣でもあるJ2の札幌に戻った高嶺朋樹とは来年J1の舞台で再会することを誓いながら、リーグ優勝に向けて全力を尽くす構えだ。
■チアゴ・サンタナ(FW/31歳)
浦和2シーズン目で、大きく飛躍を果たしそうな選手だ。1年目だった昨シーズンは監督交代や終盤戦にスタメンを外れるなど、難しい時期を過ごしながらも12得点。清水エスパルスに在籍した3年間と合わせて、4シーズン連続(2023年のJ2を含む)の二桁得点となった。同じブラジル人のマテウス・サヴィオや決定的なラストパスを供給できる金子の加入、なによりチームが攻撃的にシフトするなかで、昨シーズンの後半戦より確実にチャンスが増えるはずだ。
ボックス内での決定力に関しては、得点王のアンデルソン・ロペス(横浜F・マリノス)やレオ・セアラ(鹿島アントラーズ)にも匹敵するが、周囲のお膳立てがあってこそのストライカーであり、その能力を発揮するだけのベースは整った。あとはスタートから結果を出して乗っていけるか。アルビレックス新潟から加入した長倉幹樹や横浜FCのJ1昇格に貢献した髙橋利樹もおり、終始ポジションが安泰というわけではないが、そうした選手とも切磋琢磨しながらゴール数を伸ばして行けば、勝ち点に直結していくはずだ。
■マテウス・サヴィオ(MF/27歳)
昨シーズンのベスト11であり、6年在籍した柏レイソルから“鳴物入り”で新加入。その存在感はキャンプでも絶大だ。昨年は左サイドをメインに起用されたが「10番が本来のポジション」と本人も語るように、浦和では4-2-3-1のトップ下と左サイドハーフの2ポジションで使われる可能性が高い。攻撃の中心を担いそうなサヴィオを1ポジションに固定しないことにより、中央なら左サイドでの出場を志願する原口元気や本間至恩、左なら2列目の中央に松本泰志や中島翔哉、あるいはセカンドトップ的な役割でFWの長倉幹樹を投入することができる。
サヴィオがボールを持つと、周りの選手が連動しやすいのは明らかだ。やはりボールを失わない安心感と、良いところに走ればパスを出してくれるというイメージがあるのだろう。特にチアゴ・サンタナに関しては“サヴィオ効果”がてき面で、この2人のホットラインから何ゴール、何アシストが生み出されるのか注目したい要素だ。うまさと同時に、真面目さが目に付く選手でもあり、攻守の切り替わりにプレスをかけるなど、必要な守備を当たり前にやってくれることも、組織を重視するマチェイ監督が、早い段階から渡邊と並ぶ主軸として踏み切れる理由だろう。
(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)
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かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。