米政権、UAEによるエヌビディア半導体100万基以上の購入容認検討

米トランプ政権は、アラブ首長国連邦(UAE)に対して、エヌビディア製の最先端半導体100万基以上の輸入を認める取引について検討している。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。この数量は、バイデン前政権時代に導入された人工知能(AI)向け半導体の輸出規制強化策の下での上限をはるかに上回る。また米国製の半導体が最終的に中国に渡るリスクがあるとの懸念も生じさせる。

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  関係者らによればこの取引は、UAEが現在から2027年まで、エヌビディア製の最先端半導体を毎年50万基輸入できるようにする内容。取引は現在なお交渉中で、内容は変更される可能性もある。関係者らは、交渉内容は部外秘だとして匿名を条件に語った。全体の5分の1はアブダビのAI企業G42に割り当てられ、残りはUAEでデータセンターを建設している米企業に供給される予定だという。

  13日の米市場で半導体株は上昇。エヌビディアは一時6.7%高。アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)も一時4.6%上げた。フィラデルフィア半導体指数は3%余り上昇している。

  事情に詳しい複数の関係者によれば、それら米企業のうちの1社はオープンAIである可能性があり、同社は早ければ週内にもUAEにおける新たなデータセンターについて発表する可能性があるという。

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  関係者らによると、この取引の期間中、G42は現時点でのエヌビディアの最上位半導体である「H100」の100万-150万基に相当するコンピューティング能力を購入できる可能性がある。この数量は、バイデン前政権下で導入された「AI拡散規則」で認められていた量の約4倍に相当する。トランプ大統領は、この規制の撤廃を計画している。またこの半導体数量は、米メタ・プラットフォームズがルイジアナ州に計画している大規模データセンターの稼働に必要とされる量と同等。メタが計画中のルイジアナ州のデータセンターは、マンハッタンの大部分を覆うほどの面積になるとされている。

  今回の取引が現在の形で進められた場合、中東、特にUAEでのAI開発に対する米国の政策が劇的に転換することになる。米当局は長年、UAEの政府関係者や民間企業と中国との結びつきに警戒してきた。関係者らによると、今回の取引に関してトランプ政権の当局者がどのような国家安全保障上の条件を課しているかは不明。バイデン前政権下では、G42は華為技術(ファーウェイ)からの資本引き揚げに同意。それにより、UAEでのデータセンターを含む15億ドル規模のマイクロソフトとの提携に道が開かれた。ただブルームバーグの先の報道によれば、UAEは契約条件を順守すると繰り返し表明しているものの、米国防総省の一部当局者は、G42が中国との関係を完全に断ち切ることに懐疑的な見方を示している。

  ホワイトハウスにはコメントを求めて連絡を取ったが、これまで返答を得られていない。エヌビディアとG42、在米UAE大使館、オープンAIはコメントを控えた。協議の詳細の一部については、米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)が先に報じていた。

サウジもアクセス拡大

  エヌビディアとAMDは、サウジアラビアのAI企業ヒューメインの大規模データセンタープロジェクト向けに半導体を供給する。

  エヌビディアのジェンセン・フアン最高経営責任者(CEO)は、サウジの首都リヤドで開かれたサウジ・米投資フォーラムでこの提携を発表。この発表は、トランプ大統領のサウジ訪問に合わせて行われた。また別の発表によると、AMDは「サウジアラビアから米国まで広がる」データセンター向けに半導体とソフトウエアを提供する。プロジェクトの規模は100億ドルに上る。

  エヌビディアとAMDは、AIアクセラレーターの顧客基盤拡大を目指している。現在この技術の購入は、マイクロソフトやアマゾン・ドット・コムなど少数のデータセンター運営企業が中心となっている。エヌビディアとAMDは、新たな顧客層開拓の一環として、国家主導のAIプロジェクト(ソブリンAI)を取り込むことを重要な戦略と位置付けている。

  ヒューメインはサウジの政府系ファンド、パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)の傘下で、データセンターやAIインフラの構築を手掛ける。

原題:US Mulls Letting UAE Buy Over a Million Leading Nvidia Chips (1)(抜粋)

Nvidia, AMD Sell Chips to Saudi Arabia for AI Data Centers (2)

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