スペースXの補給船「カーゴ・ドラゴン」、ISSの軌道を押し上げる-ロシア撤退に備え(UchuBiz)
米Space Exploration Technologies(SpaceX、スペースX)の補給船「Cargo Dragon」(カーゴ・ドラゴン)が9月3日、国際宇宙ステーション(ISS)の軌道を押し上げた。 ISSは地上約400kmを周回しているが、大気抵抗によって少しずつ地球に落下している。これまでは、ロシアの補給船「Progress」(プログレス)が、その軌道を高く押し上げる役目を担ってきた。 Progressを運用するロシアは、早ければ2028年にもISSの運用から撤退する可能性がある。そのため米航空宇宙局(NASA)は、Cargo Dragonを運用するSpaceXと、補給船「Cygnus」(シグナス)を運用する米Northrop Grumman(ノースロップ・グラマン)に軌道上昇(リブースト)の実証実験を要請していた。 SpaceXの最初の実証実験は2024年11月に実施。今回、Cargo Dragonは「Draco」エンジン2基を5分3秒間噴射。このリブーストでISSの高度は419.9km×412kmに到達した。「Cargo Dragonに搭載された新しいブーストキットは、2025年秋に計画されている長時間噴射でISSの高度を維持するのに役立つだろう」とNASAは述べている。 NASAはこれらの試験が、将来のISSの軌道離脱にとっても重要だと述べている。 ISSは2030年の運用終了が計画されており(2030年以降の運用も検討されている)、その後は軌道から離脱して大気圏で燃え尽きる。この「軌道離脱機(Deorbit Vehicle)」の開発にNASAはSpaceXを選定している。 この軌道離脱機はCargo Dragonを大型化させたもの。Cargo Dragonの3倍近い、46基のDracoエンジンを搭載する「Monster Dragon」がISSを制御された形で降下させる。 ISSをリブーストしたCargo Dragonは、ISSへの物資補給ミッション「SpaceX CRS-33」(SpX-33)としてISSに物資を運んだ。SpX-33は、NASAがISSへの物資補給を民間企業に有償で委託する「商業補給サービス(CRS)」の第2フェーズ(CRS-2)の一環であり、SpaceXにとっては33回目の物資補給ミッションになる。 日本が新たに開発した補給船「HTV-X」の1号機は10月21日に「H3」ロケット7号機で打ち上げられる予定。
塚本直樹