灼熱の星が輝かせた蝶のような惑星状星雲「NGC 6302」 チリのジェミニ南望遠鏡が観測
こちらは、惑星状星雲「NGC 6302」の全体像。
さそり座にあるNGC 6302は、その姿から「バタフライ星雲(Butterfly Nebula)」とも呼ばれています。
【▲ ジェミニ南望遠鏡が観測した惑星状星雲「NGC 6302」(Credit: International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA; Image Processing: J. Miller & M. Rodriguez (International Gemini Observatory/NSF NOIRLab), T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF NOIRLab), M. Zamani (NSF NOIRLab))】惑星状星雲とは、超新星爆発を起こさない比較的軽い恒星(質量は太陽の8倍以下)が、恒星進化の最終段階で周囲に形成する天体です。
太陽のような恒星が晩年を迎えると主系列星から赤色巨星に進化し、外層から周囲へとガスや塵(ダスト)を放出するようになります。
やがて、ガスを失った星が赤色巨星から白色矮星へと移り変わる段階(中心星)になると、放出されたガスが星から放射された紫外線によって電離して光を放ち、惑星状星雲として観測されるようになります。
ガスの広がり方はそれぞれの星雲によって異なり、整った円形に見えることもあれば、NGC 6302のように正反対の2方向にガスが広がる双極構造を持つこともあります。
ちなみに、このタイプの天体を指す「惑星状」星雲という名前は、丸く見えるその様子が惑星に似ていたことから、昔の天文学者たちによって名付けられました。
太陽の約1000倍まで膨らんだ後に、ガスや塵を放出したNGC 6302の中心星は、今ではその質量が太陽の3分の2程度まで軽くなっています。20万℃を超える中心星の電磁放射は、「翼」を思わせる構造を2万℃以上に加熱して、ガスを輝かせています。
画像の色は、赤が水素のある領域、青が酸素のある領域を示しています。NGC 6302では他にも窒素・硫黄・鉄といった元素が見つかっていて、いずれは新たな恒星や惑星の材料になると考えられています。
冒頭の画像は、北半球と南半球に口径8.1mの望遠鏡を有するジェミニ天文台のジェミニ南望遠鏡(セロ・パチョン、チリ)の観測開始25周年を記念して、NSF NOIRLab=アメリカ国立科学財団の国立光学・赤外天文学研究所が2025年11月26日付で公開したものです。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部