ビル・ゲイツ氏、資産の大半をアフリカの医療や教育に投入へ 若者にAI活用を促す
米マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツ氏(69)は2日、今後20年間で自分の莫大な資産の大半を、アフリカにおける保健・教育サービスの向上に充てる方針を明らかにした。エチオピアの首都アディスアベバにあるアフリカ連合(AU)本部で講演した。 ゲイツ氏は講演で、「私は最近、今後20年間で自らの資産を寄付すると決意した。その資金の大半は、ここアフリカが直面する課題の解決に充てることになる」と述べた。 ゲイツ氏は先月、自分の資産が2045年までに2000億ドル(約28兆6000億円)に達すると見込んだ上で、その99%を寄付し、同年までにビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団の活動を終了させると発表していた。 2日の講演でゲイツ氏は、「健康と教育を通じて人間の可能性を解き放つことで、アフリカのすべての国が繁栄への道を歩むことができるはずだ」と述べ、アフリカで新規技術の開発に取り組む若者に対し、大陸の医療を改善するための人工知能(AI)開発に取り組むよう呼びかけた。 モザンビークのグラサ・マシェル元大統領夫人は、ゲイツ氏の発表を歓迎し、「危機の時代における重要な声明だ」と評価。「変革の道を私たちと共に歩み続けるという、ゲイツ氏の揺るぎない決意に期待している」と語った。 アメリカ政府はこのところ、「アメリカ第一主義」政策の一環として、HIV/エイズ患者の治療を含むアフリカ向け支援を削減しており、大陸の医療体制の将来に対する懸念が高まっている。 ゲイツ氏は2日の講演で、自分の財団がアフリカで長年活動してきた実績を踏まえ、今後は初期医療の改善に重点を置く方針を示した。 「妊娠する前から女性の健康と栄養状態を整えること、そしてそれを妊娠中も維持することが、最も大きな成果をもたらすと、私たちはこれまでの活動で学んできた」とゲイツ氏は言い、「子どもが最初の4年間に良好な栄養を受けることも、将来に大きな違いを生む」と強調した。 若い技術者たちに向けたメッセージとして、ゲイツ氏は、携帯電話がアフリカの金融業界を一変させた事例を挙げ、今後はAIを活用すべきだと訴えた。 「アフリカは、従来型の銀行システムをほぼ飛び越えた。そして今、次世代の医療システムを構築するにあたり、そこにAIをどう組み込むかを考える絶好の機会がいま目の前にある」 ゲイツ氏は、すでに医療サービスの改善を進めている国として、ルワンダを例に挙げた。ルワンダでは、AIを活用した超音波診断によってリスクの高い妊娠を特定している。 ゲイツ財団は、今後の活動における優先課題として、予防可能ながら母親と子どもの命を奪う疾病の根絶、マラリアやはしかといった感染症の撲滅、数億人規模の貧困からの脱却の3点を表明している。 そのうえで、「20年後には、当財団の活動を終了する」と声明で述べている。 ゲイツ氏は先月、同財団を通じた寄付を加速させる方針を明らかにした。 「私が死んだ時にいろいろな人がいろいろなことを言うだろうが、『彼は金持ちのまま死んだ』とは言われたくない」と、ゲイツ氏はブログに書いている。 米通信社ブルームバーグによると、資産の99%を寄付したとしても、ゲイツ氏はなお、世界で5番目の資産家にとどまる可能性があるという。 ゲイツ氏は1975年、ポール・アレン氏と共にマイクロソフトを創業。同社はコンピューターソフトウェアをはじめとするテクノロジー分野で圧倒的な存在となった。 ゲイツ氏は2000年に最高経営責任者(CEO)を、2014年には会長職を退任。21世紀に入ってからは徐々に経営の第一線から退いている。 ゲイツ氏は、投資家のウォーレン・バフェット氏や他の慈善家たちから影響を受け、資産の大部分を社会に還元する決意を固めたと語っている。 一方で、ゲイツ財団が慈善団体としての立場を利用して税負担を回避しているという批判や、世界の保健医療制度に過度な影響力を持っているという批判の声もある。 (英語記事 Bill Gates to give most of his $200bn fortune to Africa)
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