訂正 -アングル:日本の起債市場、復調の兆しもなお薄氷 ブリヂストン債半減
「住友ゴム工業の5年債が増額された上、タイトサイドで決まった」。15日夕方の債券市場では、5年と10年合わせて総額200億円(訂正)と小粒ながらも事業債が無事に条件決定を迎え、条件も改善したことから、証券会社の債券関係者から安どの声が聞かれた。「徐々に投資家との対話もできるようになってきている」と関係者の1人は話す。
起債市場が浮上の道を模索する中、リトマス試験紙として注目を集めていたのがブリヂストンの起債だった。発行額はもともと1000億円超が見込まれ、格付けはダブルAプラス(R&I、JCR)。市場関係者は「こうした高格付けの企業がしっかりと需要を集められれば、起債市場が改善していく姿がみえてくる」(市場関係者)と話していた。
水面下で需要を調査していた同社の起債は、今週が延期か継続かの判断の山場となる見通しだったが、証券関係者によると17日に、3本あった年限のうち7年債の起債を止めた。総額も500億円程度まで減額した上で、需要調査を続行している。
市場関係者からは「残念ながら全員参加型のディールにはなっていないものの、ボラタイル(変動幅が大きい)な環境ながら完全なリスクオフにはなっていないことが確認できる」との声が聞かれた。
ブリヂストンはロイターの取材にコメントを控えた。
<起債市場に8000億円の影響も>
関係者によると、ロットの大きな注文を出す年金基金が一斉に取引を手控え、通常動きのある機関投資家のうち7割程度が様子見姿勢を示す案件もみられているという。
みずほ証券で債券業務を担当する小出昌弘執行役員は、「トランプ関税」による今月の起債市場への影響を7000-8000億円と見積もる。投資家の目線に対して「スプレッドの調整がまだ追いついていない可能性がある」とした上で、市場の正常化に向けては「ボラタイルな市場が落ち着き、一般債の適正価格の再形成を丁寧に進めていかなければならない」と話す。起債の中止を決めた企業の中には、融資による資金調達へ流れた向きもあるとした。
大和証券デット・キャピタルマーケット第3部の大津大副部長は、「関税が延期された90日後に何が起きるか分からず、また予想外のニュースが飛び出す可能性もある。不透明感が残る限り、市場が完全に戻ることはない」と指摘する。投資家は当面リスクプレミアムを大きめに見積もり、企業もそれに応じて厚めのスプレッドを支払う必要があるとみる。
<世界の混乱からは一定の距離も>
ただし、市場規模の小ささが最悪の事態を回避させた一方で、今後の回復局面では、投資家層の厚みに差があることから、米国に比べて回復が遅れる可能性を指摘する声も出ている。
(浦中美穂、Anton Bridge 編集:久保信博)
(2段落目の住友ゴム債の発行総額を「250億円」から「200億円」に訂正します。)
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