イラン、ロシアに短距離ミサイル発射装置の移送を準備=情報筋
[ワシントン/ロンドン 9日 ロイター] - イランが短距離弾道ミサイル「ファス360」の発射装置を近くロシアに引き渡す準備を進めていることが、西側諸国の安全保障当局者と中東地域の当局者の話で明らかになった。
これに対し、イラン国連代表部は電子メールによる声明で、「根拠のない疑惑」であるとしてこれを否定した。「紛争が続いている間、イランはいずれの側にもいかなる軍事支援も行わない」と述べた。
アナリストらによると、ファス360の射程は120キロメートルで、ロシア軍はウクライナ軍の最前線部隊や近隣の軍事目標、ロシア国境に近い都市への攻撃に活用できる。
米国は昨年9月、イランがロシア船籍の船舶で同ミサイルをロシアに輸送したと発表した。しかし、関係筋によると、発射装置は含まれていなかった。
中東地域の当局者は発射装置の引き渡しが遅れていることについて、イランと米国の核問題協議が理由の一つだと述べた。アナリストらは別の要因として、ロシアの車両に搭載するために発射装置を改造する必要があった可能性があると指摘している。
専門家はこの発射装置の導入によって、ロシアはウクライナへの圧力をさらに強めることができると分析している。ファス360の配備によりロシアは「イスカンデル」のような高性能ミサイルを電力網などの重要インフラへの長距離攻撃用に温存できるという。
国際戦略研究所(IISS)のファビアン・ヒンツ研究員は、「(ロシア軍は)価値の高い目標に対する攻撃をはるかに迅速に開始できるようになる。ファス360は発射準備に手間がかからず、飛行時間も極めて短い」と語った。
オランダ国防大学のラルフ・サベルスベルク准教授は、ファス360は熟練兵でなくても操作できるように設計されていると述べた。
ただ、「命中精度はあまり高くなく、搭載できる弾頭もそれほど大きくない」と指摘。「なぜロシアが性能の劣るイラン製ミサイルを購入するのか。考えられる唯一の理由は、自国で十分な数を生産できないからだ」と語った。
ロシアによるイラン製ミサイル配備は、トランプ米大統領が取り組むウクライナとロシアの和平仲介の試みや、米イラン核協議を複雑にする可能性がある。
英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)の上級研究員ジャック・ワトリング氏は、イラン当局はロシアへの武器供与の問題と核協議は切り離して扱われるべきとの立場だろうと述べた。
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