【動画】7000万年前の「超肉食」ワニの新種、陸の恐竜を捕食か
コステンスクス・アトロックス(Kostensuchus atrox)の頭骨の化石。7000万年前の古代ワニだ。白亜紀の時代、現在のパタゴニア地方南部の頂点捕食者だったと考えられている。(PHOTOGRAPH BY JOSÉ BRUSCO)
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およそ7000万年前の白亜紀、恐竜の時代が暮れかかろうとしていた頃、現代の南米パタゴニア地方最南端に、コステンスクス・アトロックス(Kostensuchus atrox)と名付けられた古代のワニが生息していた。不敵に笑う口元からは、のこぎりのように並んだ50本以上の鋭い歯がのぞいている。8月27日付で学術誌「PLOS One」に新種として記載された。
コステンスクス・アトロックスは超肉食性(hypercarnivorous)、つまり、ほぼ肉しか食べなかった。また、頂点捕食者であり、円錐形でナイフのような「ティラノサウルス・レックスにも匹敵する歯を持っていました」と話すのは、今回の新種発見に関わったディエゴ・ポル氏だ。氏は古生物学者でナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(探求者)でもある。巨大な顎(あご)の筋肉は肉をかみ切るのに適しており、「1回かんだだけで人間を真っ二つにすることができます」
見つかった頭骨と骨格の一部は驚くほど状態よく保存されていた。ポル氏と、アルゼンチン、ベルナルディーノ・リバダビア自然科学博物館のチームは、ブラジルと日本の研究者たちとともに、それらを基に今回の新種を発表した。
体長は推定3メートル50センチ、体重はおよそ250キロと推定され、現代の最大級のワニよりは小さい。しかし、現代のワニより長く直立した肢をもっており、陸上で恐竜を含む獲物を狩るのに役立った可能性がある。ただし、今回の論文に関わっていない研究者の間には異論もある。
コステンスクスの背骨には骨折が治った痕があるとポル氏は話す。彼らは互いに戦っていたのかもしれない。「餌や縄張りをめぐる闘争や攻撃でけがを負ったというのが一つのシナリオです」とポル氏は言う。
【動画】2頭のコステンスクス・アトロックス(Kostensuchus atrox)が餌をめぐって衝突する様子を復元した映像。(GABRIEL DIAZ YANTEN)
コステンスクスが南極に近いパタゴニア南部で発見されたことは、今でこそ雪と氷に覆われているものの、白亜紀の頃は温暖湿潤だった高緯度の気候で、古代のワニの仲間が繁栄していたことを示唆している。(参考記事:「古代の「超肉食」哺乳類、ヒエノドンのほぼ完全な頭骨を発見」)
長らく失われていたワニの仲間
コステンスクス・アトロックスは、絶滅したペイロサウルス科に属する。ペイロサウルス科は現代のワニの仲間だが、直接の祖先ではない。その多くは陸生で、6600万年前の大量絶滅の際、非鳥類型恐竜とともに絶滅した。
そのなかで、コステンスクス・アトロックスはこれまでで最も南で発見されたペイロサウルス科の新種となる。また、同科の化石では保存状態や骨格のそろい方が最も良いものの一つだ。
コステンスクス・アトロックスの胸郭の化石。(PHOTOGRAPH BY FERNANDO NOVAS)
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古生物学者のマルセロ・イサシ氏は、ベージュ色の岩塊に埋め込まれたコステンスクス・アトロックスの頭骨と顎の化石を発見した。(PHOTOGRAPH BY FEDERICO AGNOLÍN)
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「これは本当にすばらしい化石であり、ワニの系統樹の中で非常に珍しく、理解が進んでいない部分に属するものです」と、米テネシー大学ノックスビル校の古脊椎動物学者ステファニー・ドラムヘラー・ホートン氏は話す。なお、氏は今回の研究には関わっていない。