漂着したクジラ…胸ビレは盗まれ、刃物で名を彫ろうとした傷跡「こんな事は初めて」 実は、違法行為です

陸に打ち上げられたに加えられた違法行為がSNS上で大きな注目を集めている。

「昨日漂流していたクジラが夜のうちに漂着しました。 最近はSNSで気軽に投稿できるおかげでこちらも情報収集出来る便利な一面もありますが、漂着鯨をいたずらしたり盗んだりする輩がいる事も忘れてはいけません。」

とその模様を紹介したのは鯨類のストランディング(陸に打ち上がってしまう現象)調査に携わる一般社団法人 富士ストランディングネットワーク代表理事の勇魚屋さん(@isanaya223)。

漂着した鯨に加えられた哀しい行為…(勇魚屋さん提供)

静岡市清水区の湾岸に漂着した鯨の死骸。よく見ると胸ビレは切り取られており、身体には刃物で名前を彫ろうとしたような傷跡が確認できる。

なにか文字を書こうとしたのだろうか…(勇魚屋さん提供)

いたずらのつもりかもしれないが、こうした行為は倫理的に許されるものではなく、しかも鯨体の所持は水産庁の許可が必要。今回の投稿に対し、SNSユーザー達からは大きな注目が集まった。

勇魚屋さんにお話を聞いた。

ーーこの光景をご覧になって。

勇魚屋:最初は送られてきた写真を見たのですが、明らかに人為的な傷がついている様に見えました。その日のうちに実際現場を見に行きましたが自然についた傷ではなく人が切った痕がありました。今まで日本全国の漂着鯨類の対応をしてきましたが、こんな事は初めてでショックを受けました。鯨が漂着すると研究者はサンプリングといって皮膚片や筋肉を採取します、ですがそれとは全く違った切り方でいわば素人の仕業というのが一目でわかりました。

サメに傷付けられた跡。人為的なものとは異なるのがわかる(勇魚屋さん提供)

ーー打ち上げられた鯨を勝手に採取することは違法になるのですね。

勇魚屋:鯨に関しては厳格にルールが決められていて漂着鯨類から何かを採取するのは水産庁の許可が必要です、その許可も学術利用にのみ許されるので学術機関以外の一般の方が許可される事はありません。さらに勝手な持ち出しは罪に問われる可能性もありますし、鯨の研究者からすれば貴重なサンプルを傷つけられたり持ち去られるのは研究の阻害にもつながります。

ーーこの問題の本質は?

勇魚屋:動物愛護とか感情の問題もありますが、法律で定められた手続きが広く周知されていないことが直接の原因だと思います。なかなか目にする機会のない漂着鯨ですが全国だと年間300頭近くの報告がされています。いつどこで鯨の漂着があるか分かりませんが、漂着鯨類を見かけましたらすぐにお近くの博物館やストランディングネットワークにご連絡下さい。

◇ ◇

漂着した鯨を発見した場合はまず全国にあるストランディングネットワークへの報告を。傷をつけたりしなくても内部にたまったガスで破裂する可能性もあり、人にも感染する病気を持っている事もあるので、むやみに近寄るべきではないだろう。

勇魚屋さん関連情報Xアカウント:https://x.com/isanaya223一般社団法人 富士ストランディングネットワーク公式サイト:https://www.kujira110.net/


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漂着した鯨に加えられた哀しい行為…(勇魚屋さん提供)

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