酷暑の夏、もし停電したら? 熱中症対策専門家が勧める冷の一手
全国で梅雨明けが発表され、夏本番に突入した。最近では熱中症対策への意識も高まっているが、停電でエアコンが使えなくなった場合はどうしたらいいのか。また北海道のように、エアコンの設置が一般的ではない地域で、ここ数日のようにいきなり酷暑が訪れた場合の対処法はあるのか。
<もし猛暑で停電したら心身ともに耐える自信ない。真夏の停電って命に関わるね>
<連日30度を超える暑さの時に、もし震災で停電になったら熱中症での死者がすごいことになりそう>
交流サイト(SNS)上でも懸念の声が上がるように、連日の高い気温でリスクが高まる熱中症への不安に、停電が拍車をかけている。
Advertisement首都直下型や南海トラフの地震だけでなく、台風やゲリラ豪雨に伴う落雷など、夏ならではの停電リスクも不安感を高める。連日酷使するエアコンが急に壊れる可能性もゼロではない。
そこで、熱中症対策に詳しく、東京都立病院機構で危機管理統括部長を務める中島康医師に、エアコンが使えなくてもできる緊急時の対策を聞いた。
なお今回の対策は節電対策ではないので、エアコンの使用を控えることはリスクを高めるため避けてほしい。また、通電しておりエアコンが利用できる施設が近くにあれば、そちらに駆け込むのが最善の策だ。
「気化熱の利用」が重要
中島医師によると、熱中症を予防する上で重要なのは湿度であり「気化熱をどう利用するか、いかに水が蒸発しやすい状況をつくるかにかかっている」という。
熱中症予防を目的とした「暑さ指数」でも、気温より大きな影響を与えるのが湿度だ。
ゆったりとした服を着たり、空気が流れる環境をつくったりすることで、体の周りで水分が蒸発し、体の表面を冷ます条件をつくることが重要なのだという。
うちわであおいでもよいが、かえって体温を上げてしまう側面もあるため、充電タイプの扇風機やファン付きベストが重宝する。
水分を体にまとわせるには、ぬれたタオルで体を湿らせるのが簡単だ。
ネット上では霧吹きで体にかけるという対策も出てくるが、一般的な霧吹きでは水の粒が大きすぎ、熱を逃がそうとする体をコーティングしてしまうため注意が必要だという。
霧吹きを使うなら、化粧水を吹きかけるようなミスト状のものを利用したい。
ぬれたタオルを首に巻くことも体の熱を奪うが、冷たい状態を保てなければマフラーのようにかえって熱がこもってしまう可能性があるので注意が必要だ。
ネッククーラーや冷却パンチといった冷感グッズも血液の温度を下げるには有力だが、冷たさがなくなったら替えることが重要。中島医師は「風が起こせるなら、接触よりも気流の方が効率は良い」と言う。
遮光カーテン、実はNG?
室内であれば、室温を上げる日差しを入れないことが重要だが、遮光性の高いカーテンは風通しを悪くする可能性があるため要注意だ。
ひさしがあれば日差しを避けられるが、なければすだれなどで日光を遮り、マンションであればベランダに打ち水をすることも部屋に入る空気の温度を下げ効果的だという。
コンクリートや金属など熱伝導率の高い構造物に体をくっつけることでも、熱を逃がすことができる。
いかに予防を心がけても、熱中症の疑いがあれば早期に次の行動に移ることが求められる。
中島医師も「そのままそこにいても良くなる確率はほぼゼロ」と警鐘を鳴らす。
汗を塩辛く感じたり、頭痛や嘔吐(おうと)の症状が出たりすれば、我慢せずに病院に行くサインだという。
家族など周りの人が分かるサインもある。本人が「大丈夫」だと言っていても、受け答えまでに時間がかかったり、変な応答になったりしていれば病院に連れて行くべき段階だ。
もしもの時の熱中症対策も大事だが、中島医師は「水が足りなくなるから熱中症になるので、水が足りない状況を察知できれば熱中症になる手前で手が打てる」と、日ごろできる自己管理も教えてくれた。
朝の尿がレモン色よりも濃い場合、体が脱水状態のため注意が必要で、意識的に水を飲むべきだという。お酒を飲んだ翌日や、熱中症リスクを高める寝不足の後は、特に水分摂取を心がけたい。
喉が渇く前に意識的に水を摂取し、トイレに行く度に体の状態をチェックする。そんな小さな積み重ねが、後々の熱中症リスクを軽減させる。【川口峻】