ウェッブ望遠鏡、8,000光年先の特殊な恒星系を捉える(ギズモード・ジャパン)
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が、地球から約8,000光年離れた特異な恒星系を観測。この宇宙望遠鏡は、軌道上で回り合う2つの恒星を取り囲む、4本の渦巻く塵の画像を捉えました。 【全画像をみる】ウェッブ望遠鏡、8,000光年先の特殊な恒星系を捉える NASAは、水曜日にこの画像を リリース 。Apep系にある2つのウォルフ・ライエ星を取り巻く塵殻の存在を確認したとのこと。 これまでの観測では、塵の渦巻きは1つのみしか検出されなかったのですが、今回ウェッブは4つ全ての渦を検出しただけではなく、連星が互いを周回するのに要する時間も絞り込みました。 カリフォルニア工科大学の研究者で、Astrophysical Journal に掲載された新たな研究の筆頭著者であるYinuo Han氏は、声明で次のように述べています。 「この度の新たな観測は、暗室に入って電気をつけたようなもので、全てが視界に飛び込んで来るような感覚に陥らせました。ウェッブの画像には、塵が至るところにあり、その大部分が反復的で予測可能な構造のもと放出されたものであることを示しています。」
ウォルフ・ライエ星は極めて珍しく、天の川銀河にはおよそ1,000個ほどしか存在しないと考えられています。これらは、恒星の寿命の後期段階に当たる、非常に巨大で明るい星です。 これほど巨大な星は長くは保たず、ウォルフ・ライエ星は非常に早く燃料を燃やし尽くし、高圧の星風を通じてその質量を宇宙空間へと放出します。 Apep系の恒星ペアは、過去700年に渡って外層を放出してきました。この2つのウォルフ・ライエ星は、重力によって互いに結びついており、さらに3つ目の巨大な超巨星より広い軌道から塵の雲に穴を開けられています。 一般的なウォルフ・ライエ星は2~10年のサイクルで互いを周回します。記録された最長の周期でも30年でした。しかし、Apep系のウォルフ・ライエ星は、190年に1度という非常に長い周期で周回をしています。 新研究のチームは、ウェッブが撮影したリングの位置の測定値と、チリの欧州南天天文台・VLT(Very Large Telescope)が8年間にわたって行った観測に基づく殻の膨張速度を組み合わせることで、この恒星たちの軌道を割り出しました。 それぞれの長い軌道周期の中で2つの星は25年ほど近接し、膨張する塵殻を形成します。そして、連星が接近し互いに近点を通過する際、その星風が衝突して混ざり合い四半世紀に渡って続く塵の螺旋を形作るのです。他の恒星系の塵は、数ヶ月しか持続しないことを考えると、Apep系の塵は非常に長寿なものと言えるでしょう。