月に住まうという研究の回答。資材は月にあるもの使いましょう

image: generateda at Whisk

これがいちばん未来の家。だって「月の砂」製だもの。

レゴリスというものをご存じですか? 月の表面を覆う細かい砂や岩のことで、アメリカ航空宇宙局による「アポロ計画」が持ち帰ったサンプルをもとに詳しく分析されてきました。

そのレゴリスを使って、月面に直接建物を3Dプリントしてしまおうという研究が、いよいよ具体的な段階に入ってきています。

月の砂から3Dプリントの素材を作る

オハイオ州立大学の研究チームが発表した論文によると、月面高地の模擬レゴリス(LHS-1)を素材に特殊なレーザー3Dプリンティング法を使うことで、放射線や過酷な月面環境にも耐えうる硬化建材を作り出せることが確認されました。

論文は学術誌『Acta Astronautica』に掲載されています。

実験では模擬レゴリスをレーザーで溶かして層を積み重ね、ステンレス鋼やガラス製のベース面に融着させる手法を採用。また、アルミナ・ケイ酸塩セラミックという素材への密着性が特に高いことも発見されており、これは両素材が結晶を形成し、耐熱性と機械的強度を高めるためであると考えられています。

また、3Dプリントの品質は大気中の酸素濃度、レーザー出力、印刷速度などの環境要因にも左右されることも分かりました。

現地調達ができるほど研究も進む

なぜこの技術が重要かというと、できるだけ地球から荷物を運ばなくていい月面基地を作るためです。

NASAのアルテミス計画が目指す月南極への恒久的な有人拠点、そしてESA(欧州宇宙機関)や中国、ロシアも構想中の月面基地における全計画において、現地調達は不可欠な要素になっています。

物資の補給は不定期で、地球から到着するまでに何日もかかることを考えると、月にあるもので賄う発想は、ほぼ必須でしょう。

将来的には「電力源を電気から太陽光や複合型電源システムに切り替えた、より大規模なバージョンへのスケールアップも視野に入れている」とチームは述べています。

居住施設だけでなく、宇宙飛行士が現地で使うツールを都度プリントするという使い方も考えられており、「地球から工具セットを持っていかなくていい」未来が、かなりリアルに見えてきています。

そしてここが個人的に刺さる話なのですが、この技術は宇宙だけの話に留まらないのです。

研究の共同著者である機械・航空宇宙工学に長けたSarah Wolff准教授は、「資源が極端に乏しい環境でものを作れるなら、それは地球上でのサステナビリティにも直結する。宇宙で製造できるなら、地球でもより少ない資源でものを作れるようになる」と語っています。

月で成立するテクノロジーは、地球の過酷な環境や物資が届きにくい地域でも応用できる可能性を秘めている。

「宇宙で解けば地球でも解ける」という発想は、スペース開発の外側にいる私たちにとっても、じわじわと関係してくる話なんですね。

Source: IEEE Spectrum, Ohio State University

関連記事: