ウクライナ戦場の霧、天候の変化が戦況に影響 双方にとって危機にも好機にも
ロシア軍のドローン攻撃を受けて炎上する車両=12日、ウクライナ・ドネツク州/Iryna Rybakova/Press Service of the 93rd Kholodnyi Yar Separate Mechanized Brigade of the Ukrainian Armed Forces/Reuters
(CNN) ウクライナの前線では、天候の変化が敵味方双方にとって、危険な状況をもたらすと同時に新たな好機にもつながっている。
広範囲に広がる霧のため、ロシアとウクライナは双方ともドローン(無人機)の使用が制限されているが、この霧を逆手に取る動きもある。
ウクライナの非公式の戦況監視サイト「ディープステート」によると、ロシア軍は14日、南部のボウチャ川で視界不良を突き、浮桟橋を設置した。少なくとも車両10台以上が渡河し、その後、集落に散開したという。
「霧はとても濃く、敵は引き続き兵力を集めている」と、ウクライナ軍兵士がSNSに投稿した。
ウクライナ東部ドネツク州では、激戦地ポクロウスクで発生した霧が双方のドローン運用を妨げており、戦場で偶発性が増している。
「ドンバスの霧。霧の中を動けばドローンに狙われにくいが、こちらも難しい。この土地はまるでバックギャモン(のゲーム)のようだ」とウクライナ兵は語った。
軍事アナリストのデービッド・アックス氏によると、この霧はウクライナの部隊がポクロウスクでロシア軍の支配地域に対して襲撃を行うのに役立っている。ウクライナ軍は同市を二分する鉄道の線路を素早く移動しているという。
ウクライナのドローン操縦者は13日、X(旧ツイッター)への投稿で、「とくに霧の後、思いもよらない場所で銃撃戦が勃発している」と述べた。
通常ウクライナ軍はロシア軍の動きを監視するため偵察ドローンを使うが、天候がそれを妨げている。
ウクライナを最近訪れたアナリストのマイケル・コフマン氏は14日、Xに「霧、風、雨はドローンの運用を著しく阻害し、ロシア軍がウクライナの陣地を突破するのを可能にしている」と投稿した。
アックス氏は、オンラインプラットフォームでの投稿で、不安定で流動的な前線において、悪天候とそれに伴うウクライナとロシアのドローンによる上空監視の空白が混乱に拍車をかけていると指摘した。
アックス氏によれば、こうした状況はロシア軍に有利になる可能性がある。ロシア軍は「新たな領土を最終的に掌握するまで偵察と前進を続ける」必要があるからだ。一方、ウクライナ側がロシア支配地域への奇襲や孤立部隊の救出を行う際に有利に働く可能性もある。
ロシア軍の「数的優位」
ザポリージャ州でも天候がロシア軍に味方した。ロシア国防省は15日、ヤブルコベの村と周辺の二つの集落を制圧したと発表した。
ウクライナ軍は15日、ザポリージャ州やドニプロペトロウシク州の一部で、ロシア軍による激しい攻撃と大規模な砲撃があったと明らかにした。
過去1日で衝突は約40回に上り、「敵の損失は兵員約300人、車両58台に達した」としている。
ウクライナ軍は、ザポリージャ州にある集落から、より防御に適した陣地に部隊を後退させたと発表した。
ウクライナ軍のシルスキー司令官は先に、南部の一部地域で情勢が大きく悪化していると述べ、ロシア軍が「兵力と資源の数的優位」を生かし三つの集落を占領したと明らかにしていた。
ロシア軍は現在、州都ザポリージャから約90キロ、フリャイポレ市から10キロ圏内に迫っている。フリャイポレは以前からロシアにとって目標の一つとなっている。