全世界に手薄で前近代的な防空設備を知られたロシア、勝利にはほど遠い現実(JBpress)
■ 1. ロシア爆撃機基地へドローン攻撃 2025年6月1日、ウクライナはFPV(First Person View Drone=一人称視点)ドローンで、ロシア・イルクーツク州のベラヤ基地、ムルマンスク州のオレニャ基地、リャザン州のディアギレヴォ基地、イヴァノヴォ州のイヴァノヴォ基地への攻撃を行った。 【筆者作成イメージ】ウクライナのFPV(一人称視点)ドローンが誘導と爆撃機攻撃を行った方法 各基地では、当日は爆撃機等が燃える映像が、数日後には燃え痕が映し出された。 ウクライナ軍は、誰も予想しなかった攻撃方法で偉大な戦果を挙げたのである。 破壊されたのは、「Tu-22M」バックファイアが13〜15機、「Tu-95」ベアが11〜12機、「Tu-160」ブラックジャック爆撃機が1機、ほかに「A-50」早期警戒管制機、「IL-76」等輸送機・空中給油機など合計41機だという。 これは、ロシアが保有する爆撃機や早期警戒管制機数の34%である。 ■ 2. FPVドローン攻撃の奇策 この奇策を成功させた最も大きなポイントは、ウクライナからコントロールできる大量のFPVドローンと爆薬をロシア国内に持ち込めたことだ。 税関は通常、持ち込まれる荷をコンテナ丸ごとにX線検査してチェックするのが規則である。 だが、その方法ですべての荷物に検査を実施していると、通関に時間がかかる。このため、定期的にかつ大量の荷物を扱う輸送業者によってはチェックを省く場合がある。 例えば、中国などから大量の爆薬や兵器の部品を中露国境を通過させる場合には検査を省いている可能性がある。また、これらに紛れて搬入することも可能である。 ウクライナは、通関の欠陥や悪癖をうまく利用したと考えられる。 ロシア国内に入れてしまえば、ドローンや爆薬などを、建物内で密かに組み立てればよい。 組み立てが終われば、ドローンが飛行できる近くまで車両で移動する。 そして、ドローンの発射は通信衛星を使用してリモートで行い、飛行はGPS誘導で目標に接近し、通信衛星を通して見える映像で目標を選定し、爆撃機等の最も爆発しやすい急所を狙って突入する。 図 ウクライナのFPVドローンの誘導と爆撃機攻撃(イメージ) ドローンの発射は、「ロシア国内へのウクライナの大型無人機による攻撃」および「無人艇からのミサイル攻撃」とほぼ同じだが、これらを総合的な企画にしたのは、誰も考えなかったことだ。