地球への衝突が懸念される小惑星、最新の観測では月が心配?
「ゼロではない」が最大何%なのか気になる。
小惑星「2024 YR4」は、2032年12月22日に地球の近くを通過すると予想されていますが、ウェッブ宇宙望遠鏡によって再確認したところ、地球に衝突する確率はほぼ0%でひと安心。ところが、月に衝突する可能性は否定できないのだとか。
小惑星2024 YR4がチリの小惑星地球衝突最終警報システム(ATLAS)に発見されたのは2024年12月27日のこと。その後、一時は地球に衝突する確率が3.1%まで上昇しましたが、2月20にはその可能性がほぼゼロになったため、アメリカ航空宇宙局(NASA)の要注意リストから外されました。
ウェッブが太鼓判。小惑星の地球への衝突はほぼなし
とりあえずホッとしたところに、今回ウェッブ宇宙望遠鏡の最新観測結果でさらに2024 YR4が地球の脅威にならないことを再確認したんですけど、月に関してはまた別の話みたいです。
発見時、2024 YR4は地球から約83万km離れていました。その後地球から遠ざかる軌道をたどっており、地球接近は2028年12月までありません。
2024 YR4は国際小惑星警報ネットワーク(IAWN)の地上望遠鏡を使って追跡しているのですが、2028年6月になるまでは暗すぎて観測が困難なのだとか。そこで、赤外線の波長によって小惑星の明るさを測定することで大きさをより正確に把握できるウェッブ宇宙望遠鏡にお呼びがかかったというわけです。真打ち登場。
2024 YR4は思ったよりデカい
科学者チームは1月下旬、2024 YR4がどれくらいの被害をもたらす可能性があるかについて、ウェッブの中赤外線観測装置を用いて詳しく調査するよう提案。初期の観測結果では、2024 YR4はこれまで考えられていたよりも岩石質でサイズも大きいことが明らかになりましたが、次回のフライバイで地球に衝突する可能性はほぼゼロであることが確認されています。今回の観測結果については、まだ専門家による査読や公開には至っていないそうです。
ウェッブは3月26日に2024 YR4を初めて捉え、小惑星が回転する様子を5時間にわたって20分ごとに記録しました。その結果をもとに、2024 YR4が従来の推定よりもわずかに大きいという結論に至ったといいます。
これまで、反射光の分析から幅は40~90mと考えられていましたが、ウェッブの観測では幅60mという結果になりました。
また、今回の観測では、サイズも太陽からの距離も同じくらいの他の小惑星と比較すると、2024 YR4は表面温度が低いらしいです。理由として、2024 YR4は通常よりも岩が多い可能性を科学者は指摘しています。
さらに、チームは5月にも再度ウェッブを使って2024 YR4の熱的特性や軌道特性をより詳しく観測する予定とのことです。
月に衝突する可能性は「ゼロではない」
ウェッブの観測結果から、2024 YR4の地球衝突が回避された可能性はかなり高くなったものの、「現時点においても月に衝突する可能性はゼロではない」とIAWNは述べています。といっても、「ゼロではない」の幅が広すぎて、具体的な数値を見ないと心配レベルがどれくらいなのかピンときません。
45億年の歴史のなかで、数多くの小惑星が月に衝突してきたと思われますが、2024 YR4が衝突したらどうなるかについてはまだ定かではありません。
このサイズの小惑星が地球に衝突した場合、放出されるエネルギーは広島に投下された原子爆弾の500倍以上にあたる8メガトンに達する見込みで、1908年のツングースカ大爆発に匹敵する威力だとNASAは述べています。また、月に衝突すると広島原爆の約340倍のエネルギーが放出されると予測されています。
もしも2024 YR4が月の地球から観測できる範囲内に衝突するようなことになれば、科学者にとってリアルタイムでクレーターが形成される様子を観察するまたとない機会になります。そしてそれによって、太陽系がたどってきた激動の歴史をもっと深く理解できるかもしれません。
個人的には、どこにも衝突せずに飛び去ってもらいたいところです。