スイス大統領、関税39%引き下げ巡り訪米へ-新たな提案を用意
スイスのケラーズッター大統領とパルムラン副大統領兼経済相は5日に米ワシントンを訪れ、米国がスイス産品に課すとしている39%の関税の引き下げを求める提案をする。米国の関税の発動は、7日に迫っている。
スイス政府は発表で、訪米の目的は「米当局と短期間で面会し、協議を行うこと」としている。ケラーズッター氏らが訪米中にトランプ氏に会うかは、明らかにしなかった。
スイス政府は4日に緊急会議を開き、米国の懸念を踏まえた新たな提案をする用意があると表明した。また、対抗措置については当面除外する方針も示した。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の試算によると、仮に39%の関税率が一律に適用され、医薬品も対象となった場合、中期的にはスイス経済の最大1%がリスクにさらされる可能性がある。
交渉材料
ケラーズッター氏らは、譲歩すれば政治的な代償を伴う一方で、トランプ氏が問題視する対米貿易赤字を実質的に縮小できる保証はないという難しさに直面している。今後の交渉は、金、農業、航空機、医薬品、エネルギーなどの分野に及ぶ可能性がある。
トランプ氏の側近は、対米貿易黒字の大きさこそが高率の関税を課した理由と主張している。スイスの昨年の対米黒字380億ドル(約5兆6100億円)のうち、約3分の2は金塊の輸出によるものだった。スイスの製錬所による付加価値というより、金自体の価格によるところが大きい。
解決策の一つとしては、金だけに50%といった高関税を課すことだ。製錬所には打撃となるが、経済全体への影響は限定的だ。または、金塊取引を中央銀行や他の公的機関に移管することで、対米・対欧の貿易統計から除外する手もある。ただ、こうした案にトランプ氏が納得するかは不明だ。
医薬品は、トランプ氏がこだわっている分野の一つだ。
製薬大手のノバルティスとロシュ・ホールディングスはすでに、今後数年間に米国へ巨額の投資を行う計画を発表した。スイス政府が2社に対し、米国での価格引き下げを働きかける可能性もある。企業自身がトランプ氏の標的から外れるという意味で利害が一致する部分もあるが、政府として強制することはできない。
より現実的なアプローチとしては、スイス企業による対米投資の約束を取りまとめることだ。このパッケージには、米国産のエネルギー、特に液化天然ガス(LNG)の購入も含めることが可能だ。
元スイス外交官のトーマス・ボラー氏は「我々は石油、兵器、LNGを購入できるし、農業分野で譲歩もできる。また、スイスの製薬会社に対して価格引き下げの圧力をかける努力は少なくともすべきだ」と述べた。
ザンクト・ガレン大学で貿易政策を研究するシュテファン・レッゲ氏は「スイスは創造的なアプローチをしなければならない」と語った。同氏は、大統領を魅了する贈り物が功を奏する可能性があるとして、「もしかすると、金のスイス製腕時計を贈るのが最も効果的かもしれない」と述べた。
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原題:Swiss President, Economy Minister to Fly to US for Talks (1) (抜粋)