「GPT-5が未解決の数学問題を解決した」とOpenAIの研究者が投稿も実際は既に解決済みの問題だったことが明らかになりGoogle DeepMindのデミス・ハサビスCEOらライバル開発者から嘲笑される

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OpenAIが、「20世紀に最も多くの論文を書いた数学者」として知られるポール・エルデシュ氏が提起した未解決の数学問題「エルデシュの問題」を複数解決したと投稿。しかし、実際には既に解決済みの問題の解法を文献から探してきただけであることが明らかになり、競合のAI開発者たちから小ばかにされる事態が起きています。

Leading OpenAI researcher announced a GPT-5 math breakthrough that never happened

https://the-decoder.com/leading-openai-researcher-announced-a-gpt-5-math-breakthrough-that-never-happened/

OpenAI’s ‘embarrassing’ math | TechCrunch https://techcrunch.com/2025/10/19/openais-embarrassing-math/

2025年10月18日、OpenAIの最高製品責任者(CPO)であるケビン・ワイル氏が、「GPT-5がこれまで未解決だったエルデシュの問題を10個も解決しました!さらに、他の11個の問題でも進展をもたらしました」と投稿。ワイル氏はGPT-5が解決した問題は数十年にわたって未解決だったとアピールしています。なお、記事作成時点でワイル氏の当該投稿は削除されています。

ワイル氏に同調するように、OpenAIの他の研究者もGPT-5が未解決の数学の問題を解決することができたとアピールしています。OpenAIのコンピューターサイエンティストであるセバスチャン・ブーベック氏は、「GPT-5 Proは文献検索において超人的です。公式データベースに未解決として記載されているエルデシュの問題を、20年前にすでに解決されていたことに気づくことで解決しました」と投稿。

このブーベック氏の投稿を受けて、ハーバード大学統計学部のマーク・セルケ准教授が、「GPT-5の数千のクエリを利用して、未解決としてリストされていた10個のエルデシュの問題の解決策を見つけました。解決したのは223、339、494、515、621、822、883(パート2/2)、903、1043、1079の10個です。さらに、他の11個の問題(32、167、188、750、788、811、827、829、1017、1011、1041)で、GPT-5は公式ウェブサイトに追加した重要な部分的な進展を見つけました。827については、エルデシュの元の論文に実際には誤りがあったため、マルティネスとロルダン・ペンサドの研究がこれを説明し、議論を修正しています。科学研究の未来は楽しくなるでしょう」と補足説明しました。

Update: Mehtaab and I pushed further on this. Using thousands of GPT5 queries, we found solutions to 10 Erdős problems that were listed as open: 223, 339, 494, 515, 621, 822, 883 (part 2/2), 903, 1043, 1079.

Additionally for 11 other problems, GPT5 found significant partial… https://t.co/ocqQPhVZl2

— Mark Sellke (@MarkSellke) October 17, 2025

これに対してOpenAIのボリス・パワー氏は「うわっ、これまで解決できなかった問題で、ついに大きな進展が起きました!!」と反応しています。

しかし、公式データベースとされたErdős Problemsを運営する数学者のトーマス・ブルーム氏が即座にOpenAIの研究者による投稿に反論。サイト上で未解決とされている問題は、自身が個人的に解決方法を知らない問題であり、実際に未解決というわけではないと説明しました。

Hi, as the owner/maintainer of https://t.co/69gOJM7Ci7, this is a dramatic misrepresentation. GPT-5 found references, which solved these problems, that I personally was unaware of.

The 'open' status only means I personally am unaware of a paper which solves it.

— Thomas Bloom (@thomasfbloom) October 17, 2025

これに対して、OpenAIの競合であるGoogle DeepMindのデミス・ハサビスCEOは「これは恥ずかしいね」と反応しています。

this is embarrassing

— Demis Hassabis (@demishassabis) October 18, 2025

ブルーム氏の投稿の後、ブーベック氏は「元の投稿を削除しました。明らかに誰かを誤解させるつもりはありませんでした。言葉遣いが明確だと思っていましたが、すみませんでした。文献には解決策しか見つかりませんでした。それだけです。そして、文献を調べるのがどれほど難しいかを知っているので、これは非常に加速していると感じます」と投稿し、GPT-5が難しい数学の問題に対する証明を独自に生成したかのように投稿したことを謝罪し、当該ポストを削除しました。

I deleted the post, I didn't mean to mislead anyone obviously, I thought the phrasing was clear, sorry about that. Only solutions in the literature were found that's it, and I find this very accelerating because I know how hard it is to search the literature.

— Sebastien Bubeck (@SebastienBubeck) October 18, 2025

ブーベック氏による謝罪ポストに対して、MetaのチーフAIサイエンティストを務めるヤン・ルカン氏は「自らのGPTards(ChatGPTなどのAIツールを過剰に信奉する人を嘲るネットスラング)に巻き込まれた」と投稿しています。

Hoisted by their own GPTards

— Yann LeCun (@ylecun) October 18, 2025

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