「NHKの数学講座」で奇抜な数学者が披露した「伝説の講義」…視聴率が取れない教育番組で「驚異的な視聴率」を叩き出せたワケ

波乱万丈、紆余曲折…80歳を目前に破天荒な天才数学者が振り返る「人生談」!

「内定取り消し」でお先真っ暗な社会人1年目から「数学」を広めに世界5大陸を駆け回るまで「山」と「谷」に満ちた半生を送ってきた筆者が実践する、身体は老けても全身全霊で余生に向き合う「こころのありかた」とは。

“数学の伝道師”秋山 仁が語る七転八倒の体験的アドバイスが詰まった一冊『数学者に「終活」という解はない』より一部抜粋・再編集してお届けする。

『数学者に「終活」という解はない』連載第19回

『アインシュタインや吉田松陰の言葉にも表れる「論理的発想」…78歳現役数学者が人生の指針にしてきた「数学的思考法」』より続く。

軽い気持ちで引き受けたNHKの数学講座

If you really look closely, most overnight successes took a long time.

  Steve Jobs

(本気でじっくり見てみると、あっという間にできてしまったように見えることのほとんどが、実はすごく時間を掛けて成し遂げられたことだとわかるだろう)

 スティーブ・ジョブズ(米の起業家、アップルの共同創業者)

Photo by gettyimages

91年の2月の終わり頃(当時44歳)、「(その年の)夏にNHK教育テレビで放送する、高校生(受験生)向けの数学講座に出演してくれないか」と、出演依頼が舞い込んできた。

「従来、NHK教育テレビでは、教科書に準拠した数学講座を放送してきたのだが、今年は少し冒険して、今までとはまったく異なる数学講座を視聴者に提供したい」とのことだった。

駿台でやってきた授業を形にして残そうと、『発見的教授法による数学シリーズ』(全7巻)を出版したが、その講義を映像という形でも残しておくことになるのだから、有り難いと思い、この話を引き受けた。

しかし、そんな軽い気持ちで引き受けたのは、未経験ゆえの暴挙だったことを後にして思い知った。

「30分の番組を30回。5月末から7月の初めまでの期間、週2日、一日2本録りのペースで進めましょう」と言われても、「まあ、それぐらいならどうにかなるだろう」と思った。

関連記事: