【解説】 プーチン氏は今どんな心境なのか 直近のウクライナ和平協議からわかること

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画像説明, ロシアのプーチン大統領

ウクライナをめぐる直近の外交活動からは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の気分と意図について、どんなことがわかるのだろうか?

まず、彼に和平案に署名する用意はないということだ。少なくとも、現時点ではない。

そして、いま協議されている案(または複数の案)での署名は、確実にないということだ。

妥協点が見いだせないことは驚きではない。プーチン氏はここ数日、妥協は許さないと発言していたからだ。

彼はさまざまな声明で、ウクライナの指導部を「こそ泥の暫定政権」と非難してきた。欧州指導者らについても、和平に向けた努力を妨害しようとしていると責めた。そして、戦場で主導権を握っているのはロシアだと主張した。

ロシアのテレビは最近、軍服姿のプーチン氏が前線の地図を見て、軍の制圧範囲の拡大を強調する場面を何度か放映した。ウクライナや他国の専門家らは、そうした制圧の多くは事実ではないとしている。

ロシアがウクライナへの全面侵攻を始めてから4年近くがたつ。ロシアは戦場で多大な損害を被り、経済も打撃を受けている。だがプーチン氏は、この戦争で自分は勝利しており、今はそれを止める時ではないと確信しているようにみえる。

少なくとも、西側諸国にそう思わせたいと考えている。自分の目標達成を阻止することはできないと。

以前も言ったことがあるが、私はプーチン氏を見ていると、ブレーキもハンドルもバックのギアもない車のようだと感じる。高速道路を全速力で突っ走っている車だ。

全面侵攻開始から4年近くになるというのに、この「プーチン・モービル」には別の道に入る気配も、引き返す気配も、停止する気配もない。

プーチン氏は間違いなく、敵対する人々に、何も、誰も、彼に進路を変えさせることなどできないと思わせようとしている。欧州の指導者らにも、トランプ米政権にも、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領にも不可能だと。

そして戦争をするには、国家には絶え間なく補給される資金が必要だ。

ロシア政府は今のところ、国際的な制裁を科されているにもかかわらず、「特別軍事作戦」の資金を調達できている。しかし、経済的なプレッシャーは強まっている。石油とガスからの収入は減り、財政赤字は膨らんでいる。

プーチン氏も問題があると認めており、経済に「不均衡」があると述べている。

「いくつかの部門では、今年の生産は増加しなかっただけでなく、現実には減少した」。プーチン氏は今週、そう話した。「そうした傾向に私たちは満足しているのか? していない」とも。

大きな未知数がある。それは、経済をめぐる懸念が、戦場に関するクレムリンの計算に影響を与えるとすれば、それは一体どの時点からなのか――だ。

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