神戸市:中国人2人死亡の踏切事故、遮断機内側でなぜ待機…狭い待機スペース・外国人向け案内不十分 : 読売新聞

 なぜ遮断機の内側にいたのだろうか。神戸市垂水区の山陽電鉄の踏切で1月、観光で訪れていた中国籍の女性2人が電車にはねられて亡くなった。国道2号の横断歩道の直前で、信号を待つスペースは狭い。明石海峡大橋が見渡せる景色を目当てに来る人らも使っており、市や山陽電鉄などは対策を検討している。(長野祐気)

女性2人がはねられて、亡くなった踏切(神戸市垂水区で)

 「母国では陸橋やトンネルが多く、踏切はあまりない。2人はどこにいたらよいか、わからなかったのではないか」。今月上旬、踏切を利用した香港出身の留学生(24)は、こう話した。

 留学生がこの地を訪れたのは、現場から60メートルほどのところに建築家・安藤忠雄さんが手がけた建物があるからだ。ファンが訪れているほか、淡路島までの眺望を楽しむ観光客もやって来る。

事故が起きた現場のイメージ図

 事故は1月9日午後3時50分頃、山陽電鉄の西舞子―大蔵谷駅間の「山田川西踏切」で起きた。約20メートルの踏切で、線路沿いに国道2号が走る。踏切南側に押しボタン式の信号機がある横断歩道があり、信号を待つためのスペースには傾斜があって遮断棒との間は約1・3メートルしかない。

 兵庫県警垂水署によると、亡くなったのは楊景文さん(24)と、張新恰さん(23)。近くの防犯カメラには、2人が北から踏切に入り、南端に設置された車の進入を防ぐポールの手前で、立ち止まる姿が映っていた。その後、遮断棒が下りて、そのまま事故に遭った。

 2人は、押しボタンを押さずに信号を待っていたとみられ、同署幹部は「押しボタンの使い方がわからなかった可能性がある。外国人に理解してもらえるような工夫が必要だ」と話す。

 事故を受けて、市や山陽電鉄、県警などは現地を視察し、外国語の案内表示が不十分との課題が浮かび上がった。遮断棒には日本語で「押して出て」との幕は付けられている。子ども向けに危険を知らせる看板も周辺にある。だが、外国人向けのものはない。非常ボタンに「SOS Emergency Button」と記されているのみだ。

 この踏切を初めて渡ったという神戸市中央区の男性(47)は「日本人でも戸惑うような形状をしている」と驚き、近くで暮らすネパール国籍の男性(36)は「踏切に不慣れな海外の友人が通る時は、危ないので付き添おうと思う」と話す。

警報音すぐ外へ 啓発チラシ配布

 垂水署や市、山陽電鉄などの職員らは9日、山田川西踏切の周辺で「警報機が鳴り始めたら、すぐに外に出る」などと書かれた啓発チラシを配り、学生らに注意を呼びかけた。

 市によると、踏切内の路面上に、中で立ち止まらないように促す、英語や中国語など多言語で表現した注意文を記す予定という。

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