コメ不足に学食苦闘、仕入れ値倍以上・必要量確保できず…麦ご飯提供など工夫も「学食高い」

 コメの価格高騰で、大学生協が運営する学食の値上げが相次いでいる。コメ不足で仕入れ値が例年の倍以上になったうえ、年間の必要量も確保できていない状態だ。物価高で支出が増え、学業とアルバイトにいそしむ学生らに、安くて栄養バランスのとれた食事を提供する場としての役割を果たすため、値上げとのせめぎ合いが続く。(佐々木伶)

学食メニューの値上げが相次ぐなか、値上げ幅を抑えた阪大名物の「天津麻婆」(大阪府豊中市で)

 大阪大生協の名物メニュー「天津麻婆」(税込み616円)。天津飯とマーボー豆腐を合体させたボリュームのある丼で、多い日は4人に1人が頼むという。

 阪大生協の学食は3月、コメを使ったメニューを2度値上げし、例えば中サイズのライスは126円から187円と1・5倍になった。人気メニューの天津麻婆は、学生の負担感を抑えるため、豆腐やご飯、あんの量を1割ずつ減らし、583円からの2度の値上げ幅を計33円に抑えた。

 それでも600円を超え、学生には割高感があるようだ。文学部2年の男子学生(19)は「昼ご飯はバイト先のフードコートで割引を使い、300円程度で済ませることが多い。学食は高く感じる」と言い、友人に誘われない限り利用しないという。

 阪大生協の木下高志・専務理事は「材料費に加えて人件費も上がっている。値上げは苦渋の決断」と話す。

食費切り詰め

 大学生の懐事情は厳しい。

 全国大学生活協同組合連合会の調査によると、昨年の下宿生の1か月の生活費は13万1710円で、過去10年で最も高かった。住居費が前年比1960円増の5万6090円だった一方、食費はほぼ横ばいの2万6110円(前年比230円増)。「生活費の中で工夫したい費目」(二つ選択)で「外食費を含む食費」は71%とトップで、切り詰めの対象となっている。

 同様に過去10年で最も高くなった収入(13万2140円)の増加分は、仕送りやアルバイトが占めた。「物価高で一人暮らしだと生活が苦しい」「仕送りに頼りたくないが、アルバイトを増やすと学校の授業についていけない」などの記述があった。

値段下がらず

 昨夏からコメの価格が高騰し、政府が3月に備蓄米を放出した後も、値段が下がる気配はない。総務省の小売物価統計調査によると、東京都区部のコシヒカリ5キロの値段は今年4月で4770円と、昨年4月の2384円から倍になった。

国産米の小売価格の推移

 阪大を含む183大学生協は、全国組織「大学生協事業連合」を通じて材料を調達する。同連合は例年、11、12月頃に、翌年3月~翌々年2月分のコメを業者と一括契約するが、今年分は契約が2月にずれ込み、7月末までの量しか確保できなかった。仕入れ値は前年比で倍以上に跳ね上がり、ほとんどの大学生協が2度の値上げに踏み切った。

 備蓄米を買い付け、10月末までの量は確保したが、その後のめどは立っていない。谷口一宏・同連合フードサービス事業部長は「秋以降、今年度産のコメを買い付けられるよう準備したい」と話す。同連合によると、北海道大や岐阜大などの学食で5月から、コメの在庫を少しでも持たせるため、麦ご飯の提供を始めた。

戻らぬ客足

 学食はそもそも、新型コロナウイルス禍で減った客足が戻りきっていない。

 京都大生協はウェブサイトで、「年間事業損失額が1億円程度」「コロナ禍以降経営がさらに厳しい」と明かした。昨秋から一部の学食で茶の提供をやめている。今村奈星・常務理事は「コロナ禍で生活習慣が変わり、夜の利用が減っている。利用者は小鉢の数を減らすなどして出費を抑えているようだ」と分析する。

 同連合に加盟していない関西大生協は、値上げせずにとどまっている。森本秀友・専務理事は「コロナ禍以降、利用客は2割減った。決して余裕があるわけではないが、値上げでさらに客離れを招くより、値段据え置きをアピールして利用を増やし、経営を改善したい」と語った。

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