【英国人の視点】どちらがJ1昇格? ファジアーノ岡山対ベガルタ仙台の命運を握るのは…「岩渕弘人と中島元彦が…」

 J1昇格プレーオフ決勝が7日に行われる。J1に昇格するのは今季から指揮を執る森山佳郎監督の下で3年ぶりのJ1復帰を目指すベガルタ仙台か、クラブ史上初のJ1昇格を狙うファジアーノ岡山か。2009年に来日し、日本サッカーを取材してきた英国人ジャーナリストが、運命の90分を展望する。(文:ショーン・キャロル)

著者プロフィール:ショーン・キャロル

1985年イングランド生まれ。2009年に来日。『ニッポンとサッカー 英国人記者の取材録』『英国人から見た日本サッカー “摩訶不思議”ニッポンの蹴球文化』の筆者。「Jリーグ Monthly」のレギュラー出演。高校サッカー、Jリーグ、日本代表など幅広く取材している。過去にはスカパーやNHK、J SportsなどのJリーグ番組出演も。

ファジアーノ岡山とベガルタ仙台、2つの共通点は…

【写真:Getty Images】

 ファジアーノ岡山とベガルタ仙台は今週末のJ1昇格プレーオフ決勝で対戦する。2025年のトップリーグ参戦を懸けた一発勝負の試合に臨む両者にはいくつかの共通点がある。

 まず、両チームは先週の日曜日、アウェイでの準決勝を3点差で圧勝している。岡山はモンテディオ山形を3-0で下してホームでの決勝開催権を獲得し、仙台はV・ファーレン長崎を4-1で粉砕して勝ち上がった。これらの勝利の基盤となったのは、両チームが堅実な守備を軸としたプレースタイルを持ち、相手にボールを持たせつつ、素早いカウンターでチャンスを狙う戦術だ。

 もう1つの両チームの共通点は、今季ゴール前での生産性が特別高かったわけではないことだった。J2リーグの得点ランキングでは仙台が50得点で9位、岡山が48得点で10位に位置しており、ともにとびぬけた決定力を持つ本職のセンターフォワードがいなかった。

 例えば、岡山のストライカーでトップスコアラーは5得点のルカオで、グレイソンは5月にシーズン終了の怪我を負うまで3得点、夏に京都サンガF.C.から加入した一美和成は11試合でわずか1得点に終わった。

 これは仙台の攻撃陣にもほぼ当てはまる。中山仁斗が6得点、ブラジル人のエロンが3得点、そしてレノファ山口から途中加入した梅木翼は11試合に出場したものの得点を記録していない。

 それでも、プレーオフに進出するためには得点を生み出す選手が必要であり、この点でも両チームには共通点がある。岩渕弘人と中島元彦がそれだ。岩渕は準決勝で幸運な形で得点を挙げ、中島は2得点を記録した。


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 いずれも今季それぞれのクラブで13ゴールを挙げ、チームの得点王となっている。この2人はペナルティエリア周辺で絶妙なタイミングで現れ、動きの良さと冷静なフィニッシュでゴールを奪う術を9カ月間で磨き上げた。今週末、2人がこのフォームを再現できるかどうかが勝負を左右する鍵となるだろう。特に、岩渕が山形戦の52分に負傷交代した影響がどれほどかが気がかりだ。

 両チームには多くの共通点がある一方、それぞれのクラブにとって昇格が持つ意味は大きく異なる。ベガルタ仙台は過去にJ1でプレーした経験があり、14年間のトップリーグ参戦でいくつもの印象深い記録を残している。

 多くの人々が2011年の東日本大震災後、チームが見せた努力を記憶しているだろう。手倉森誠監督の下で翌シーズンには森保一監督率いるサンフレッチェ広島と優勝争いを繰り広げ、最終的には2位に甘んじたものの、日本中のファンを勇気づけた。

 しかし、その後は中位を彷徨う存在となり、2021年に降格。それ以来、J2では2年続けてプレーオフ進出を逃したが、今こそ再びJ1に戻る時だと感じているはずだ。

 一方、ファジアーノ岡山はまだJ1でのプレー経験がない。


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 2009シーズンのJリーグ加盟以来、J2で16シーズンを過ごしてきたが、トップリーグに進出するための基盤は整いつつある。熱心で大規模なファン層、好立地のスタジアム、優れた育成システムを持つクラブであり、過去にもJ1昇格に近づいた経験がある。

 2016年にはセレッソ大阪にプレーオフ決勝で敗れ、2022年には3位でシーズンを終えたものの、プレーオフ準決勝でモンテディオに0-3で敗北。そして、今年、そのリベンジを先週果たした彼らに、初のJ1参戦を掴む最大のチャンスが訪れている。

 ホームアドバンテージがあることに加え、プレーオフの規定により引き分けでも勝ち上がれるという利点もある。さらに今季のレギュラーシーズンでは仙台に2戦2勝しており、5月にはアウェイで4-1、7月にはホームで2-0の勝利を収めている。しかし、準決勝で高順位の相手を打ち破った両チームが示したように、過去の成績はプレーオフには何の影響もない。

 試合前に監督や選手が何を言うかは別として、これは他のどの試合とも違う90分間だ。シーズン全体の努力が1試合にかかるという独特のプレッシャーに対応できるかどうかが、この舞台で勝者と敗者を決める。来年のJ1に復帰したクラブがあるのか、新顔が加わるのか、結局のところ当日にどちらが力を発揮するか次第だ。

(文:ショーン・キャロル)

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