イラン攻撃ミスショット トランプ氏「球聖」に学べ 書く書く鹿じか

専用機内で記者団に話すトランプ米大統領=3月29日(ロイター)

俳句の季語にもなっている「球春」は、プロ野球のキャンプインや選抜高校野球を指して用いられるが、ゴルフも球春到来である。9日から「ゴルフの祭典」マスターズが、米ジョージア州アトランタのオーガスタ・ナショナルゴルフクラ

ブで開幕する。

生涯アマチュアで通し、史上初の年間グランドスラムを達成したボビー・ジョーンズが、出身地に理想とするゴルフコースを造り、そこに世界中から名手(マスター)を招待して開催するようになったのがマスターズである。

彼が「球聖」と呼ばれるのは、不世出のゴルファーであるだけでなく、人格的にもゴルフの精神を体現する存在だったからだ。ゴルフはたった2つのルールで始まった。「あるがままにプレーする」「自分に有利に振る舞ってはならない

」。有名なエピソードがある。

第1打をラフに入れ、そのホールをパーで終えたかに見えたが、「アドレスした後にボールが動いた」と自ら申告した。この1打罰によって優勝を逃した。フェアプレーを称賛する声を制して、こう言った。「泥棒をしなかったからといって、褒められることだろうか」

ゴルフは自分で判定する競技である。誰も見ていないからと、ボールを動かしたり、スコアをごまかす誘惑にかられるが、「卑しきシングルより、正直なダッファーたれ」。ボビー・ジョーンズの名言は人生訓でもある。

歴代の米国大統領にはゴルフ好きが多い。特別功労部門で世界ゴルフ殿堂入りをしたアイゼンハワー氏は、心臓に持病があったため、緊張で負担のかかるパッティングをせず、グリーンに乗ると2パットで終えたことにする〝アイク・

ルール〟で楽しんだという。

こちらも殿堂入りのブッシュ氏(父)はプレーの速さに定評があり、1時間半ほどで18ホールを回って、「やるべきことがたくさんあるから、さあ仕事だ」。マナーも良かった。

クリントン氏のマナーは褒められない。同伴プレーヤーの了解を得て打ち直すのを「マリガン」と呼ぶが、ティーショットを何球も打って、一番いいところに飛んだボールを選ぶ。名前のビルと合わせて「ビリガン」と陰口を叩かれた。

トランプ氏は自分のゴルフ場を持つほどで、かつて日米首脳会談のため訪米した安倍晋三元首相をフロリダの別荘に招いて、一緒にプレーした。

米国とイスラエルがイラン攻撃を開始して1カ月が過ぎた。この間もゴルフをする姿が目撃されている。時と場合を考えると、普通なら控えるだろうが、トランプ流はおかまいなしだ。

先制攻撃でイランを屈服させ、戦闘は短期間で終結するともくろんだのに、そうはならなかった。ドロ沼にはまったミスショットを「マリガン」で打ち直したいと考えているのではないだろうか。(元特別記者 鹿間孝一)

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