専門家たちに聞いてみた、本当にぐっすり眠るための方法とは?

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健康に生きるためにはまずはいい睡眠!

睡眠。生きていくためには必要なものですが、十分に睡眠を取れていない人が多いものです。Centers for Disease Control and Preventionの2022年の調査によると、アメリカ人の成人約37%が十分な睡眠を取れていないことが判明しています。この傾向は過去10年でほとんど変わっていないそう。さらに、Gallupが2024年に実施した調査では、睡眠時間に満足しているアメリカ人はわずか42%にとどまっています。

慢性的な不眠に悩む人たちは、安らかな眠りにつくためにさまざまな工夫や方法を試しています。ただし、想像以上のリスクを伴うような方法もあります。また、ビデオゲームのやりすぎなど、一見関係なさそうな習慣が知らないうちに睡眠の質を下げている場合もあります。

今回のGiz Asksでは、睡眠や体内時計、いわゆる概日リズムについて長年研究してきた科学者や医師に話を聞きました。話を聞いた専門家の皆さんは、より良い睡眠をするための実践的な方法や、自分自身でも取り入れている方法を教えてくれました。中にはすでに聞いたことがあるものもあるかもしれませんが、知らなかったことも結構ありました。

以下の内容は、読みやすさのために軽く編集・要約されています。

Philip Gehrman

ペンシルベニア大学ペン・スリープセンター臨床心理学者

私がいつも伝えているのは、ルーティンと規則性の大切さです。できるだけ決まったスケジュールで生活することが重要です。特に、就寝時間よりも起床時間を一定に保つことのほうが重要です。とにかく一貫性を保つことが大切です。週末も同じように、と言う点は実践が難しいところですが、体内時計を整えるうえではとても効果的な方法です。

もう一つ大事なのは、寝る前にしっかりとリラックスする時間を取ること。ほとんどの人は寝る前に30分から60分ほど心身を落ち着かせる時間が必要ですが、実際には寝る直前まで仕事をしたり、刺激の強い活動をしてしまいがちです。理想を言えば、寝る前の少なくとも30分は、電子機器を使わないほうがよいでしょう。ただ、これも実践が難しいことの一つです。

また、眠れないときは一度ベッドから離れることも勧めています。横になりながらも眠りにつけないこと考え始めると、そのことばかりがどんどん気になってしまい、無理に眠ろうとして逆に目が冴えてしまうことがよくあります。

そういう状態になったら、一度起きて、できれば別の部屋に移動し、リラックスできることをして、再び眠くなるのを待ちます。つまり、本当に眠いと感じるときだけベッドに入ることが大切なのです。

これらの方法は、すべて私自身も日常的に実践していることです。実際に比較的よく眠れています。

Brooke Aggarwal

コロンビア大学アーヴィング・メディカルセンター准教授

この10年ほど睡眠について研究してきましたが、最近特に感じているのは、概日リズムの健康こそが良い睡眠の鍵かもしれないということです。従来、睡眠研究と体内時計の研究は別々に進められてきました。睡眠研究は睡眠時間や質に注目し、体内時計研究は生体リズムに焦点を当てていましたが、実際には密接した関係なのです。日中の過ごし方が、夜の眠りに大きく影響します。

自然光は、概日リズムにとって大きな同調因子です。しかしほとんどの人は、人工照明の下で室内にこもって過ごしています。朝、日光を浴びる、できれば軽い運動と組み合わせることで体内時計を整うので、夜、自然に眠くなってきます。私はニューヨークで暮らしていますが、朝セントラルパークを歩くことを習慣にしています。この「日光・運動・自然」の組み合わせで、はっきりとした効果を感じます。

また、行動のタイミングも重要です。できるだけ毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きることが、体にリズムを覚えさせます。さらに、寝る3時間前には食事を終えるようにしています。遅い時間の食事は体内リズムを乱し、睡眠を妨げることがあるからです。

夜の光も重要な要素です。夜は照明を落とし、寝る前は電子機器の使用を控えるようにしています。こうした小さな工夫が、「眠る時間だ」と体に伝えるサインになります。

もちろん睡眠時間も大切で、ほとんどの成人は7〜9時間の睡眠が必要とされています。ただし、時間だけでなく、タイミングや一貫性、日中の行動も同じくらい重要となってきます。私は睡眠を単なる「テクニック」ではなく、24時間のリズム全体の一部として捉えています。このリズムを整えることで、自然に眠りやすくなるのです。

Yo-El Ju

ワシントン大学医学部神経学・睡眠医学教授

おそらくもっともよく使われている睡眠補助サプリはメラトニンでしょう。メラトニンは、夜になると脳から分泌されるタイミングを司るホルモンです。アメリカでは市販されているサプリです。メラトニンについては多くの研究があり、夜型で寝つきが悪い人には一定の効果があります。寝付きが悪い人が就寝したい時間の数時間前に摂取すると、入眠までの時間が約30分ほど短くなります

ただし、これはあくまでタイミングを整えるためのものであって、強制的に眠らせる薬ではありません。高用量を摂取したり、遅い時間に飲んだりすると、逆効果になる場合もありますし、人によっては副反応が出ることもあります。そのため、夜型の人が就寝時間の数時間前に使うのに適しています。

他にもさまざまなサプリや薬がありますが、次によく使われているのは、市販の抗ヒスタミン薬(たとえばBenadrylなど)です。しかし私はこういった薬の使用はお勧めしません。体内に長く残り、翌日に思考の鈍化や強い眠気を引き起こすことがあるからです。毎日使っていると、その影響に気づかないこともありますが、特に年齢を重ねると認知機能に悪影響を与える可能性があります。そのため、睡眠目的で常用することは避けたほうがよいでしょう。

もう一つ触れておきたいのが、マグネシウムです。睡眠のために摂取している人も多いですが、不眠症に対して明確に推奨できるだけの十分な臨床研究はまだありません。ただし、むずむず脚症候群と呼ばれる、脚を動かしたくなる症状を伴う睡眠障害には効果がある場合があります。これは比較的一般的な症状で、特に女性に多く見られます。

なお、マグネシウムには下痢という副作用がありますので注意が必要です。ただ、問題なく摂取できていて、本人が効果を感じているのであれば、続けてもよいでしょう。健康体であれば、摂りすぎてしまった場合でも体が自然に排出するため、大きな問題になることは少ないと考えられています。

Tina Sundelin

ストックホルム大学心理学部の助教授、社会的喪失の影響を研究

実際にぐっすり眠るためのもっとも良い方法とは何でしょうか。私は、日中の光(特に昼間の自然光)、運動(身体と頭の両方)、そして規則正しい生活が鍵だと考えています。同じくらい重要なのが、安心してリラックスできる睡眠環境です。騒音や光、スマートフォンの通知、家族やペットなどに邪魔されない場所で眠ることが大切です。寝る前に少しリラックスする時間を持つことも効果的です。つまり、寝る直前にストレスのあることや刺激の強いことを避け、本を読むなど落ち着く活動を取り入れるとよいでしょう。

もう一つの大事なポイントは、睡眠について気にしすぎないことです。良い睡眠を取らなければと強く思いすぎるほど、不安が高まり、かえって眠れなくなることがあります。多くの場合、多少の睡眠不足は問題なく乗り越えられ、あとで自然に取り戻すことができます。もちろん睡眠を大切にすることは重要ですが、たまに夜更かししたり、なかなか寝つけなかったりしても、大きな問題になることはほとんどありません。むしろ、少し睡眠不足のときのほうがよく眠れることもあります(ただし、これは長期的な対策として勧めているわけではありません)。

Emily Manoogian

ソーク研究所時間生物学者、主任研究員

良い睡眠は寝室の環境にも左右されますが、それ以上に起きている間に何をしているかによって決まります。私たちが夜しっかり眠れるのは概日リズムのおかげであり、このリズムに影響を与えるすべての要素が、結果として睡眠にも影響します。光、食事、運動、ストレスの質・量・タイミングはすべて関係しています。以下に、より良い睡眠のための具体的なポイントを挙げます。

1. 日中の過ごし方を整える

まず、できるだけ日中の早い時間に強い光、できれば自然光を浴びましょう。朝の光は「起きる時間だ!」と体に伝え、気分の改善にもつながります。次に、体をしっかり動かすことです。週に最低150分程度の中程度の運動が推奨されています。散歩やストレッチでも、体を動かすことが良い睡眠につながります。さらに、食事にも気を配り、食べ過ぎないことも大切です。良質なたんぱく質、全粒穀物、野菜や果物を中心とした食事は腸内環境や消化を整え、結果として睡眠にも良い影響を与えます。

2. 刺激物はタイミングに注意する

コーヒーなどのカフェインや薬などは、寝る直前に摂取しないようにしましょう。思っているよりも早く影響が出ることがあります。例えばカフェインの半減期は5〜6時間です。つまり、午後4時にコーヒー(約100mgのカフェイン)を飲むと、夜10時の時点でも半分ほど(約50mg)体内に残っています。そのため、眠りやすくするには、就寝の10〜12時間前にはカフェインの摂取をやめるのが望ましいです。薬の中にも刺激作用のあるもの(例:抗うつ薬や鼻づまり薬など)があるため、服用タイミングについては薬剤師に相談すると安心です。

3. アルコールを控える、または減らす

アルコールで眠気が出ることもありますが、実際には睡眠の質を下げることが多いです。飲まない、量を減らす、あるいはもう少し早い時間に飲むことで、睡眠の質は改善しやすくなります。

4. 体に「眠る時間」を知らせる

光、食事、運動はどれも覚醒を促す刺激になります。運動自体はとても良い習慣ですが、寝る直前に強度の高い運動をすると体温が上がり、睡眠の質が下がることがあります。就寝の2〜4時間前から、次のことを意識してみてください。照明を暗くするか消す。就寝の3〜4時間前からは水以外の飲食を控える。そして就寝2〜3時間前には激しい運動を避ける。そうすることで体が自然に落ち着き、眠りに入りやすくなります。

5. 寝室の環境を整える

眠るときは、部屋を暗く、涼しく(およそ20〜22℃程度)、静かに保つことが理想です。遮光カーテンやアイマスクも快眠の手助けになります。

6. 一貫性を大切にする

概日リズムは予測的に働くため、毎日の光、食事、運動、睡眠のタイミングを一定に保つことが重要です。この一貫性こそが、良い睡眠につながります。

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