「負けたくない」…21歳の湧川颯斗、日本代表デビュー戦は「空回り」も同世代から刺激

7時間前

自身ほろ苦デビューも「この経験を次につなげていかないといけない」[写真]=伊藤大允

 7月5日、有明アリーナで「日本生命カップ2025 (東京大会)」が行われ、男子日本代表(FIBAランキング21位)がオランダ代表(同54位)と対戦。平均年齢24歳という若手主体で臨んだ日本は、ラスト10分間で11-24と後手に回り、最終スコア70-78でタイムアップを迎えた。

 現在の日本は、8月5日に開幕する「FIBAアジアカップ2025」に向けて活動中。ホームでの勝利を逃したものの、トム・ホーバスヘッドコーチは「若い選手に経験をさせたい。こういうゲームができることは本当に大きいと思う」とコメント。この試合では20歳の川島悠翔(シアトル大学)が両チーム最多となる13リバウンドをマークしたほか、ともに21歳のテーブス流河(ボストン・カレッジ)と湧川颯斗三遠ネオフェニックス)が“ホーバスジャパン”デビューを飾った。

 湧川の出場機会は、第1クォーター残り3分42秒に訪れた。背番号21のユニフォームをまとった湧川はその後も第3、第4クォーターにコートに立ち、デビュー戦は約10分間のプレータイムとなった。

「うーん、手応えというのはあまりないです」。試合後の湧川は、理想のプレーができなかったことに悔しさをにじませた。

 194センチで縦へのドライブを得意とする湧川は、ポイントガードとシューティングガードの両方をこなすコンボガードとしてプレー。持ち味を出そうとリングアタックからシュートを試みる場面もあったが、体勢を崩してシュートを決めきることはできなかった。

「緊張はあまりしなかったですけど、『やってやろう』という気持ちが強すぎて空回りしてしまいました。もっと強くいけばいいフィニッシュができたのかなとも思ったので、この経験を次につなげていかないといけないです」

 第4クォーター残り1分55秒、湧川にこの試合最後のアピールチャンスが回ってきた。再びコートに戻ると、終盤には迷わず3ポイントシュートを放った。このシュートは外れたものの、次の攻撃ではドライブでゴール下に切り込み、コーナーで待っていたジェイコブス晶(フォーダム大学)へ冷静にパスをさばいてアシストをマーク。 試合終了残り13秒に訪れたエンドラインからのスローインでは、テーブス流河のパスからゴール下でバスケットカウントを奪った。

 苦しみながらも、湧川は最終クォーターで2得点1アシストを記録した。“一矢報いた”という捉える方もできるかもしれない。だが、表情は晴れないままだった。

「よかったとは思いますけど、全体的に見ればあまり良くなかったと思っています。最後がよくても全体を通していい選手でなければいけないので、そこは課題です」

 今回の日本代表候補メンバーには、同世代の選手が多数選出されている。オランダ戦でともにプレーした湧川、ジェイコブス、川島は、「FIBA U19バスケットボールワールドカップ2023」で男子史上初となるベスト8の成績を収めたメンバーだ。川島に関しては、福岡大学附属大濠高校時代の後輩でもある。

「悠翔は中学生の頃から知っています。高校で一緒にプレーしてきたなかで、A代表でも一緒にできることは本当にすごいことだと思いますし、自分も負けていられないって思っています。晶はパリオリンピックからずっと代表に残っているメンバーの1人ですし、ポジションは違いますけど同い年として負けたくない。晶に関してはライバルのような感じで見ています」

 戦友であり、良きライバル。この関係性はこれからも続くだろう。アジアカップのメンバー入り、そして代表定着へ向け、21歳の若武者にとって一日一日が勝負となる。

「若いメンバーにとって必要な経験になった。ウチの“旅”、始まったような感じです」と、ホーバスHCは次のフェーズの幕開けに期待を膨らませるような言葉を残した。

 湧川颯斗の新たな旅もまた、ここから始まるのだ。

文=小沼克年

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