皇居開門前に100人超の行列 お目当ては知る人ぞ知る「皇居財布」 爆発的人気の魅力とは

岡山県の25歳女性と妹が購入したのは、財布と小銭入れ。淡いトーンが若者に受けている(photo 井上有紀子) この記事の写真をすべて見る

 皇居東御苑の売店で販売されている“知る人ぞ知る財布”が、今年に入って爆発的に売れている。

【写真】皇居開門前に並んだ行列100人超の行列

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 11月の祝日、大手門の開門時間である午前9時前に、ひんやりとした空気のなか、すでに100人を超える行列ができていた。女性が中心で、20代の若者の姿も少なくない。

 宮内庁担当者によると、皇居東御苑の来園者は普段は外国人観光客が多いため、これだけ多くの日本人が、しかも朝から行列をつくるのは珍しい現象だという。

午前4時半起きで「今日こそ買う」

 列の先頭にいたIT企業勤務の女性(25)は言う。

「皇居財布を買いに来ました」

 岡山県在住だが、この週末は東京都内に住む妹の自宅に泊まって、東京観光を満喫中。

「昨日は8時ごろに来たら、がま口財布は買えなかったんです。シルバーだけ残っていて…。ピンクかゴールドが欲しかったので、『今日しかない』と思って6時から並びました」

 午前4時半に起床し、コンタクトは付けずメガネのまま、フリースのジャケットを羽織ったラフな格好で、妹とともに駆けつけたという。

 早起きしてまで買いたかった財布は、「大手仮休憩所」と「本丸休憩所」で販売されている二つ折り。牛本革だが、値段は5千円(税込み)。

 もともと一部で知られていた皇居財布だったが、昨年、Xなどで「知る人ぞ知る、皇居の売店でひっそり売られてる上質な牛革のお財布」という投稿が話題になり、人気に火が付いた。

「色が全部上品なんです。ベージュピンク、シャンパンゴールドみたいな、きれいな色だなって思いました。がま口の金属はピンクゴールドでめっちゃかわいいです。ブランド物を買うより、皇居で買ったほうがコスパがいいなって」

 二つ折りだから、小さなバッグにも入れやすい。普段はキャッシュレス決済が多いけれど、念のために現金やカードを入れる財布がほしいと思っていたので、薄そうなところも使いやすそうだと思ったという。


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皇居東御苑の大手門の前で開門を待つ人たち(photo 井上有紀子)

 財布には金色の“菊の紋章”が入っているが、気にならないのか。

「菊は“思想強めかな”と思ったけど、すごくさりげないのでおしゃれです。真ん中に大きくあったら考えましたけど(笑)」

 開門時間になると、荷物チェックを経て、順に東御苑に入った。並んでいた人たちは、早歩きで門の近くにある大手仮休憩所に向かった。

 列を整理する職員が「走らないようにしましょう。転んだら大変です」と優しく呼びかけ、緊張した空気をやわらげていた。

 先頭の女性はほどなく買えた。

「買えました~! ベージュピンクもシャンパンゴールドも見せてもらったのですが、かわいくて決められなかったので、どちらも買いました。お日柄のよき日に使い始めたいです」

 同じ商品は一人1個の購入制限があるので、妹と一つずつ買った。ゴールドのコインケース(1200円)も買って、3点で合計1万1200円。満足そうに、東京駅近くへ朝ご飯を食べに行った。

担当者「うれしいけれど…」

 この日、午前10時頃には、がま口の二つ折り財布は完売。売店前の行列では、「どうする?」というどよめきが起きたが、長財布や小銭入れなどの革製品を求める人の列は続き、訪れた外国人観光客が「これは何の列?」と驚いていた。

 皇居財布の反響について、売店を運営する菊葉文化協会の担当者はこう話す。

「昨年から“よい日柄の日”に売れる傾向はありましたが、今年に入ってからは問い合わせも急に増え、爆発的に売れています」

 人気商品は平日も午前中に完売しているという。担当者は財布の人気は「うれしい」としつつ、こう続けた。

「ただ、何十メートルも並ばれているので、列は端の方に寄っていただけると助かります。お財布だけ買って帰られる方もいらっしゃいますが、せっかくなので皇居の中もめぐってもらいたいと思います」

皇居に初めて来た

 実際、この25歳女性も、財布をきっかけに初めて皇居を歩いた。

「皇居って、テレビでは見たことがあったけど敷居が高くて。昨日は財布が買えなかったけれど、散策してみたら、フルーツが植えられているところがあったり、紅葉がきれいだったりして、厳かな感じ。これが日本の皇居なんだって誇らしくなりました」

 財布を買いに来た都内の40代女性も「愛子さまがお若いのにラオスを訪問されて、ご立派だと思っていますが、皇居までは来たことがなかったです。ちょっと散歩してみます」と話していた。

 皇居財布は、思わぬ形で人々を皇居の内側に誘う入口になっているようだ。

 ただし、皇居乾通り一般公開中の12月7日までは革製品の販売は休止しているので注意したい。

(AERA編集部・井上有紀子)

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