衆院解散・総選挙へ 脱ポピュリズムの論戦を
衆院が解散された。27日公示、2月8日投開票の日程で総選挙が実施される。
異例ずくめである。事実上の選挙戦はわずか16日間で、戦後最短となる。1年3カ月前の前回選からの議員在職日数も、憲法7条に基づく解散としては最も短い。
1月の解散は1990年以来、36年ぶりだ。通常国会の冒頭解散は60年ぶりである。
直近の衆参両院の選挙で大敗した自民党は政権維持に苦しみ、野党への譲歩を重ねた。高市早苗首相はそうした状況をリセットし、権力基盤を強化しようと「超短期決戦」を仕掛けた。
Advertisement解散表明時の記者会見では「私が首相でいいかを国民に決めてもらう」ためだと説明した。だが、議院内閣制における衆院選は、首相個人の信任を問うものではない。政権として審判を受けるのは、政策の全体像と実績、および各候補者の資質である。
白紙委任はあり得ない
首相は経済対策が最優先だと主張していたはずだ。にもかかわらず、2026年度予算案の国会審議は選挙後へ先送りされ、今年度内の成立が絶望的になっている。
国の根幹に関わる政策を転換すると訴えたが、内容は判然としない。首相は今年の大方針を示す施政方針演説さえ行わなかった。自民と日本維新の会の公約は、連立合意の焼き直しにとどまる。
有権者に十分な判断材料を示さず、内閣支持率が高いうちに事実上の「人気投票」へ持ち込もうとの思惑が露骨だ。
「国論を二分する政策」に挑戦するとも宣言した。幅広い合意を形成する責任を軽視し、まるで分断をあおるかのようだ。
重要課題があるのであれば、まず国会で正面から議論を尽くすべきだった。
勝利した場合、政権運営への白紙委任を得たと主張するつもりなのか。ポピュリズム的な手法であり、あまりに身勝手だ。解散権の乱用と言わざるを得ない。
与党で過半数の議席獲得を目標に据え、「進退をかける」と見えを切った。ただ、過半数を割り込めば退陣に直結するのは当たり前だ。そもそも与党は解散前に衆院で過半数を確保していた。
前回衆院選以降、民意の多様化を背景に新興政党が伸長し、国会の多党化が進んだ。既成政党は退潮傾向が続いてきた。
議案可決に必要な過半数を確保しようと、少数与党と一部野党による「部分連合」が繰り返された。結果として予算のバラマキが目についた。
解散が浮上した当初は、このまま多党化状況が続くのか、高支持率の首相の下で「自民1強」へ回帰するのかが焦点になるとみられた。ところが、野党第1党の立憲民主党と、連立を離脱した公明党が「中道改革連合」を結成し、構図は一変した。
問われる政治の枠組み
右派色を強める自維に対抗し、中道は保守にも革新にも偏らない穏健な政治を掲げ、対立軸の明確化を図る。解散前議席では、立公両党を合わせて比較第1党の自民に迫る規模だ。政治の枠組みがどう変わるかに関心が集まる。
懸念されるのは、目先の人気取りに走る風潮が与野党の間で広がっていることだ。
中道は恒久的な食料品の消費税ゼロを掲げ、与党も2年間に限った措置について「検討を加速する」と公約した。いずれも財源は見通せないままだ。
首相は近年の政権が「行き過ぎた緊縮志向」だったと主張し、さらなる財政出動を明言した。市場は動揺し、長期金利の急騰を招いている。円安が進行すれば物価高を助長しかねない。
国際秩序を混乱させるトランプ米政権との向き合い方も問われる。首相答弁を機に悪化した日中関係は、改善の糸口をつかめていない。国内では威勢の良い強硬論が幅をきかせるが、身の丈を超えた防衛力増強は地域の緊張を高める恐れもある。
急激な人口減少への対応や、持続可能な社会保障制度の再構築も待ったなしだ。社会不安の責任を外国人に転嫁する排外主義に陥ってはならない。
求められるのは、与野党双方が論戦を通じ、次世代を見据えた責任あるビジョンを競うことだ。安易なポピュリズムに走るばかりでは、有権者の将来不安や政治不信を払拭(ふっしょく)できない。大きな岐路となる衆院選である。