イスラエル極右閣僚、「パレスチナ国家構想を葬る」入植計画の推進を発表
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イスラエル閣僚で極右のベザレル・スモトリッチ財務相は14日、イスラエル占領下のパレスチナ・ヨルダン川西岸地区における大規模な入植計画の推進を発表し、「パレスチナ国家構想を葬る」ことになると述べた。3000戸を超える入植者用住宅を建設するもので、論争の的になっている。
エルサレムとマアレ・アドゥミム入植地の間に新たな入植者用住宅を建設する「E1計画」と呼ばれる構想は、国際的な激しい反発を受けて数十年間凍結されていた。この場所で建設が進めば、ヨルダン川西岸とイスラエル占領下の東エルサレムは事実上分断されることになる。
スモトリッチ財務相は、この計画はパレスチナ国家の構想を阻止するだろうと発言。「承認すべきものも、承認すべき相手も存在しないからだ」とした。
入植地の建設は国際法上違法とされており、イスラエルとパレスチナの間で最も対立している問題の一つ。
イスラエルの反入植監視団体「ピース・ナウ」によると、ヨルダン川西岸と東エルサレムでは約160カ所の入植地に合わせて約70万人の入植者が暮らしている。パレスチナ人は、これらの土地に独立国家を樹立したいと考えている。
スモトリッチ氏は「数十年にわたる国際的な圧力と凍結を経て、我々は慣例を打ち破り、マアレ・アドゥミムをエルサレムとつなげる」と述べた。
「(入植地を)建設し、定住し、イスラエルの地における主権を強化する。これこそが最良のシオニズムだ」
このところ、パレスチナ国家の承認を検討する動きが広がり、イスラエルはこれを非難している。先月にはイギリスやカナダが、今月にはオーストラリアがそれぞれ、9月の国連総会でパレスチナ国家を正式に承認する意向を示した。スモトリッチ氏の今回の発表は、こうした動きを受けたもの。
スモトリッチ氏はこの日、入植者団体「イエシャ評議会」のイスラエル・ガンツ議長やマアレ・アドゥミムのガイ・イフラフ市長とともに記者会見を開き、入植計画について発表。この土地は神がユダヤ人に与えたものだと述べた。
パレスチナ国家を承認する意向を示しているイギリスやフランスなどに対し、この計画はどのようなメッセージを送るのかとBBCが尋ねると、スモトリッチ氏はこう答えた。「そんなこと(パレスチナ国家の承認)は実現しない。承認する国家は一つもないだろう」。
イスラエルの動きを受け、米国務省は、「ヨルダン川西岸の安定はイスラエルの安全を確保するものであり、同地域で平和を実現するという米政権の目標とも一致している」とした。
一方で、国連と欧州連合(EU)はイスラエルに対し、入植計画を進めないよう求めた。
EUの報道官は、「当事者間の政治的合意に含まれない、いかなる領土変更も、EUは受け入れない」と述べた。
イギリスのデイヴィッド・ラミー外相は、イスラエルの提案は阻止されなければならないとした。
「イギリスは、将来のパレスチナ国家を二分し、国際法に著しく違反する、イスラエル政府の『E1入植計画』に強く反対する」と、ラミー氏は述べた。
ドイツは入植計画を「強く拒否する」と表明し、イスラエル占領下のヨルダン川西岸地区における「入植地の建設を停止」するようイスラエルに求めたと、AFP通信は報じた。
トルコ外務省もイスラエルの決定を非難。「国際法を無視」し、パレスチナ国家の領土的一体性」を標的にしていると指摘した。
イスラエルの反入植監視団体「ピース・ナウ」は、「ネタニヤフ政権は一瞬たりとも無駄にせずに、ヨルダン川西岸地区の併合を強め、『2国家解決』の可能性を阻止しようとしている」と主張した。
「今日、誰の目にも明らかなのは、この紛争の唯一の解決策、そして(イスラム組織)ハマスを打倒する唯一の方法は、イスラエルの隣にパレスチナ国家を樹立することだ」
「イスラエル政府は(紛争を)終結させようとせず、私たちを継続的な流血の事態へと追い込んでいる」
パレスチナ外務省は、新たな入植計画を「ジェノサイド(集団虐殺)、強制移住、併合という犯罪の延長」と形容した。
イスラエルはこうした非難を長らく否定してきた。しかし、イスラエルの主要人権団体は、パレスチナ・ガザ地区での戦争におけるイスラエルの行動は、パレスチナ人に対するジェノサイドに該当すると主張している。
スモトリッチ氏は6月、イタマル・ベン・グヴィル国家安全保障相とともに、イスラエル占領下のヨルダン川西岸地区の「パレスチナ人コミュニティーに対する暴力行為を繰り返し扇動」しているとして、イギリスから制裁を科された。
「E1入植計画」での3401戸の住宅建設は、この20年凍結されていた。対象地域は、エルサレム南部と北部を分断し、ラマラや東エルサレム、ベツレヘムを結ぶパレスチナ都市圏の形成を阻む、戦略的な場所に位置する。そのため、同地域での開発は、パレスチナ国家の樹立を事実上阻止するものとみなされてきた。
ハマスは2023年10月7日、ガザ境界を越えてイスラエルを攻撃し、約1200人を殺害、251人を人質に取った。イスラエルはこれを受け、ガザで軍事作戦を開始した。
イスラエルはまた、ヨルダン川西岸地区のパレスチナ人に対する圧力も急激に強めている。これは正当な安全保障措置だと、イスラエルは正当化している。