YOSHIKIさん「強い接触」で負傷…ファンに責任は? ライブ会場で右手をつかまれるトラブル
ロックバンド「X JAPAN」のYOSHIKIさんが、コンサート中に観客と接触し負傷しました。
スタッフの公式X(旧Twitter)によると、YOSHIKIさんは8月23日夜の公演で、一部の観客に右手を強くつかまれたり、引っ張られたりして、ケガを負ったといいます。
今後も公演を続ける予定だということですが、スタッフは「残り7公演を無事に乗り越えられるよう、YOSHIKI本人へ接触される機会がある際は優しくお願いいたします」と呼びかけています。
ライブ会場でのアーティストとファンのトラブルをめぐっては、2023年に韓国出身のDJ SODAさんが大阪の音楽フェスティバル「MUSIC CIRCUS’23」で、観客から胸を触られたと訴えた事例がありました。
このケースでは、主催者が不同意わいせつなどで告発状を府警に提出しました。のちにDJ SODAさんと男女の間で和解が報じられています。
今回のYOSHIKIさんのケガの詳細は明らかになっていませんが、もし観客の行為によってアーティストが負傷した場合、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。冨本和男弁護士に聞きました。
●「ケガをさせる意図」がなくても傷害罪の可能性
──ライブ中にファンがアーティストの腕や手を引っ張り、ケガを負わせた場合、どのような法的責任が生じる可能性がありますか?
暴行罪(刑法208条)や傷害罪(刑法204条)にあたる可能性があります。暴行とは、人の身体に対する「有形力」の行使であり、腕や手を引っ張ることも暴行にあたります。
──ファン側に「ケガをさせる意図」がなくても、責任を問われるのでしょうか?
はい。「ケガをさせる意図」がなくても、傷害罪が成立する可能性があります。
傷害罪が成立するためには、故意が必要ですが、ここでいう故意は「結果が生じることについての認識・認容があること」を意味します。
傷害の故意がある場合(ケガをさせる意図がある場合)のほか、暴行の故意しかなくても、その結果としてケガを負わせた場合には傷害罪が成立します。
したがって、暴行の意思で相手に接触し、結果としてケガを負わせたのであれば、傷害罪の責任を問われることになります。法定刑は「15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」です。
なお、不注意でケガをさせた場合は、過失傷害(30万円以下の罰金または科料)が成立します。
●運営側に法的責任が生じることも
──運営側にこのような事態を防止する責任はないのでしょうか?
あると考えられます。主催者である運営側は、出演者との契約に基づき、信義則上、出演料を支払う義務に加えて、出演者の生命・身体・財産上の利益を害しないよう配慮する義務(安全配慮義務)を負っていると考えられます。
そのため、観客が出演者に接触できる状況を放置していたような場合、運営側も責任を負う可能性があります。
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