可視化される戦争の影響 曲がり角のロシア経済、専門家の指摘
ウクライナに侵攻するロシアの名目国内総生産(GDP)は現在も世界8位の水準にとどまり、2023年からの2年間は軍需生産がけん引する形で4%台の高い経済成長率を達成してきた。だが、25年の成長率は1%に鈍化。露政府は今年5月、26年の成長率見通しを当初の1・3%から0・4%に下方修正した。
ロシア経済を分析するフィンランド中央銀行の研究機関「BOFIT」のイイカ・コルホネン調査部長は、侵攻開始から約4年半が経過し、戦争の影響がロシア国民に一層深刻な形で実感され始めたと指摘する。【聞き手・宮川裕章】
――ロシア経済の現状をどうみますか。
◆露政府の公式統計をみても経済はこの1年半、成長が減速している。軍需産業の生産量は増加しているが、他の産業で頭打ちか減少傾向にある。
――原因は。
◆現在のロシア経済には生産力を増やすためのリソースがない。戦場では死傷者が増加している。完全雇用に近い状況でありながら、月間約3万人の兵士を動員しているため、労働力に余裕がない。
また、昨年末から今年初めにかけて企業の投資が減少している。高金利(現在の政策金利は14%)や、投資を回収できなくなるリスクなどが理由だ。
――露政府は5月、26年の経済成長率予測を1・3%から0・4%に引き下げました。
◆露政府は今年前半に支出を大きく増加させた。露財務省は軍需関連の前倒しの調達があったと説明している。この真偽は不明だが、戦争のコストが重荷になっているのは間違いない。一方で、政府支出を増加させても、労働力不足などで国内産業の生産力は限界に近づいており、生産量が当初の想定を下回った。
――ウクライナ軍は5月以降、ロシア国内の製油所や石油関連施設への攻撃を強めています。
◆ウクライナ軍は、無人航空機(ドローン)による長距離攻撃で、ガソリンとディーゼル燃料の精製、供給を一時停止させることに成功した。ガソリンやディーゼル燃料は広範な分野の産業で使用されており、農業や輸送部門などに影響が出ている。
――戦争による国民生活への影響は拡大していますか。
◆露政府はこれまで、特に大都市に居住する国民に戦争の影響が及ばないように配慮してきた。実際、多くの国民にとって戦争が続いている実感がなかった。だが、現在は戦争が可視化され、全ての国民が戦争の影響を感じている。
公式統計をみても、今年に入ってガソリン価格は19%上昇した。ガソリンスタンドに長い行列ができ、多くの地域で1日あたりのガソリン購入量が30~40リットルに制限された。ロシアが14年から占領しているウクライナ南部クリミア半島やウクライナ国境に近い地域では、ガソリン販売が停止された。23、24年と比べ、多くのロシア人にとって生活は厳しくなっている。
――国民の反発が高まり反政府運動などが起きる可能性はありますか。
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