反政府デモ続いたネパール、暫定首相に元最高裁長官が就任 初の女性首相

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画像説明, シュシラ・カルキ氏は、清廉なイメージの人として広く知られている。写真は2019年撮影

サンジャヤ・ダカルBBCネパール語記者(カトマンズ)、ヤロスラフ・ルキフBBCニュース記者(ロンドン)

反汚職デモが続き政権が崩壊したネパールで12日、スシラ・カルキ元最高裁判所長官(73)が暫定首相に就任した。反政府抗議の指導者らとラム・チャンドラ・ポーデル大統領の協議を経て、カルキ氏は簡素な式典で宣誓し、貧困に苦しむネパールで初の女性首相となった。

裕福な政治家とその子供たちへの批判をきっかけに、混乱が続いたネパールでは、軍司令官の仲介で大統領と抗議指導者たちが協議を重ねてたどりついた合意の結果、カルキ暫定首相が就任することになった。

ネパール大統領府は12日、ポーデル大統領が下院を解散したと発表した。来年3月5日に総選挙を実施するとしている。

ネパールでは複数のソーシャルメディア(SNS)・プラットフォームが禁止されたことをきっかけに、大規模な抗議活動が起きた。機動隊との衝突で、抗議に参加した50人以上が死亡した。

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画像説明, ネパールの首都カトマンズにあるシンハ・ダルバール宮殿を抗議者らが襲撃し、火を放った。宮殿には省庁や議事堂が入っている(9日)

12日にはラム・チャンドラ・ポーデル大統領の報道顧問がBBCに対し、カルキ氏が同日夕方に宣誓して就任する予定だと明らかにしていた。

カルキ暫定首相は清廉なイメージで広く知られ、いわゆる「Z世代」の学生指導者らに支持されている。

カルキ政権は、治安の回復、国会議事堂など攻撃された主要施設の再建など、急務の課題を抱えることになる。さらに、変革を求めるZ世代の抗議者や、ネパールの若い民主主義と憲法秩序の崩壊を懸念する国民を、広く安心させる必要もある。暴力の責任者を法律で裁くことも、重要な仕事となる。

カルキ氏を支持するZ世代の若者たちは新政権発足を歓迎し、SNSで喜びを表現している。若者の多くは、自分たちがネパールに望む新しい政治的針路の、次の一歩になると期待している。

カルキ氏は9日、カトマンズ市内で前日に警察との衝突で19人が死亡した現場を視察した。病院で治療を受けている負傷者たちとも面会した。

カルキ氏は、ネパール最大の民主主義政党・ネパール会議派で代々強い影響力をもつコイララ一族と近い関係にある家族に生まれた。弁護士となり、同党のドゥルガ・スベディ党首と結婚した。2016年に最高裁長官となるまでの自分のキャリアにとって、夫の支援が重要だったと話している。

ただし、カルキ氏に批判的な意見もあり、最高裁長官を務めた約11カ月の間に弾劾決議案が議会に提出されたこともある。

ネパールは数十年で最悪の混乱に揺さぶられ、軍は引き続きカトマンズ市内をパトロールしている。行動制限は、住民が生活必需品を購入するためにだけ、一時的に解除された。

抗議活動は、政府が先週、ワッツアップ、インスタグラム、フェイスブックなど26のSNSプラットフォームを禁止したことをきっかけに始まったものの、たちまちネパールの政治エリートへの根深い不満を原動力とした運動へと拡大した。

SNS禁止の数週間前には、裕福な政治家の子供たちのぜいたくな暮らしぶりや汚職疑惑を批判する、「ネポキッド(縁故主義の恩恵を受けた子供)」キャンペーンがSNSで拡大していた。SNS禁止が8日夜に急遽(きゅうきょ)解除された時点では、抗議活動はすでに止められない勢いを得てふくれあがっていた。

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