米移民当局、ジョージア州のヒュンダイ工場で大規模摘発 韓国籍中心に475人拘束

画像提供, 米アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局(ATF)

画像説明, 米ジョージア州エラベルにある韓国の自動車大手・現代(ヒュンダイ)のバッテリー工場で大規模な強制捜査が行われた(5日)

米移民関税捜査局(ICE)は5日、ジョージア州にある韓国の自動車大手・現代(ヒュンダイ)の工場に強制捜査に入り、475人を拘束した。非正規移民が働く場所を対象にした、第2次トランプ政権による摘発としては最大規模。

強制捜査を受けたのは、ジョージア州エラベルにあるヒュンダイのバッテリー工場で、3000エーカー(約1214ヘクタール)の広さがある。電気自動車の製造のために建設され、1年前から稼働していた。

移民当局によると、今回の作戦で不法滞在または不法就労していた475人が拘束された。

拘束された人々は、ジョージア州フォークストンにあるICE施設に収容されており、今後の移送先が決定されるまで留め置かれる予定。

韓国政府は今回の摘発を「懸念し、遺憾に思う」とし、自国民の権利を尊重するよう米政府に求めた。

ヒュンダイは声明で、「状況を注視しており、具体的な状況の把握に努めている」とコメント。「本日(5日)現在、拘束された人の中にヒュンダイが直接雇用している者はいないと理解している」と述べた。

米国土安全保障省はBBCに対し、捜査官が「違法な雇用慣行およびその他の重大な連邦犯罪」の疑いで捜査令状を執行したと説明した。

国土安全保障捜査局アトランタ支局のスティーヴ・シュランク特別捜査官は、「今回の捜査は、現場に踏み込んで大勢を一斉検挙して、バスに乗せて連行するような移民取締作戦ではない」と、5日の記者会見で述べた。

「これは数カ月にわたる刑事捜査だ。我々は証拠を集め、聞き取りや文書の収集を行い、そうした証拠を提出して(中略)裁判所から捜査令状を得た」と、シュランク氏は付け加えた。

そして、今回の捜査は「国土安全保障捜査史上最大の、単一の施設における取締作戦」だとした。

ジョージア州サヴァンナのICE事務所は、「逮捕された人たちは査証(ビザ)や入国資格の条件に違反し、就労していたことが発覚した」、「短期あるいは観光用のビザで入国している人は、アメリカで就労する資格がない」とコメントした。

ただし、逮捕された2人の弁護士は米紙ニューヨーク・タイムズに対して、自分の依頼人は観光と商用で90日間の滞在が認められるビザ免除プログラムで入国し、会議に出席して近く帰国する予定だったと説明。拘束は不当だと主張した。

ドナルド・トランプ大統領は、アメリカ国内の製造業の強化と、不法移民の取締りの二つを優先課題として掲げている。今回の捜査は、その二つの課題に緊張を生む可能性がある。また、アメリカの主要な同盟国との関係にも影響をおよぼす恐れがある。

トランプ大統領は5日、ホワイトハウスの大統領執務室で捜査について「彼らは不法滞在者で、ICEは職務を遂行しただけだ」と述べた。

韓国政府の反応について記者から質問されると、「我々は他国と良好な関係を築きたいし、優れた、安定した労働力を確保したい」と、トランプ氏は答えた。

「私の理解では、多くの不法滞在者がいる。その中には善良ではない人もいるし、多くの不法滞在者が働いていた」

「彼らはバイデン前政権下に入国してきた。不法に入国した」

韓国政府は今回の捜査を受け、現地に外交官を派遣すると発表。在ソウルのアメリカ大使館にも連絡を取り、韓国国民の権利について「できる限り慎重」に対応するよう要請した。

韓国外務省は声明で、「韓国の投資企業の経済活動および韓国国民の権利と利益が、アメリカの捜査活動によって不当に侵害されることがあってはならない」とした。

ロイター通信によると、ヒュンダイの広大な工場で行われる電気自動車の製造には影響は出ていない。ヒュンダイとバッテリーの合弁事業を展開する韓国のLGエナジーソリューションズは、同敷地内での建設作業を一時停止した。

ソーシャルメディアに投稿された動画には、捜査官が労働者を整列させ、施設の捜索令状を提示する様子が映っている。捜査官が従業員数人と話をする様子も確認できる。

トランプ大統領は、他国から大規模な投資を呼び込む一方で、アメリカ内での製造を促進するインセンティブになるとして輸入品に関税を課している。

複数の韓国企業は、今後数年間でアメリカの主要産業に数十億ドル規模の投資を行うことを約束している。これには、高関税を回避する狙いもある。

ジョージア州のブライアン・ケンプ知事(共和党)はこれまでに、ヒュンダイの新しい電気自動車事業は同州史上最大の経済開発プロジェクトで、1200人の雇用を創出するとして称賛していた。

他方、トランプ氏は移民がアメリカ人の仕事を奪っているとして、不法移民の取り締まり強化も選挙公約に掲げていた。

トランプ氏は今年1月にホワイトハウスに復帰すると、全米で大規模捜査を展開。不法滞在者とみられる人々を一斉に摘発して施設に収容している。そして、拘束者を次々に国外追放している。

非正規移民の大規模摘発で拘束される多くはラテンアメリカ系だが、中南米以外の国出身の人も拘束されている。

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