たき火にダンスに飼い猫、厳しい寒さを乗り切る工夫 ウクライナ首都
エネルギーインフラに攻撃、寒さに耐えるウクライナの人々
キーウ(CNN) カテリーナ・スクリディナさんは、就寝時に保温下着を着込み、上着2着とスカーフを身につける。羽毛布団にくわえ、毛布2枚を重ねて体を覆う。そして、最大の切り札は飼い猫の「プショク」だ。
「プショクは体温が高いので、湯たんぽみたいなもの」とスクリディナさんはCNNに語った。
スクリディナさんが暮らすウクライナ首都キーウのアパートでは、ロシアが8日に市のエネルギーインフラに大規模攻撃を仕掛けて以降、暖房がほぼ止まった状態が続いている。このときの攻撃で、キーウでは数十万世帯の家庭や事業所、学校が停電に見舞われた。
気温が零下19度まで下がり、当局は「過去20年で最も厳しい冬」とも呼ばれる真冬のさなかに攻撃が行われたのは偶然ではないとしている。
多くのウクライナ人と同様、スクリディナさんも度重なる停電生活には慣れている。複数のモバイルバッテリーを備え、停電対応の機器もそろえる。自宅にはUSB給電の人工キャンドルやクリスマス用の電飾、キャンプ用ランタンが並ぶ。
ただ、気温はこれまでにない寒さとなっている。
ここ数日、スクリディナさんのアパートの気温は10度まで下がった。これは、世界保健機関(WHO)が健康に望ましいとする室温を8度下回る。
スクリディナさんは「精神的につらい。暖房を失って初めて、電気はそれほど必要ではなかったと気づいた。暖房さえあれば、電気がなくても何とかなる」と話す。停電中は気分転換に運動することにしているという。
「スポーツが支えとなっている。エコ燃料で動くジムに通っているが、昨日は暖房がなく、とても寒いため閉鎖された。どこにも行けない」(スクリディナさん)
非常事態
ウクライナのゼレンスキー大統領は14日、エネルギー部門について非常事態を宣言し、ロシアの攻撃と記録的な寒波による影響が極めて深刻だと認めた。
キーウのクリチコ市長によると、15日の時点で同市では300棟の集合住宅がなお暖房がない状態だった。大規模攻撃直後に暖房供給が止まった約6000棟からは改善した。
キーウが最も深刻な影響を受けているが、全国各地でも緊急停電が報告されている。
ウクライナ当局は14日、ゼレンスキー大統領の出身地で中部にあるクリビーリフでのロシアによる大規模攻撃により、数万人が停電したと明らかにした。
教室を安全な温度まで暖められず、多くの学校が休校を余儀なくされている。住民が暖を取ったり電力を確保したりできた商店やカフェ、レストランも閉鎖に追い込まれた。
キーウをはじめ各地では、住民が暖を取り、機器を充電し、作業できる「不屈ポイント」と呼ばれる拠点が数百カ所運営されている。ゼレンスキー大統領は、こうした拠点をさらに増やす考えを明らかにしている。
15日にキーウの支援拠点を訪れたイリーナ・パランディナさんは、CNNに対し、自宅では電気も水道もなく、調理もできないと語った。
「お湯を沸かすものがないので、お茶を飲みにきた」とパランディナさん。「前回の攻撃以降、とても厳しくなった。それまでは何とかやりくりしていた。家族は備えがあると思っていた。インバーターや無停電電源装置、バッテリーもある。でも、1日に電気が2時間しかないと、すぐに使い切ってしまい、充電する時間もない」
SNSでは、比較的長く電気が使える住民が、そうでない人たちに支援を申し出る動きが広がっている。停電中、住宅団地の中庭で近隣住民がたき火を囲み、一緒に料理や交流をする光景も見られる。肉を焼き、温かい飲み物を飲み、体を温めるために踊る人々の動画が拡散している。
ロシアは一貫して民間インフラへの攻撃を否定しているが、これに反する証拠は数多い。
ウクライナ保安庁(SBU)は15日、昨年10月の暖房シーズン開始以降、国内のエネルギー施設や熱供給システムに対するロシアの空爆が少なくとも256回に上ったとするデータを公表した。
SBUはこうした数字について、「ウクライナの人々を破壊することを目的としており、人道に対する罪にあたる」としている。
ウクライナのエネルギー相は16日、戦争中にロシア軍の攻撃を受けていない発電所は国内に一つも残っていないと明らかにした。
国際機関やウクライナの支援国は、エネルギー施設を標的にするロシアを強く非難している。
「とても回復力のある国」
凍えるほど寒い自宅のアパートで、スクリディナさんは寒さをしのぐためインターネット通販に頼り、電気毛布と湯たんぽ2個を注文した。
スクリディナさんは「本当に寒くて、どうしようもない状況だったので、目についたものは全部注文した。気に入ったものは全部」と話し、素焼きの植木鉢といくつかのティーライトでできた装置を指さした。「手のための暖炉みたいなもの。部屋は暖まらないが、パソコンのそばに座っていると少し暖かくなる」
飼い猫のプショクは、なぜかスープを食べるようになったという。「温かいからかもしれない。普段は嫌いなのに、少しずつ食べ始めた」とスクリディナさんは話す。
スクリディナさんは「新型コロナウイルスが広がったときは、それが最悪の出来事だと思った。その次は砲撃、さらに次は電気がないこと。我々はとても回復力のある国になると思う」と、セーターを着たプショクをなでながら語った。
「私はもう、電気がなく、暖房もなく、砲撃のなかでどう生きるかを知っている。日常のどんな問題も簡単に解決できるようになる。私はきっと、万が一に備えて、充電済みのモバイルバッテリーやろうそく、フリーズドライ食品、電池やUSBで動くものをすべて持ち歩く、そんなおばあさんになる」(スクリディナさん)