絶滅危惧種の大型コウモリが大量死。原因は「熱波」

Image: EcoPrint / Shutterstock.com

オーストラリアに行ったことがある人なら、夕方になると空を飛ぶ大きなコウモリを目にしたことがあるかもしれません。羽を広げると想像以上に大きくて、初めて見ると驚くと思います。

カンガルーやコアラほど有名ではないかもしれませんが、あの光景もまた、オーストラリアらしさを感じさせるもののひとつです。

その大型のコウモリは、「フライングフォックス」や「フルーツバット」と呼ばれ、現地ではおなじみの存在。ところが先日、このフライングフォックスが熱波によって大量死したことが報じられました。地域によっては、これまで記録された中でも最大規模の死亡例だとされています。

一体、何が起きているのでしょうか。IFLSが伝えています。

フライングフォックスの約半数がすでに危機的状況

フライングフォックスは、正式にはプテロプス属(Pteropus)と呼ばれる大型のコウモリの総称です。果物や花蜜を主食としています。世界に60種以上が存在しますが、その約半数が絶滅危惧種、もしくは危急種に分類されています。

これまで個体数が減ってきた主な理由は、生息地の破壊や狩猟、そして駆除でした。しかし近年、そこに新たな脅威が加わります。それが、地球温暖化です。

2019〜2020年の夏、オーストラリアでは強烈な熱波が繰り返し襲い、フライングフォックスの大量死が発生しました。ただ、この出来事は、同時期に起きた史上最悪レベルの森林火災の影に隠れ、あまり注目されませんでした。多くの動物が、同時に命の危機にさらされていたのです。

42度を超えると命の危険にさらされる

それから約6年。メルボルンでは、わずか1週間のうちに41度、さらには42.9度を記録する日がありました。

フライングフォックスは、42度を超えると死亡に至ることがあるとされています。理由はシンプルで、彼らには汗腺がないから。気温が極端に上がると、体温調節ができず、ねぐらから落ちてしまいます。飛ぶこともできず、水や日陰を求めて地面を這うしかありません。すぐに保護されなければ、そのまま命を落としてしまいます。

そのため、保護団体は水を噴霧したり、ミスト装置を設置したりして、被害を少しでも抑えようとしています。

フライングフォックスは大規模な群れで生活するため、死亡数を把握しやすく、今回、メルボルン周辺では数万匹規模の死亡が確認されました。ニューサウスウェールズ州でも、複数の場所で数百匹単位の死亡が報告され、ある群れでは約3分の1にあたる500匹が失われたといいます。

「回復できない」ことがいちばんの問題

フライングフォックスの大量死は、単なるショッキングなニュースで終わる話ではありません。

彼らは、植物の受粉や果実の拡散を担い、オーストラリアの独特な生態系を支える重要な存在です。もし長期的に失われれば、森林の再生そのものが難しくなる可能性があります。

さらに深刻なのは、個体数が簡単に回復しないこと。フライングフォックスは妊娠期間が6か月以上あり、出産は基本的に1回に1匹だけ。短期間で数を増やすことができません。

過去6年間で、すでに3回の大規模な大量死が起きており、個体数の回復が追いついていません。しかも、19世紀から20世紀初頭にかけて果樹被害対策として行なわれた大規模駆除の影響からも、完全には立ち直っていないと指摘されています。

今回、特に多く死亡したハイイロオオコウモリは、国際自然保護連合(IUCN)で「危急種」に指定されています。

不安になるニュースですが、すべてが絶望的というわけではありません。北オーストラリアに生息するコガネオオコウモリは、非常に巨大で密集したコロニーを作ることで知られています。都市部の公園に居着くと環境への影響が問題になりますが、最近では50万匹規模のコロニーを傷つけずに移動させる方法も見つかっています。

それでも、気候変動が続く限り、同じような悲劇は何度でも繰り返されるかもしれません。

見かけても触らないで

ちなみに、オーストラリアの都市部の公園などで、落ちたフライングフォックスを見かけても触らないでください。

このような記事を読むと、「助けなきゃ 」と思うかもしれませんが、フライングフォックスは人間にとって危険な病原体を持っている可能性があります。そのため、訓練とワクチン接種を受けた専門の保護員しか扱えないことになっています。

なので、落ちている個体を見つけた場合は、レスキュー団体や行政の窓口に連絡し、対応を任せてください。

弱った動物をみつけると、つい手を差しのべくたなってしまいますが、自分の安全を守ることも大切な配慮のひとつですから。

Source: IFLS

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