朝ドラ「おむすび」どうなる最終回 脚本家、根本ノンジが語る執筆の裏側と最後の見どころ
NHK連続テレビ小説「おむすび」が、3月28日に最終回を迎える。平成元年生まれの主人公、米田結(橋本環奈)が、栄養士として成長しながら、人々の心を結んでいく物語がいよいよ完結する。時代は平成から令和へと移り、新型コロナウイルス禍を乗り越えた結たちは、最後にどんな未来を描くのか。脚本を手掛けた根本ノンジさんに、執筆の裏側や物語に込めた思い、最終週の見どころについて聞いた。
書き終え「2日間動けず」
――最終回を目前にした今の気持ちは
「無我夢中で走り抜けたというのが率直な感想です。放送が残っているので、まだ総括はできていませんが、最後の方は、精神的にも肉体的にも疲労がピークになり、ヘロヘロでしたね。朝ドラの脚本家の皆さんを本当に尊敬します。皆さんこうやってくぐり抜けてきたんだな、と。脱稿したあとは倒れて、2日間くらい動けなくなりました」
――初めて朝ドラを手掛けて感じたことは
「朝ドラは偉大だと思いました。これまで多くのドラマに携わってきましたが、ここまでいろんなご意見をいただくということはありませんでした。毎日オンエアされ、毎日何かしらの記事が上がって、いろんな方に感想を言っていただける。これだけ注目されるドラマ枠は、ほかにないですね。改めて、朝ドラの影響力の大きさを感じました」
好きなのは永吉さん
自由奔放なキャラクターで存在感を放った米田永吉(松平健)=右(C)NHK――主人公の米田結を演じた橋本環奈さんの印象は
「結は非常に難しい役だったと思います。特殊な才能を持っているわけでも、歴史に名を残す偉業を成し遂げたわけでもない。1人の平凡な女性が、いろんな経験を経て、日常に近い出来事と向き合いながら少しずつ成長していく。何かが劇的に変わる主人公ではないので、微妙な変化の演じ分けがすごく難しかったはずです。橋本さんには、それを繊細に丁寧に演じていただいたなと感謝しています」
――印象に残っているシーンやキャラクターは
「結と歩(仲里依紗)が感情をぶつけ合うシーンは強く印象に残っています。結が翔也(佐野勇斗)に逆プロポーズする場面、聖人(北村有起哉)さんが1人で酔っぱらい、自分の心を解放するシーンも素晴らしかった。個人的に好きなキャラクターは、永吉(松平健)さんですね。ルーリー(みりちゃむ)や花(宮崎莉里沙/新津ちせ)は、想定よりも存在感が大きくなり、登場シーンが増えました」
描くこと決めていた「コロナ禍」
コロナ禍で家族とリモート通話する米田結(橋本環奈)=右端=たち(C)NHK――物語の序盤で阪神・淡路大震災、終盤で新型コロナウイルス禍を描いた
「阪神・淡路大震災は、放送期間中に発生から30年を迎えることもあり、物語の中でしっかり描こうと考えました。震災という理不尽な出来事に対して、人はどう向き合い、どうやって前を向いて生きていくのか。そのテーマを丁寧に描いてきたつもりです。コロナ禍については、最終回をできるだけ今の時間軸に近づけたかったので、最初から描くことを決めていました。管理栄養士の方々がコロナ禍で何をやっていたのかを調べると、とても興味深い行動をされていた。それを知っていただきたいと思い、物語に反映させました」
結と歩の決断に注目
――気になる最終週の見どころは
「作中で何度も出てきた『おいしいものを食べたら、ちょっとは悲しいことを忘れられる』というセリフが、最終週ではより大きな意味を持ちます。この作品では、登場人物たちがずっと『誰かのために、自分は何ができるんだろう』ということを問いかけてきました。最終週では、その集大成として、結と歩が目の前で本当に困っている人のために何をするか決断する物語が描かれます。米田家の家族それぞれがどのような人生を選ぶか、も重要なポイントです。人生100年時代といわれる今、聖人さんと愛子(麻生久美子)さん、佳代(宮崎美子)さんが、どのような未来を描くのか。視聴者の皆さんにも共感していただける内容になっていると思います。最終回が、家族との会話のきっかけになればうれしいです」
震災で亡くなった真紀と瓜二つの少女、田原詩(うた/大島美優)=左=と出会った米田結(橋本環奈)=中央=と米田歩(仲里依紗)(C)NHK<ねもと・のんじ>1969年2月2日生まれ、千葉県出身。脚本家。主な執筆作品は「正直不動産」(NHK)、「パリピ孔明」(フジテレビ系)、「ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜」(日本テレビ系)、「サ道」(テレ東系)など。映画「パリピ孔明 THE MOVIE」が4月25日公開。
連続テレビ小説「おむすび」
NHK総合 (月)~(土)午前8:00~8:15ほか ★土曜日はダイジェストを放送
NHK BS/NHK BSP4K(月)~(金)午前7:30~7:45ほか