スキャンダルまみれのミス・ユニバース、今年の世界大会の失態はミスコンの醜悪さをさらすことに

(CNN) 美しさは見る人の目の中にある。そして、スキャンダルまみれのミス・ユニバースにとって、これが問題の大部分を占めている。

不透明で主観的な投票基準は、今年の世界大会をめぐる数々の疑惑を解明することを困難にしている。メキシコ代表のファティマ・ボッシュさんが優勝すべきだったかどうかという疑問は、もはやボッシュさんのステージパフォーマンスではなく、不正投票や秘密主義、そしてえこひいきの疑惑に向かっている。

審査員の1人、オマール・ハルフーシ氏は、11月21日に行われた世界大会の数日前に辞任して以降、SNSで数々の批判を展開している。

レバノン系フランス人作曲家のハルフーシ氏は、30人のファイナリストが、公式審査員団のメンバーではない「即席の審査員」によって「秘密投票」で事前に選ばれたと主張している(ミス・ユニバース・オーガニゼーション<MUO>はこの主張を否定している)。ただしそれよりも物議を醸しているのは、ボッシュさんの勝利が、MUOの共同オーナー兼会長ラウル・ロチャ・カントゥ氏と、ボッシュさんの父親とのビジネス上のつながりによってお膳立てされたものだったとハルフーシ氏が述べたことだろう。

MUOもロチャ・カントゥ氏の弁護士もCNNのコメント要請に応じなかった。後者の主張について、ロチャ・カントゥ氏はメキシコ人ジャーナリストに対し、ボッシュさんの父親が顧問を務めるメキシコ国営石油会社ペメックスとロチャ・カントゥ氏の会社が締結した契約は、自身がミス・ユニバースの共同オーナーとなる以前の公正な公開入札プロセスを通じて締結されたものだと説明した。ペメックスはX(旧ツイッター)で、2023年にロチャ・カントゥ氏と関係する企業と結んだ契約は一時的なもので、契約関係は現時点で存在しないことを強調した。

メキシコ検察が11月26日にロチャ・カントゥ氏を麻薬や武器の密売、燃料窃盗に関与する組織犯罪ネットワークとのつながりが疑われるとして捜査すると発表したことで、大会をめぐる騒動はさらに大きくなった。

ロチャ・カントゥ氏はここ数日、SNSに複数の声明や動画を投稿し、その他の主張を非難している。インスタグラムではハルフーシ氏の主張を否定。「フォロワー獲得」のために主張を利用する「日和見主義者」とののしった。

この影響は、大会主催者にとって壊滅的だ。西アフリカ・コートジボワール代表で5位に入賞したオリビア・ヤセさんは、ミス・ユニバース・アフリカ・オセアニアのタイトルを辞退し、慎重に言葉を選んだ声明の中で、自身の価値観に「忠実でいたい」と述べた。ヤセさんは多くの視聴者から優勝すると思われていた(ハルフーシ氏によると、ヤセさんが候補から外されたのは「ビザの問題に直面する可能性があるから」という理由だけだった)。

西アフリカ・コートジボワール代表で5位に入賞したオリビア・ヤセさん(左から3番目)/Mohan Raj/Getty Images

この直後、ロチャ・カントゥ氏は、出場者のパスポートの有効性は「考慮すべき多くの要素」の一つであると認めたようだ。

世界大会の前から、ミス・ユニバースは物議を醸していた。11月初めにはタイの大会主催者が大会前のミーティング中にボッシュさんをしかりつけたことをきっかけに、大勢の出場者が退席した場面があった。

スキャンダルの風評

ミスコンは政治と国の威信が交錯する場となることも多く、スキャンダルに事欠かない。今年の失態は、大会とその出場者、そして代表を選出する各国の大会運営者が直面している最新の事態に過ぎない。

過去5年間だけでも、各国主催者は差別的な参加要件(フランス)、セクハラ(インドネシア)、外国人嫌悪(南アフリカ)といった疑惑に直面してきた。ミスUSAに関しては、23年大会の優勝者ノエリア・ボイトさんが、メンタルヘルスに関する不可解なSNS投稿を残し、辞退した。投稿の冒頭から11文目までの頭文字には「私は沈黙させられている」というメッセージが隠されていたようで、厳格な秘密保持契約が結ばれたのではないかとの臆測を呼んだ。この数日後、ミス・ティーンUSAも辞退するに至った。

23年のミス・ティーンUSAのウマ・ソフィアさんとミスUSAノエリア・ボイトさん。ふたりとも数日のうちに辞退した/Craig Barritt/Getty Images

25年のミス・ユニバースをめぐる論争は、ミスコン界において「全く新しいものではない」と、社会学者のヒラリー・リービー・フリードマン氏は指摘する。

「人々はずっと前から、『なんだ、八百長だったのか』『知り合いがいたんだ』『これは利益相反だ』と騒いできた」とフリードマン氏は述べ、ビジネス上の利益もまた、なんら目新しいものではないと付け加えた。「こうしたミスコンは、実のところ常に商業的な色合いが強く、男性がオーナーとなり、女性が出場するという伝統があった」

ミス・ユニバースはドナルド・トランプ氏が1996年から2015年まで共同オーナーを務めていた大会で、何よりもビジネスが優先だ。主催者は公平性に対する道徳的義務や出場者への配慮義務を負っていると言えるかもしれないが、コンテストの完全性は、主に評判にかかっている。

意義をめぐって奮闘

近年、ミスコンをめぐる論争に関する報道は、ミスコンそのものへの関心を扱う報道を上回っているように見える。これは当然の疑問を生じさせる。本当にミスコンそのものに興味を持っている人はいるのだろうか?

ミス・ユニバースはミスコン界の「スーパーボウル」として知られるが、今年の世界大会は米国では英語のテレビ番組で放送されなかった。「20年前とは比べ物にならないほど大きな差がある。50年前と比べればなおさらだ」とフリードマン氏は述べた。「視聴者数は大幅に減っているのに、スキャンダルに関する報道は非常に多い。実に興味深い」

フェミニストをはじめとする多くの人々から、単一的な美の基準と時代遅れの女性観を助長していると批判されているミスコンの衰退は、より広範な社会の変化を示唆している。ほぼ本質的に、女性を物として扱うミスコンが、現代の世界で何らかの役割を果たしているのかは議論の余地がある。しかし、ミスコンの存続を支持する人々でさえ、大会のさまざまな側面がそれほど時代遅れではないと主張するのは無理があるかもしれない。

ミス・ユニバースの最近のルール変更は、近代化をうたっているものの、あまりに時代遅れだ。この10年で改定された新たな規則は、28歳以上、母親、既婚女性の参加を認めるというものだが革新的とは言いがたい。ミス・ワールドやミス・アメリカといった大会が水着コンテストを廃止し、やや控えめな代替案を採用してから何年も経つが、ミス・ユニバースの水着審査はいまだに存続している。

今年のミス・ユニバース世界大会で行われた水着審査/Mohan Raj/Getty Images

「最近は女性にとって本当にたくさんのチャンスがあると思う」とフリードマン氏は語る。「昔、ミスコンがあんなに人気だったのは、女性が自分の野心やキャリアパスなどを追求する方法がそれほど多くなかったからでもある。だから、ミスコンはある意味、その成功の犠牲になっていると言えるかもしれない」

遅すぎる、少なすぎる

ミス・ユニバースにとって当面の解決策は、より明確な投票基準と監査プロセスの導入かもしれない。大会主催者は以前、会計事務所アーンスト・アンド・ヤングに投票の監視を依頼していたが、今年の大会が監査されたかどうかは不明。従来の慣行通り、封印された封筒から結果を取り出すのではなく、一枚の紙から結果が読み上げられたことにはただちに批判が集まった。CNNはMUOに説明を求めたが、回答は得られなかった。

大規模なミスコンが一般的な文化上の意義を取り戻そうと改革を行うには、もはや手遅れなのかもしれない。一方でミスコンの未来を否定することは、西側諸国以外の多くの国、たとえばフィリピンではミスコンが国民的スポーツとも似たステータスを持ち、高い評価を受けているという事実を完全に無視している。

支持者らは、多くの優勝者が自身のプラットフォームを利用して慈善事業への支援や募金活動を行っているとも指摘している。中には、ミスコンを利用して自身や家族を貧困から脱却させた人もいる。今年のミス・フィリピン、アーティサ・マナロさんは、奨学金と大会の賞金を組み合わせて大学の学費を支払ったという。

また、こうしたスキャンダルで苦しむのは、主催者ではなく、出場している女性たちである場合が多いことも忘れてはならない。ボッシュさんは世界大会の翌週、結果に不満を持つSNSユーザーから送られてきた、数々の中傷メッセージのスクリーンショットを投稿。「ここ数日、侮辱、攻撃、そして殺害予告さえも受けた。理由はただ一つ、私が優勝したからだ」とインスタグラムにつづった。

しかし、ボッシュさんの声を上げる力は、ミスコンが良い方向に変化しつつあることを示す好例だとフリードマン氏は指摘する。SNSは大会主催者側にとってはますます論争の発生源となっている一方で、出場者らのプラットフォームを広げ、公に懸念を表明する機会を提供することで、女性たちに力を与えてもいる。

「これまでと違うのは、人々が以前とは違う方法でメッセージを発信できるようになったことだと思う」とフリードマン氏は語った。「#MeToo運動などによって女性の発言が中心に据えられるようになったことで、女性が公の場で発言する機会が増えた。皮肉なことかは分からないが、それはミスコンにも波及した」

原文タイトル:This year’s Miss Universe debacle shows how beauty pageants turned ugly(抄訳)

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