準惑星候補!太陽系最果てに「700km級の巨大天体」を新発見(宇宙ヤバイchキャベチ)
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。2025年、太陽系の果てに新たな天体「2017 OF201」が報告されました。
直径は実に700kmほどとされており、現状太陽系内に5個しかない準惑星の候補となるほどの巨大さです。
この天体は冥王星よりもさらに遠く、公転に約2万5千年もかかる非常に大きな楕円軌道を持っています。
今回は、この2017 OF201とは何者なのか、その科学的な背景や発見の意義をひもときながら解説します。
●準惑星とは何か?
まず「準惑星(dwarf planet)」とは何でしょうか?
準惑星とは、太陽の周りを公転し自らの重力でほぼ球形になった天体のうち、軌道近くに同規模の天体が多数存在するため軌道上の天体を一掃できていないものを指します。
つまり自重で球形になれるほどの質量ではあるものの、その軌道周辺でずば抜けたほどではない天体と言えます。
なお自重で丸く、なおかつ軌道上でずば抜けた天体は「惑星」に分類されます。
2006年に国際天文学連合が定義したこの基準によって、冥王星は従来の「惑星」から降格され、「準惑星」の代表格となりました。
現在公式に認められている準惑星は5つで、ケレス、冥王星、ハウメア、マケマケ、エリスです。
それぞれ太陽系内の位置は異なり、ケレスは火星と木星の間の小惑星帯にありますが、他の4つは海王星より外側の領域にあります。
海王星以遠の4天体はいずれも氷と岩石でできた太陽系外縁天体で、直径約1000~2400km程度(冥王星は約2377 km)と月(直径約3475km)より小さいものの、自重で丸くなるほどの質量を持っています。
冥王星以降に次々発見されたこれらの天体によって、「太陽系の果てにはまだまだ未知の大質量天体が存在する」ことが明らかになったのです。
●太陽系外縁天体と軌道の謎
※1天文単位=地球と太陽の平均距離≒1.5億km冥王星などが属する領域はエッジワース・カイパーベルトと呼ばれ、海王星軌道(太陽から30天文単位付近)より外側に広がる小天体の集まりです。
この領域には大小様々な氷天体が無数に存在し、有名な冥王星やエリスのほか、クワオアやセドナといった準惑星候補の巨大天体も見つかっています。
実際、現在までに観測された太陽系外縁天体は数千個に及びますが、これは全体のごく一部に過ぎず、実際には数十万~数百万個もの天体が潜んでいると考えられます。
太陽系外縁部にはさらに外側に向けて散乱円盤と呼ばれる領域が広がり、極めて遠方には長周期彗星の故郷であるオールトの雲(数千~10万天文単位規模)が球殻状に存在するとされています。
太陽から数十天文単位を越える領域はかつて「何もない空白地帯」と考えられた時期もありました。
しかし1992年に最初のカイパーベルト天体が発見されて以来、次々と新しい天体が見つかり、太陽系の地図は塗り替えられています。
特に2003年に発見されたセドナは、近日点(太陽に最も近づく距離)が約76天文単位にもなる極端に遠い軌道を持つ天体でした。
セドナの遠日点は約937天文単位にも達し、その軌道は太陽系のオールトの雲にも届くと考えられています。
セドナの公転周期は約1万年以上にもなり、太陽系史の中で特殊な経緯を経て現在の軌道に落ち着いたと推測されました。
このような「太陽系の離れ島」とも言える天体の登場により、天文学者たちは太陽系外縁部で何が起きたのか、大きな謎に直面することになったのです。
●2017 OF201の軌道と特徴
セドナに続いて今回報告された2017 OF201も、際立って極端な軌道を持っています。
発見チームの解析によれば、この天体は現在太陽から約90.5天文単位(約135億km)離れた位置にあり、軌道は近日点が約44.5天文単位、遠日点は実に1600天文単位以上にも達します。
遠日点1600天文単位という距離はセドナよりも遠く、太陽と地球の距離の1600倍、冥王星の公転軌道のさらに数十倍にも相当します。
公転周期は約2万5千年にもおよび、途方もなく長い周期です。
軌道傾斜角(地球軌道面に対する軌道の傾き)は約16度と中程度ですが、離心率は0.946と極めて高く、細長い楕円軌道を描いています。
この軌道は「複雑な重力相互作用の歴史」を物語っており、発見チームによれば「かつて巨大惑星との接近遭遇で弾き飛ばされ、現在の広い軌道に移された可能性」があるとのことです。
あるいは一度オールトの雲まで放り出された後、何らかの要因で再び太陽に引き戻された可能性も指摘されています。
天体の大きさについても触れておきましょう。
2017 OF201は望遠鏡で見ると22.8等級程度の非常に暗い点ですが、明るさと想定される反射率から直径は約700 kmと推定されています。
700 kmというサイズは、冥王星(2377 km)やエリス(2326 km)よりずっと小さいものの、太陽系外縁天体の中ではかなり大きい部類です。
発見チームは「このサイズなら重力でほぼ球形になっているだろう」と述べており、2017 OF201を「準惑星」として十分資格を備えた天体だと考えています。
もし今後国際的に承認されれば、太陽系で公式に6番目の準惑星となるかもしれません。
●どのように発見されたのか?
2017 OF201は探査機が直接見つけたわけではなく、過去の観測データを徹底的に洗い直すことで姿を現しました。
発見チームは、チリとハワイで撮影された広視野の天体画像を多数解析しました。
具体的には、チリ・セロトロロ山のブランコ4m望遠鏡(ダークエネルギーカメラDECam搭載)と、ハワイ・マウナケア山のカナダ=フランス=ハワイ望遠鏡(CFHT)のアーカイブ画像を活用しました。
これらの画像には無数の恒星や銀河が写っていますが、その中にわずかに動く点として太陽系外縁天体が記録されている可能性があります。
チームは開発したアルゴリズムを用い、異なる夜に写った点像を「この点とこの点は同じ天体ではないか?」と関連付けて軌道を推定する計算処理を行いました。
その結果、7年間・19枚にわたって一貫した軌道上に現れる点を発見し、これが2017 OF201として報告されたのです。
初回観測は2017年7月にさかのぼり、さらに古い記録も調べたところ最古で2004年の画像にも写っていたことが判明しました。
時間経過に伴う位置変化を測定できたことで軌道が精密に確定し、この発見に繋がったのです。
●太陽系はまだ空白だらけかもしれない
2017 OF201の発見は、太陽系外縁部に関する私たちの見方を大きく変えるかもしれません。
その軌道が示唆するのは、「海王星より外側の空間は決して空っぽではない」ということです。
以前は冥王星軌道の外はほとんど天体が存在しないと考えられた時期もありましたが、今回の発見はさらに遠方にも大きな天体が潜んでいることを裏付けました。
発見チームは、「2017 OF201が公転軌道の中で地球から観測可能な位置にいるのは公転周期のたった1%ほどの期間に過ぎない」と試算しています。
言い換えれば、今回たまたま“運良く”見える位置にいたから発見できた可能性が高く、同様のサイズ・軌道の天体があと100個以上あっても不思議ではないというのです。
さらに、今回の発見は太陽系の形成史や力学にも新たな問いを投げかけます。
2017 OF201ほどの軌道を持つには、かつて太陽系内で何らかの大きな力が働いたはずです。
考えられるシナリオの一つは、数十億年前の太陽系形成期に海王星などの大型惑星との接近遭遇で弾き飛ばされたというもの。
あるいは、太陽系がまだ星団の中にあった頃に他の恒星の接近で軌道が乱された可能性も指摘されます。
このように、外縁天体は太陽系の過去の出来事を記録した「化石」のような存在です。
その軌道や分布を詳しく調べることで、太陽系が誕生して間もない頃の環境や、過去に太陽系近傍を通過した恒星との相互作用など、太陽系史の謎に迫る手がかりが得られるでしょう。
●プラネットナイン仮説との関係
近年、太陽系外縁部の話題でしばしば取り上げられるのが「プラネットナイン」仮説です。
これは海王星の外側に地球の数倍程度の質量を持つ巨大惑星が存在し、遠方天体たちの軌道配列に影響を与えているという仮説です。
2016年頃に提唱されたこの仮説は、冥王星より遠いいくつかの極端な太陽系外縁天体の軌道が不自然に偏っていることを根拠の一つとしています。
その偏りを生むには、未知の巨大惑星が重力的な影響を及ぼしていると考えれば説明しやすいため、「プラネットナインが存在するのではないか?」と注目されました。
では、このプラネットナイン仮説に2017 OF201は何をもたらすでしょうか?
興味深いことに、2017 OF201の軌道は先述の偏り「グループ」に属していません。
もし本当に未知の巨大惑星が存在し遠方天体をまとめているなら、なぜ2017 OF201だけ別の方向を向いているのでしょうか?
このことは、プラネットナイン仮説に対して一種の挑戦となります。
一方で、だからといってプラネットナインの存在が直ちに否定されたわけでもありません。
他の要因(例えば観測バイアスや過去の恒星接近など)で軌道の偏りが生じた可能性もあり、議論は続いています。
今回の天体は太陽系に未だ眠る多数の天体の氷山の一角に過ぎないかもしれません。
これから観測技術がさらに向上し、新世代の望遠鏡が稼働すれば、太陽系のカタログに次々と新しい名前が加わるかもしれません。
その先には、かねてから人々をワクワクさせてきた第9惑星の正体が見つかる可能性もゼロではありません。
まだ見ぬ天体たちが潜む太陽系の辺境。
未知への探求は続き、私たちに宇宙の広大さと神秘を改めて実感させてくれるでしょう。
https://arxiv.org/abs/2505.15806
https://www.ias.edu/news/extreme-cousin-pluto-possible-dwarf-planet-discovered-solar-systems-edge