「米国第一」トレードは最悪の選択、不透明な政策下で勝者は分散投資
ドナルド・トランプ氏の米大統領就任にあたり、トレーダーの戦略は明らかだった。米電気自動車(EV)メーカー、テスラや暗号資産(仮想通貨)など「米国第一」に関連した勝者に全てを賭けるというものだ。
しかし、政策の急転換や経済指標の悪化が続く中、ごくわずかの大胆な賭けに絞り込むことはトランプ時代において最悪の選択肢であることが判明した。
このようなアプローチを取る投資家のほか、マーケットタイミング戦略や集中的なポートフォリオで運用する投資家にとって、これは悪い知らせだ。ウォール街は今週、またもや大荒れの展開となった。
貿易摩擦が激化する中、トランプ氏が言う「解放の日」を前に米消費者マインドの落ち込みが判明。インフレ期待の上昇も示され、リスク選好派は打撃を受けた。ナスダック100指数が2.6%下落し、米国債は急上昇。信用リスクを示す指標は上昇し、金は最高値を再び更新した。
全体的に「米国第一」トレードや相場を主導した大型ハイテク株など限られたテーマに大規模な資金を投じてきた投資家にとって新たな打撃となった。無傷で済んだ投資家はほとんどいないが、今回もまた、長期にわたって分散投資の利点を主張してきたプロの機関投資家が最もうまく切り抜けた格好となった。
投資運用会社ヴァンエックのマルチアセット・ソリューションズ責任者、デビッド・シャスラー氏は「われわれは持続的な高インフレ、地政学的リスク、日々高まるリセッション(景気後退)リスクに直面している」と指摘。「投資資金を分配する上で最悪なのは、自身のポートフォリオで二者択一的な賭けをすることだ。分散投資は絶対に必要不可欠だ」と述べた。
システマチックな取引、コモディティーなどのインフレヘッジ資産、割安株などを含む多角的なポートフォリオが新たにアウトパフォームし始めている。市場の勝者は多種多様だが、これらが真の「トランプ・トレード」、すなわち政策が不透明な時代において市場の変化に応じて投資を調整するリスク管理戦略と呼べるだろう。
成長鈍化の兆しと粘り強いインフレを背景に、これまで信頼性の高かった取引が負け組に転じている。S&P500種株価指数は今週1.5%安となり、1-3月では5%安となる見込み。ブルームバーグ・マグニフィセントセブン・トータル・リターン指数の第1四半期のパフォーマンスは少なくとも過去10年間で最悪となる勢いだ。
一方で、資産クラス全体にわたって配分する戦略にとって、2025年初はここ数年間で最高の期間として記録されるだろう。代表的な指標であるS&Pリスク・パリティ指数はS&P500を7パーセントポイント強上回っている。これは18年以降で最も大きい。
シンプリファイ・アセット・マネジメントの資産配分ストラテジスト、ペーズリー・ナーディニ氏は「不確実性が注目される中でこの市場環境が維持されるのであれば、分散投資家にとっては強気相場だ。25年初はローテーション取引に重点が置かれ、市場で敬遠されていた一部が恩恵を受けた」と語った。
原題:High-Conviction Wall Street Bets Unravel in ‘Trump Trade’ Rebuke(抜粋)