20日発売「弥助」が国会質疑に 仏ゲームの神社内部破壊映像巡り 首相「文化に尊敬を」

参院予算委で質問する加田裕之氏=19日午前、国会内(参院インターネット審議中継より)

戦国時代の日本を舞台にし、主人公の一人を織田信長に仕えた黒人の「弥助」とした、フランスのユービーアイ(UBI)ソフトのゲームソフト『アサシン クリード シャドウズ』の問題が初めて、国会で議論された。ゲーム内で弥助が実在する神社の祭壇などを壊す映像が動画配信サイトで公開されたことについて、19日の参院予算委員会で自民党の加田裕之氏が質問。石破茂首相は「その国の文化や宗教に尊敬の念を持つのは当然で、そうでない行為があったら許さない、と発信することは重要だ」と答えた。シャドウズは20日に発売される予定だ。

加田裕之氏「観光公害にも懸念」

内部が破壊される映像が公開されていたのは、兵庫県姫路市の「播磨国総社 射楯兵主(いたてひょうず)神社」。シャドウズの先行プレイ映像では、弥助が神社の中で暴れ、置かれている物を刀で壊していく動画が話題となった。これはプレーヤーがそのように操作した場合の映像だが、神社側は不快感を示していた。

ゲーム『アサシン クリード シャドウズ』のイメージ画像。主人公は、侍として描かれる黒人の「弥助」と女忍者の「奈緒江」だ(ユービーアイソフト提供)

「アサクリ問題について聞きます」。兵庫県選挙区の加田氏はこう切り出した。「ゲームの中で実名で登場する神社の拝殿内で、主人公の侍が太鼓や神鏡、祭壇を粉砕。神職とおぼしき人物に切りつけ、弓を射たり、乱暴狼藉ができるようになっている。宮司さんに聞くと、ゲーム会社から神社に対して名称の使用許可などの連絡は一切なかったということだった」として、政府に肖像の無許可使用に対する見解を質問した。

これに対し、経済産業省の大串正樹副大臣は「商用利用の際には、その知的財産を持つ個人や団体に許可を得る必要がある。個別の事情があるため当事者間で協議されるものだが、神社側から相談があれば関係省庁と連携して適切に対応する」と答弁した。

「無許可で使用するのはいけないと思うし、このことに対して注視していく」と応じた加田氏は、オーバーツーリズムや観光公害への不安が強まっていると指摘して再び、シャドウズに話を戻す。「ゲームの中で承諾なく使われた場所への攻撃や破壊行為が、現実社会で模倣されるのでは、と懸念している。宮司さんや関係者もそれを心配されていた。もちろん、表現の自由は尊重されなければならないが、その土地の文化を軽んじる行為は慎むべきだ」と述べ、石破首相に「ゲームなどで他文化を軽んじる行為やそれに伴う観光公害」について所見を聞いた。

首相「神社に落書きは国への侮辱」

石破首相は「法的にどうするかは経産省、文部科学省、外務省と協議したい」と述べた後、「神社に落書きするのはもってのほか。その国に対する侮辱にほかならない」と強調。自衛隊をイラク・サマワに出すとき、イスラム教のしきたりを習得して行くようにお願いした。その国の文化や宗教に尊敬の念を持つのは当然で、そうでない行為があったら泣き寝入りはしない、許さないと発信することは重要だと思う」と話した。

加田氏は「有形無形の文化、風習には互いが敬意を持ってやらなければならない。当該ゲームは日本の文化、施設を無許可で破壊できるようになっている。(同シリーズの過去作で)他国のものは破壊できないようになっており、なぜ日本だけ、ということも問題で、疑問を持っている」と述べた。

世界累計販売2億本以上の人気シリーズで、大きな影響力がある『アサシン クリード』の最新作が、史実での立場がよくわかっていない弥助を「伝説の侍」として描くことで、不確かな日本史が海外で拡散されるとの懸念の声も出た。さまざまな点で物議を醸したシャドウズは当初、昨年11月15日の発売予定だったが、2度の延期を経て、3月20日に発売される。(高橋寛次)

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