コラム:関税とハーバード大、トランプ氏の永続的な混乱が招く損失
トランプ氏はEUからの輸入品に6月1日から50%の関税をかける考えだとSNSでけん制し、EUとの戦いをエスカレートさせた。トランプ氏はEUからの貿易赤字が「年間2億5000万ドルを超えており、これは全く容認できない数値だ」と誤った金額を記して非難した。米国の2024年の対EU貿易赤字は2360億ドルだった。
トランプ氏は別の投稿では、アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)がiPhoneの生産をインドなどに移したことを批判。米国以外で製造して輸入した場合、25%の関税をかけると警告した。アップルの株価は23日の午前の取引で前日より3%下落した。
トランプ氏が中国からの輸入品に課した懲罰的輸入関税が今月に少なくとも一時的に撤回されたことに市場は安堵し、株価が反発し始めたところだった。このサイクルはお馴染みのものだ。市場がパニックになるとトランプ氏が後退し、市場が上昇するとまたトランプ氏が関税を持ち出して脅すというものだ。
S&P 500 index performance since Trump electionトランプ氏とハーバード大の対立は、より悪らつで引き返すのが困難なものだ。トランプ政権は22日にハーバード大の外国人留学生の入学資格を剥奪し、大学側は不服として提訴した。米国での留学生数はこの20年間で2倍超に膨らんだ。ハーバード大は、外国での米国の究極のステータスシンボルとなっている。全体の約27%に当たる約6800人が留学生だ。
Line chart of international students in the US year-wise裁判所は命令を一時的に阻止したが、ハーバード大への損害は米国のイメージ衰退を示す広範な傾向の一部に過ぎない。米商務省国際貿易局によると、2025年1―4月の外国人旅行者数は前年同期比で減った。
世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)は、25年の米国での外国人旅行者の消費額は前年比7%(125億ドル)減の1690億ドルに落ち込むと予想している。WTTCは、減少が予想されるのは米国だけだと指摘している。
悲観的な兆候は他にもある。米財務省が今月21日に実施した20年国債入札は低調な結果となって国債利回り上昇(価格下落)をもたらし、これは米国に対する信頼性低下、政治の機能不全、財政赤字の拡大に対する危機感を示しているのかもしれない。米国はトランプ氏の永続的な混乱革命の代償を払うことになる。
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(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
Jennifer Saba is a columnist covering media, Silicon Valley and Wall Street based in New York. She joined Breakingviews in 2015 from Reuters where she was a correspondent reporting on companies like Fox, News Corp and the New York Times. Jennifer has covered media for more than 15 years in San Francisco and New York. She began her career in advertising. She has a graduate degree in journalism from Stanford University and an undergraduate degree in English from The University of Texas.